今年6月、レッドブルエアレースで、72年ぶりに東京湾を飛行した零戦を覚えてらっしゃるでしょうか。
ニュージーランドで会社を経営する日本人、石塚政秀さんが、2009年、3億5000万円で購入し、無事日本への里帰りを果たしたあの22型零戦だ。その零戦オーナー、石塚政秀さんが、まさにその零戦を手放すというニュースが舞い込んできました。
なぜ? そしていくらで? もう売れましたか?? 尽きない疑問を、さっそく石塚さんご本人に伺ってみました。
文:ベストカー編集部
写真:石塚政秀、Seiji Ogawa、ベストカー編集部
初出:ベストカー2017年12月26日号「写真で見る衝撃の真実」より
■これまで5億円以上を費やしてきましたが……
編集部 零戦里帰りプロジェクトを立ち上げ、それを果たしましたがなぜ今、零戦を売却することにしたのですか?
石塚政秀さん(以下石塚) 正直に言えば、もはや資金がありません。本業の事業も厳しいなかで、これ以上、零戦の活動を進める資金がないということです。
編集部 売却希望価格は?
石塚 この零戦22型の機体を3億5000万円で購入しました。これまでの10年間で飛行可能な形で整備維持して参りました。
2014年に里帰りを実現したうえで国交省、航空局からの飛行許可を得るまでに数百ページの申請書類と無数の航空局での折衝の上で1年半を要しましたが、今ではいつでも日本国内を飛行できる環境は整っています。
ここまでに費やした費用は5億円を超えるものです。さらにはクラウドファンドや零戦里帰りプロジェクトへの一般の皆様からの支援金と国内唯一の法人スポンサーであるセルモグループ様からの支援金を合わせるとさらに数千万円の費用がかかっています。
私の売却希望価格はそれらをすべて合わせたものではありません。この零戦の価値を認め、機体の国内保存を続けていただける方であれば、売却価格は4億円からお話しさせていただきたいと思います。
編集部 大変申し訳ありません、私どもではその価格が高いのか安いのかわかりませんが……、妥当な価格なのでしょうか?
石塚 購入した価格は、メッサーシュミットやスピットファイアー、P-51マスタングなど、海外の戦闘機と比較してみてもだいたいこれくらいの価格だと思います。
オリジナルの中島飛行機製「栄」エンジンを搭載している零戦52型は20億円以上しています。
■なんとしても「日本で」残したい
編集部 石塚さんは、この零戦を日本に生きた形で残したいという強い思いがあると聞いていますが、やはり日本人が日本でこの零戦を維持するということは、相当お金がかかるのではないでしょうか?
石塚 零戦の年間維持費は地上、飛行保険で1000万円、これに毎月の格納駐機代、整備を入れ飛行に際しての申請許可など諸々の経費を入れると2000万円/年の予算は必要です。
ただし、これらの費用は国内でのエアレースなどのイベント、基地祭での飛行活動を進めることで充分カバーできる金額です。
編集部 石塚さんが零戦を売る、という報道があってから、買いたいという人は現われましたか?
石塚 零戦購入に関しての問い合わせはありますが、具体的な話まではありません。逆に海外から興味があるということでのお話はいくつか来ていますが、私はこの零戦を日本国内に残したいんです。
零戦を技術遺産として理解してくださる方、あるいは団体です。それさえ、信念として持っておられるならば、私は安心です。
零戦は日本の産業技術遺産としてまた日本の近代を学び、考えるそのきっかけとして日本国内に生きた形で残したいという思いからこの10年私財をすべて注ぎ込んでこれまでやってきました。
ここからは大戦機を製作した三菱重工、現スバルの中島飛行機、川崎重工などとともに日本の自動車産業を支えているトヨタ、スバル、三菱、ホンダさんなどに、この零戦保存の協力をいただけることを心から願っています。
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日本の技術遺産を、日本に残したいという、石塚さんの切実な想いに賛同して購入したいという個人、法人の方が現われるといいですね。
購入を希望される方の問い合わせ先
- ゼロエンタープライズジャパン、唐木/石塚
- TEL&FAX:03-5435-5568
- 東京都品川区西五反田2-31-1
- https://www.zero-sen.jp/
※当記事掲載のため、ゼロエンタープライズジャパンへ問い合わせたところ、「問い合わせは多数いただいておりますが、まだ契約にいたっておりません」とのこと(2017年12月19日時点)。欲しい方、急ぎましょう。