■トヨタブレイド 2006〜2012年
ブレイドは3ナンバーサイズの5ドアハッチバックで、オーリスの上級版であった。エンジンはオーリスが直列4気筒の1.5Lと1.8Lを用意するのに対して、ブレイドは2.4LとV型6気筒の3.5Lを搭載する。
今日の2代目オーリスは外観の見栄えを重視して後席に閉鎖感が伴う個性の乏しいクルマになったが、当時の初代はウインドー面積の広い視界の優れたボディで運転がしやすく、全高も1500mmを超えて居住性が優れていた。VWゴルフに近い特徴を備えていた。
ブレイドはこの優れた素性を受け継いで動力性能を高めたから、市街地で扱いやすく、長距離移動も快適で、4名乗車にも適する実力派のモデルだった。
2007年12月の登録台数は940台と中途半端だが、上級セダンの設計が全般的に古くなった今なら、復活させると優れた走りと居住性の両立が人気を得るかも知れない。
そしてブレイドはオーリスと違って国内市場を重視して開発されたから、価格も割安だった。2.4Lの標準仕様はアルミホイールなどを標準装着して224万7000円。
オーリスに1.8Lエンジンを搭載した180G・Sパッケージは約209万円で15万円程度しか違わない。また2.4Lエンジンのアコードセダンは約250万円に達したから、ブレイドは実用性と価格の割安感を併せ持つ買い得車でもあった。
■トヨタラウム 1997〜2011年
時期尚早だったクルマとして、トヨタのラウムも挙げられる。2007年12月の登録台数は793台だった。
直列4気筒1.5Lエンジンを搭載するコンパクトカーで、さまざまなユーザーが使いやすい商品をめざすユニバーサルデザインの考え方に基づいて開発された。
そのために全高を立体駐車場が使いやすい1550mm以下に抑えながら、後席側のドアをスライド式にして乗降性が優れる。助手席も開口部が広く、乗り降りしやすい。
車内に入るとメーターやスイッチが大きくデザインされ、配置も含めて視認性や操作性が良かった。
特にサイドウインドーの下端を低めに抑えた水平基調のボディは、視界が抜群に優れ、全長が4m少々の5ナンバーサイズだから運転がしやすい。
今日のC-HRなどの対極に位置する、日本のユーザーに向けた優しさを感じさせる商品だった。まさに今の高齢化社会に最適だ。このコンセプトを受け継いで、安全装備や運転支援の最先端機能を盛り込んだ車種を開発して欲しい。
ちなみにマツダやスバルの今日のクルマ造りは、ブランドの統一性を重視するから、コンセプトやデザインが限られてしまう。
特に魂動デザインに統合したマツダは、保有台数の多いミニバンのユーザーを実質的に見捨てて撤退したほどだから、ラウムのようなクルマは絶対に造らない。
しかしトヨタは大規模メーカーで、パッソ/ランドクルーザー/86という具合に、性格の異なる車種を幅広くそろえる。
ラウムに似た商品として、ポルテ&スペイド、ルーミー&タンク、シエンタもあるが、立体駐車場の利用も含めて日常的に使いやすく、質感も適度に高いユニバーサルデザインを感じさせる車種はない。ラウムはトヨタだからこそ開発できるクルマだ。復活が待たれる。
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