■『過渡期の技術はその後のスタンダードの生みの親になる』(鈴木直也)
登場が早すぎたクルマは数々あれど、エンジン部門で真っ先に挙げたいのがユーノス800だ。
可変バルタイ技術が普及した今、ミラーサイクル(≒アトキンソンサイクル)は珍しくもないが、それを1993年に採用していたのはきわめて先進的だった。
ただ、商業的には失敗でした。2.3LのV6+リショルム過給機で、3L級の走りと2L級の燃費を狙ったのだけれど、どっちも中途半端な結果。スムーズな吹き上がりと力強いトルク感の両立したいいエンジンだったけれど、高いコストに見合うほどの商品性は持てなかった。
ただ、敗れはしたものの「内燃機関を革新してやろう」というその情熱は、最新のSKYACTIV-Xにも通じるもの。技術的にはぜんぜん異なるけれど、マツダの技術陣はいつの時代にもチャレンジングなのが素晴らしいですね。
いっぽう、ボディ構造やパッケージング面で時代を先取りしすぎたクルマといえば、1982年登場の初代プレーリーだろう。
主力FFセダン(オースター/スタンザ)をベースに3列シートミニバンを作るという構想自体からして先進的だが、そのボディレイアウトたるやビックリのひと言。ぬわんと、左右ともセンターピラーレス(!)のスライドドアを採用し、左右方向完全吹き抜けを実現していたのだ。
さすがに、ここまでコンセプトがぶっ飛んでいると、一般ユーザーにはその価値がさっぱり伝わらず、商業的には失敗となるのだが、それも無理からぬこと。
セダンベースのミニバンとしてオデッセイが大ヒットするのは1994年。ピラーレススライドドアが復活するのが2003~2004年のラウム/アイシス(ともに助手席側のみ)。初代プレーリーは20年以上時代に先行しちゃってたわけだ。
自動車に限ったことではないけど、やっぱり大衆商品は市場に投入するタイミングが重要ってことですねぇ。
■『ネイキッドの魂は最新のタフトに生きている!』(清水草一)
生まれたのが早すぎた傑作車というと、真っ先に思い浮かぶのはダイハツネイキッドであります。登場は1999年。
当時も「スバラシイ!」「絶対売れる!」と思ったんだけど、売れなかった。まだ当時は、市場がああいうギアっぽいデザインを受け入れる素地がなかったらしい。「安っぽい」と思われたみたいでね……。
でも今はまるで違う! タフトなんかまさにネイキッドの血脈そのもの! つまりネイキッドは既に復活した! と言ってもいいだろう。
続いては、日産ティーノの「前席3人乗り+後席3人乗り」というコンセプト。
登場は1998年。これはもう完全な不発で大コケに終わりました。その後2004年にも、ホンダがエディックスでトライしたけど、これも大コケだった。
前席3人乗りにすると、全幅を広くしなきゃならないでしょ。でも当時は3ナンバーのファミリーカーってだけで、心理的なハードルが高かった。
今は違う! 3ナンバーなんかアタリマエ! 1850mmくらいはごくフツー! 前席3人乗りベンチシートもラクラクのはず!
私はいつか、前席ベンチシート車が大ヒットするんじゃないかって気がしてる。だってリラックスできるじゃない、ベンチシートって! コーナー攻める人も滅多にいないしさ。
いつかどこかのメーカーが、もう一度ベンチシートにトライしてくれないかな。でもカッコよくしてね。ティーノはカッコがイマイチだった。
最後は、マツダのAZ-1! 現在でも伝説の名車ですけど、私は以前カウンタックに乗ってた時、上に開くドアの人気を肌で感じたんですよ!
そりゃもちろん、AZ-1みたいなクルマが復活したって、たくさんは売れないだろうけど、今ならもうちょっとエポックを作れるんじゃないかなぁ。
S660がガルウィングだったらどんなによかったか……。とにかくガルウィング軽スポーツの復活を望む!
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