■トヨタ初代MR2
トヨタはターボだけでなくスーパーチャージャーの採用にも意欲的だった。前述のように高級セダンのクラウンからミニバンのエスティマまで、幅広くスーパーチャージャーを採用している。
もちろんスポーツモデルにもスーパーチャージャーを展開した。その筆頭が、日本で初めてミッドシップ方式を採用した2人乗りのスポーツカー、MR2(AW11型)だ。名機といわれた1587ccの4A-GE型直列4気筒DOHC4バルブエンジンにスーパーチャージャーを装着した。
1986年夏に登場した4A-GZE型エンジンはレギュラーガソリン仕様だが、145ps/6400rpm、19.0kgm/4400rpmを発生し、4A-GE型の弱点だった低回転域のトルク不足を解消している。
このMR2のほか、AE92型レビン/トレノにもスーパーチャージャーが設定された。1989年5月、圧縮比を8.0から8.9に高め、プレミアムガソリンを指定して165ps/21.0kgmを絞り出している。
最終モデルは170psまで達成した。当時の若者たちは、いつか乗ってみたいと憧れるユニットだった。
■マツダユーノス800
マツダは早い時期に、ユニークなプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーを装着したディーゼルエンジンを、カペラに積んで送り出した。バブルが崩壊した後の1993年秋には、凝ったメカニズムのユーノス800を発売している。
これは10年基準を掲げて登場したFF方式のプレミアムセダンで、パワーユニットは量産車として世界初の「ミラーサイクルエンジン」だった。
吸気バルブの閉じるタイミングを遅くし、圧縮比を下げることによってノッキングなどの問題点を払拭している。
ユーノス800が積むのは2254ccのKJ-ZEM型V型6気筒DOHC。これにIHI製のリシュロム式スーパーチャージャーを組み合わせ、3Lエンジン並みの動力性能と2Lエンジン並みの低燃費を実現した。
圧縮比を示す膨張比は10.0だが、リーンバーンエンジンのため有効圧縮比は7.6になる。最高出力は220ps/5500rpm、最大トルクは30.0kgm/3500rpmで、力強いパワー感と良好なドライバビリティが自慢だった。
美しいフォルムと特徴的な乗り味で、今でも根強いファンを持つモデルとなった。
■スバルヴィヴィオ
スバルは軽自動車のレックスにスーパーチャージャーを装着し、気持ちいい走りを手に入れた。そして1992年3月には後継のヴィヴィオが登場する。
エンジンは「クローバー4」のニックネームを持つ658ccのEN07型直列4気筒だ。RX-RとGXはDOHC4バルブにスーパーチャージャーの組み合わせていた。
しかもプレミアムガソリン仕様とし、64ps/7200rpm、9.0kgm/4000rpmを絞り出す。
スーパーチャージャーで武装したEN07X型エンジンのレッドゾーンは9500回転だ。だが、その気になれば1万回転まで回り、パワー感とトルク感も軽自動車レベルを大きく超えていた。
ターボ以上にレスポンスは鋭く、高回転のパンチ力も素晴らしい。FF仕様はシャープなハンドリングを持っており、気持ちいい走りを楽しめたが、路面に関わらず安心感があるのはフルタイム4WDだった。今では考えられないような異次元の走りだった。
■三菱デボネアV
三菱は早い時期から過給機に注目し、ターボだけでなくスーパーチャージャーも実用化していた。排気量が550ccと660ccに制限されている軽自動車に装着することが多いが、1987年にデボネアVにスーパーチャージャー仕様を追加した。
搭載したのは1986年夏に上級の6G72型とともに登場した1998ccの6G71型V型6気筒SOHCだ。自然吸気エンジンはMCA-JETバルブを採用したが、スーパーチャージャー仕様はこれを廃し、ローラーロッカーアームを用いた。圧縮比は8.0、最高出力は150ps/5000rpm、最大トルクは22.5kgm/3000rpmだ。
当時、3ナンバー車は維持費が高かった。そこで2Lエンジンを主役としたのだが、デボネアVの重量ボディには非力だ。そこで低回転から過給を行い、ストレスなく加速するスーパーチャージャー仕様を設定したのである。
が、1989年に上級の3Lエンジン(6G72型)がDOHCに進化したため勇退した。
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