■日本にもあった前半分ワゴン/セダン/クーペ、後半分ピックアップトラックの世界
だが、世の中にはその使用目的と存在意義が今ひとつよくわからない「前半分が普通のクルマで、後ろ半分が唐突に荷台になっているクルマ」がある。
例えばダイハツの「アトレーデッキバン」。2021年12月、17年ぶりのフルモデルチェンジを受けたダイハツハイゼットの乗用モデルであるアトレーは、モデルチェンジを機に4ナンバー(商用車)化されたわけだが、それと同時に「デッキバン」もラインナップされるようになったのだ。
ダイハツアトレーデッキバンとは、というか昔からあるダイハツハイゼットデッキバンとは、ハイゼットカーゴのCピラー以降のルーフをカットし、本来であれば荷室に相当する箇所を「オープンエアな荷台」とした配送用のモデルだ。
傍から見ると「……なんでわざわざ狭い荷台を作るんだ? 普通の軽バンか、または軽トラを使えばいいのに」と思うわけだが、これが一部の業界では意外と重宝されるボディ形状であるらしい。
もともとは「冷蔵庫を立てた状態で配送したい」という電気屋さんの声に応えて、ダイハツが松下電器産業(現Panasonic)と共同で開発したものだという。
が、デッキバンは「軽トラと違って4人乗って現場へ行ける」「軽バンと違って縦に超絶長いモノも載せられる」「荷室ではなく荷台なので、汚れ物も気兼ねなくデッキ(荷台)に放り込める」など、一部の業界では「これじゃないとイカンのだ! 」というぐらいに重宝するボディタイプであるとのこと。
そんなハイゼットデッキバンが、フルモデルチェンジを機に(4ナンバーになったとはいえ)乗用グレードである「アトレー」にもラインナップされたわけだ。これの使用目的や存在意義も、普通に理解できる。
地元からそう遠くない海で波乗りをするなら「サーフボードの積載」にかなり便利であろうし、釣り人であれば「生臭い釣果やタックル(釣り道具)をとりあえず放り込む場所」として重宝するだろう。荷室と違って“荷台”なので、ホースで水をぶっかければカンタンに洗えるというのも嬉しいポイントである。
ということで、ジープグラディエーターとダイハツアトレーデッキバンについては、最初だけはギョッとしたものの、冷静になれば「あぁ、なるほど」と、すぐに存在意義が理解できた。
■昼間は土仕事、夜はパーティへ
……だが、これはどうなのだろうか?
シボレーエルカミーノやフォードランチェロなどの「前半分は2ドアクーペ的な2ドアのゴージャス系乗用車なのだが、後ろ半分がトラック的な荷台になっている」というモデルだ。
こればっかりは本当によくわからない。なぜわざわざ、2ドアクーペとピックアップトラック的な何かを融合させるのだ?
2ドア車として優雅に使いたいなら後ろの荷台が邪魔であるし、後ろの荷台に(狩猟した鹿を載せるなどして)本格的に活用したいなら、前半分のゴージャスな部分が邪魔になる。「なぜなんだ、エルカミーノまたはランチェロよ! 」と苦悶しながら10分ほど長考してみたら、とりあえずの暫定的な答えは出た。
これは「ドレスダウン趣味」の、ある種の到達点なのだ。
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