2021年12月20日、ダイハツは軽商用車の主力とされるアトレーとハイゼットカーゴが17年ぶりにフルモデルチェンジを行い、ハイゼットトラックもマイナーチェンジを実施した。
先代アトレーは、ハイゼットカーゴをベースに開発された5ナンバー車のワゴンだったが、新型は4ナンバーの商用車になった。初期のアトレーと同様、ハイゼットカーゴの上級シリーズに位置付けられる。そして後席の後部を天井のない荷台に変更したデッキバンにも、上級モデルのアトレーが用意される。
今回は、発表会場に展示されていた、実車の新型アトレー/ハイゼットカーゴ/ハイゼットトラックに乗り込み、子細なチェックを行ったので解説していきたい。
文/渡辺陽一郎
写真/佐藤正勝
■なぜアトレーは5ナンバー乗用ワゴンから4ナンバー商用バンに回帰したのか?
まずはハイゼットカーゴの上級シリーズに位置付けられるアトレーの最上級グレード、RSを確認したい。アトレーの外観はハイゼットカーゴと基本的に同じで、空間効率の優れた水平基調のデザインだ。
フロントマスクにはメッキグリルを装着した。外観の印象は、5ナンバー車として届け出される先代アトレーワゴンとほとんど変わらない。
バンパーは上下に分割され、下側を擦った時は個別に交換できる。修理費用を抑えることにも配慮した。
外観と同様、インパネの周辺も上質に仕上げた。ステアリングホイールなどにはメッキパーツも使われ、商用車という印象はない。
アトレーRSとアトレーデッキバンには、車間距離を自動制御できるアダプティブクルーズコントロールも装着され、このスイッチもステアリングホイールの右側部分に内蔵される。
インパネの両端にはカップホルダーが備わり、助手席の前側にはトレイと買い物袋などを引っ掛けるフックを装着した。全高が1890mmと高いので、頭上の空間も広く、フロントウインドウの上側にはオーバーヘッドシェルフも備わる。収納設備を豊富に採用した。
荷室を広げるために、従来型と同じくエンジンは前席の下に搭載している。この影響で前席は床と座面の間隔が離れており、運転姿勢としては、ペダルを上から踏み降ろす感覚になる。
シートの座り心地は、前席は快適だ。背もたれの下側と座面の後方を硬めに造り込み、乗員の着座姿勢も乱れにくい。
着座位置が相対的に高いので、インパネやサイドウインドウの下端は、ドライバーの視線に対して低めに抑えられる。そのために前後左右ともに視界が良い。
これはさまざまな軽商用車に共通する特徴だが、新型はボディサイドの上に向けた絞り込みを抑えたので、左右方向の広がり感覚も増している。先代型以上に開放的になった。
着座位置が高めだから、乗降性はタントなどの乗用車に比べると少し下がる。それでもシートの真下に前輪が位置するハイゼットトラックに比べると、乗り降りはしやすい。
アトレーで注意したいのは後席だ。乗用車から商用車に規格が変わったことで、足元空間が狭まった。商用車とするには、後席よりも荷室の面積を広く確保する必要があり、後席の取り付け位置が前寄りになるからだ。そのために足元空間が犠牲にされている。
身長170cmの大人4名が乗車した場合、5ナンバー車だった先代アトレーワゴンでは、後席に座る乗員の膝先空間が握りコブシ3つ半に達していた。それが新型アトレーでは、握りコブシ1つ少々に留まる。
しかもエンジンを前席の下に搭載して後輪を駆動するから、後席は前席と違って床が高い。先代型の後席では、足元空間が広いために足を前方へ投げ出す姿勢を取れたが、新型ではそれができない。膝が持ち上がって腰は落ち込み、膝を抱える窮屈な姿勢になる。乗員の大腿部は後席の座面から離れてしまう。
なぜ後席が窮屈な4ナンバーの商用車に変更したのか。開発者に尋ねると以下のように返答された。
「後席を使うお客様の多くは、純粋な乗用車のタントを購入される。そのために先代アトレーワゴンの使われ方を見ると、90%のお客様は、後席を格納して荷室としていた。そうなるとアトレーも、ハイゼットカーゴと同様、350kgの最大積載量をアピールしたい。そこで後席が狭まっても4ナンバーの商用車に変更した」。
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