前半分セダンorワゴン 後半分トラック! 世にも稀な珍車の世界へようこそ!

■崩しの美学が生み出したもの

ロングボードを積んだ1969年式エルカミーノSS
ロングボードを積んだ1969年式エルカミーノSS
1979年式エルカミーノ。ドライバーの若者はジャケットを着ていてヨットに乗るため、道具をガールフレンドと一緒に荷台から積み下ろしている
1979年式エルカミーノ。ドライバーの若者はジャケットを着ていてヨットに乗るため、道具をガールフレンドと一緒に荷台から積み下ろしている
1982年式エルカミーノのインテリア。豪華なモケットでセダンと同じ内装だ
1982年式エルカミーノのインテリア。豪華なモケットでセダンと同じ内装だ

 例えばタキシードを上下ビシッと揃えるのではなく、ボトムスはあえてビンテージ物のデニムとスニーカーにする、みたいな。高度なドレスダウンテクなのである。

 タキシード的な上着にジーパンを合わせている人が鉱山で働いているわけではないのと同様に、この種のゴージャス系ピックアップの荷台は、狩猟した鹿や切り倒した木材を載せるためにあるわけではない。たぶん、エルカミーノなどのオーナー各位がそのデッキに汚れモノを載せることは、ほとんどないのだろう。

 だが「そこに荷台がある」ということ自体が、ドレスダウンあるいはミスマッチとして絶大な「カッコよさ」を生むのである……という仮説ではいかがだろうか。

1970年式ランチェロ。この時代、トリノウッディワゴンやグラントリノの人気も高かった
1970年式ランチェロ。この時代、トリノウッディワゴンやグラントリノの人気も高かった
1978年式ランチェロ。豪華なクーペやセダン感覚でピックアップの使い方もしたい人にはピッタリだったのだろう
1978年式ランチェロ。豪華なクーペやセダン感覚でピックアップの使い方もしたい人にはピッタリだったのだろう

■納豆スパゲッティ?

1977年に登場した初代ブラットはレオーネ2ドアセダンをベースにしたピックアップ。BRATは英語でやんちゃ坊主、悪ガキを意味するが、由来は「Bi-drive Recreational All-terrain Transporter」から来ている。欧州にはスバルMVという名で販売された
1977年に登場した初代ブラットはレオーネ2ドアセダンをベースにしたピックアップ。BRATは英語でやんちゃ坊主、悪ガキを意味するが、由来は「Bi-drive Recreational All-terrain Transporter」から来ている。欧州にはスバルMVという名で販売された
この2トーンカラーといい、BRATというロゴといいなんともいえない雰囲気を醸し出している
この2トーンカラーといい、BRATというロゴといいなんともいえない雰囲気を醸し出している
1981年に登場した2代目スバルブラットはレオーネ2ドアハードトップをベースにしていた
1981年に登場した2代目スバルブラットはレオーネ2ドアハードトップをベースにしていた
2代目ブラットのデッキ部分。荷台から落ちないように2つのグリップが設けられたシート
2代目ブラットのデッキ部分。荷台から落ちないように2つのグリップが設けられたシート

 シボレーエルカミーノとフォードランチェロはアメリカのクルマだが、日本のメーカーもかつて、エルカミーノ的な「前半分は普通の乗用車で、後ろ半分は荷台」というクルマを作っていた。

 例えばスバルブラットである。スバルブラットは、富士重工(現SUBARU)が1970年代から1980年代にかけて北米で販売していた、レオーネベースのピックアップトラック。

 いやモノコックボディであるレオーネに荷台を付けたクルマなので「トラック」と呼ぶのはちょっと違うのかもしれないが、いずれにせよピックアップトラックの人気と需要が高いアメリカ市場向けに当時の富士重工が作った「レオーネのピックアップトラック」だ。

 これも基本的には「ファッションアイテム」あるいは「レジャーアイテム」として市場に求められたのだろうが、ハードに使うこともできるレオーネがベースだけに、狩猟した鹿などをスバル ブラットの荷台に放り込んでいたアメリカ人青年も、決して少なくはなかったのではないかと推測する。

 ブラットが2代作られたのちにいったんは消滅したスバルのピックアップトラックだが、2003年にはレガシィランカスターをピックアップトラック状に仕立てた「スバルBAJA(バハ)」が誕生し、2006年まで北米で販売された。

2代目(BH系)アウトバックをベースに製作された4ドアピックアップトラック。2003年に登場し2006年に販売終了。日本では販売されなかった
2代目(BH系)アウトバックをベースに製作された4ドアピックアップトラック。2003年に登場し2006年に販売終了。日本では販売されなかった

 バハのエンジンは2.5L水平対向4気筒のEJ25型で、駆動方式はレガシィ ランカスターと同じシンメトリカルAWD。2004年からはターボエンジンも追加されたなどの話を聞くと、「……そのまま屋根付きのランカスター(北米名アウトバック)に乗ってればよかったのでは? 」などと思うわけだが、とにかくアメリカの人というのはピックアップトラックが大好きなのだろう。

 イタリアのパスタも日本に入ってくると「納豆スパゲティ」などに変身してしまうのと同様に、スバル車も、北米に行くとピックアップトラックに変身してしまうのだ。

4WDの使い方として今販売していても需要はありそうなのだが……
4WDの使い方として今販売していても需要はありそうなのだが……
リアシートを倒すとトランクスルー機構を使って長尺物を積むことができる
リアシートを倒すとトランクスルー機構を使って長尺物を積むことができる

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