『レオン』など多くのヒット作を手掛けるリュック・ベッソン監督は、最近はもっぱら製作を手掛けることが多いが、多くの自動車アクションシリーズを手掛けている。その一つが以前ご紹介した『トランスポーター』シリーズだ。
そしてその前に手掛けていたのが今回ご紹介する『TAXi』シリーズ。ハリウッドでリメイクされるなど大人気のシリーズの原点をご紹介しよう。
文/渡辺麻紀、写真/ポニーキャニオン
■フランス映画のイメージを覆すカーアクション!!
前回、取り上げた『トランスポーター』(2002)に続き、同じくリュック・ベッソン・プロデュースのカーアクション映画『TAXi』(1998)をご紹介したいと思う。
『トランスポーター』の場合、舞台はフランスだったが、主人公は英国人で言語も英語。それより以前に製作された『TAXi』は、舞台も主人公も言語もすべてが100%フランスだ。
その舞台はフランス最大の湾岸都市マルセイユ。この地でピザの配達からトラバーユしてタクシー運転手になった青年ダニエルが、そのドライビングテクニックを活かして犯罪組織を追い詰める。
ダニエルの愛車は白のプジョー406。一見はごくごく普通の車だが、実はあらゆる要望に応えられるようにカスタマイズした改造車だ。
25分で空港に急行してくれという乗客のために、ハンドルをスポーツカー仕様に付け替え、グローブボックスに隠していたスイッチパネルを出して車体を持ち上げ、タイヤを左右に動かしてトレッドを拡げる等、一瞬で乗客もびっくりのレースカー仕様車に大変身する。
こういう改造車は『ワイルドスピード』シリーズ(01~)のおかげでお馴染みになった印象があるが、本作はその3年前の作品。さすがリュック・ベッソンらしく流行を掴むのが早い。
レース仕様に改造されたプジョーは、217km/hのスピードで、あらゆる車を抜き去り、さらにスピード違反の速度計もなぎ倒し、わずか14分30秒で空港に到着してみせる。乗客はもうフラフラ。車から降りた途端、嘔吐してしまう。
■ヨーロッパの名車が大騒ぎの大カーチェイス
そんな彼が仲良くなるのが、すでに車の路上試験で8度も落ちたという車オンチの落ちこぼれ警察官エミリアン。ダニエルはスピード違反で彼に検挙されるのだ。
そのとき、ダニエルが口にするのが「車と運転が一流なら、190km/h出しても安全だ」。この言葉に妙に納得してしまうのも、彼のドライビングテクニックが最高だからだ。エミリアンは、そんな彼の技術を見込んで、そのころフランスで頻発していたドイツ人による銀行強盗の犯人を挙げようとする。
その強盗団の通称は「メルセデス」というくらいなので、彼らの乗る車もベンツ500E。つまり、ハイライトではプジョー406 vs. ベンツ500Eの大チェイスが繰り広げられる。
信号機を操作し、路地を走り、道路を逆走し、邪魔な車を横転させながら、危険を顧みずハイスピードで追いかけるのだが、なぜかいつも、ベンツは忽然と消えてしまう。果たしてどんなカラクリが!?
そこは映画を観てのお楽しみだが、もちろん、ダニエルとエミリアンはまんまと一味を逮捕してめでたしめでたしな上に、ダニエルは警察からご褒美を貰うことになる。それが夢のひとつだったF3レースへの出場。
1996年製、エンジンはフィアット製のダラーラF396に乗り、思う存分、スピードを出してサーキットを駆け巡る! というわけだ。
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