空冷911オーナーはどう見る? 究極のポルシェはNAの911GT3かEVのタイカンか?

空冷911オーナーはどう見る? 究極のポルシェはNAの911GT3かEVのタイカンか?

 ポルシェは今、ガソリンエンジンを究めつつ、初のBEVとなるタイカンシリーズでBEVスポーツの頂点を目指している。ナローポルシェオーナーが、4L、NAの911GT3と、BEVのタイカンターボクロスツーリスモに試乗し、徹底チェック!

文/ベストカーWeb編集部、写真/中里慎一

■このまま作り続けてほしい911のNAエンジン搭載車

992型911GT3。価格は2296万円
992型911GT3。価格は2296万円

 伝統の911シリーズが電動化されるのも時間の問題だが、911シリーズはターボ車以外もターボエンジンとなり、唯一残っているのが今回試乗したGT3に搭載される4L、NA水平対向6気筒エンジンである。

 911は、空冷か水冷か、ターボかNAか、RRか4WDか、空冷カレラRSか、水冷GT3などと、悩みがつきない車種である。

フロントサスペンションが初のダブルウィッシュボーンとなった
フロントサスペンションが初のダブルウィッシュボーンとなった

 まず、どこまで進化するんだと驚いている911GT3から。もはやそのルックスはモビルスーツの世界である。

 真っ先に目に飛び込んでくるのはフロントのダウンフォースが先代GT3比2倍に高められたという2つの大型エアアウトレット。リアに回ると、911RSRと同じ形状のスワンネック式リアウイングが装着されている。

いまやこの補給用カバーが開くだけでもはやエンジンは見ることができない
いまやこの補給用カバーが開くだけでもはやエンジンは見ることができない

 足回りは、なんとフロントサスペンションが初のダブルウィッシュ―ンになった。リアは993以来のマルチリンクと変わらないが、やはり突き詰めていくとフロントも変えざるを得なかったようだ。

 さらにタイトコーナーに対応するため、車速に応じて後輪を前輪と同位相または逆位相に最大2度操舵するリアアクスルステアリングを標準装備。

 装着タイヤは、フロントが255/35ZR20、リアが315/30ZR21(いずれもグッドイヤーイーグルF1スーパースポーツR)で、アルミホイールはセンターロック式で固定される。

スワンネック式リアウイングを装備
スワンネック式リアウイングを装備

 走り出してまず感じたのは「レーシングカーそのもの」ということ。996GT3、997GT3がヤワに感じるほど、その進化ぶりは半端じゃない。991GT3RSに感じたガチガチ感とまではいかないが、大径タイヤから想像する硬い乗り心地ではなく、ちょい硬めの乗り心地(最近はスーパースポーツでも乗り心地はいい)だった。

 試乗車は7速PDK、駆動方式はRRである。そして搭載されるエンジンは、先代比10ps/10Nmアップの510ps/470Nmを発生する3996㏄水平対向6気筒。なんとレブリミットはいまどき珍しい9000rpm(S2000と同じ)である。

 参考までにR35GT-Rは、標準車が570ps/637Nm(NISMOは600ps/652Nm)を発生するVR38DETTを搭載しているが、四輪駆動だから、ポルシェはRRでよくぞここまでやるなというのは誰もが思うところ。

 高速道路に入り、右足を強く踏み込んでいくと、3000rpmを超えたあたりから一気にグォーンと回転が上昇していき、8000rpmを超えると、まさに雄叫びをあげるがごとく回っていく。

 ただし、ターボのように、ドカーンと背中を押されて、クルマに持っていかれる感覚ではなかったため、怖さはそんなに感じなかった。とはいえ、NAでこんな加速フィールは、今まで味わったことがない。やっぱりポルシェはNAがいい……。

試乗車は7速PDK。ステアリング右下にはドライビングモード切り替えスイッチがある
試乗車は7速PDK。ステアリング右下にはドライビングモード切り替えスイッチがある

 ポルシェAGの公式計測データでは、0→100/h加速は3.4秒、最高速度は318㎞/h(ちなみにR35GT-Rの0→100㎞/hはNISMOが2.8秒、標準車が3.0秒)。

 驚くべきはニュルブルクリンクサーキット北コースのラップタイム。なんと先代GT3の記録を17秒以上短縮する6分59秒927(計測は20.8kmのコース。従来の20.6kmのコースは6分55秒2)を記録しているのである。

試乗車は消火器や6点式シートベルト、ロールケージやカーボン製バケットシートなどが装備されるクラブスポーツパッケージが奢られている
試乗車は消火器や6点式シートベルト、ロールケージやカーボン製バケットシートなどが装備されるクラブスポーツパッケージが奢られている

 余談だが、逆にこの911GT3に乗って、普通の素のカレラのよさに気づいてしまった。普通に乗ると「ラグジュアリーなクルマ」、「ちょっと飛ばしてみるか」とジキルとハイドのように、アクセルを強く踏み込むと一変し、「本格的なスポーツカー」になる、そんな懐の深さが素の911にはあるのだ。

 1973年式カレラRS2.7、964RS、993カレラRS、水冷時代の歴代GT3を乗った感覚を思い出しながら、感慨深く追っていくと、やはり速さとエンジンの気持ちよさを突き詰めると、最新こそ最良のこの911GT3こそベストなのだろう。

 個人的にはそこまで速さを追求しないので、空冷の964カレラRSか993カレラRS、あるいは2000年式GT3がいいと思うが、高すぎて手が出ない……。

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