ポルシェは今、ガソリンエンジンを究めつつ、初のBEVとなるタイカンシリーズでBEVスポーツの頂点を目指している。ナローポルシェオーナーが、4L、NAの911GT3と、BEVのタイカンターボクロスツーリスモに試乗し、徹底チェック!
文/ベストカーWeb編集部、写真/中里慎一
■このまま作り続けてほしい911のNAエンジン搭載車
伝統の911シリーズが電動化されるのも時間の問題だが、911シリーズはターボ車以外もターボエンジンとなり、唯一残っているのが今回試乗したGT3に搭載される4L、NA水平対向6気筒エンジンである。
911は、空冷か水冷か、ターボかNAか、RRか4WDか、空冷カレラRSか、水冷GT3などと、悩みがつきない車種である。
まず、どこまで進化するんだと驚いている911GT3から。もはやそのルックスはモビルスーツの世界である。
真っ先に目に飛び込んでくるのはフロントのダウンフォースが先代GT3比2倍に高められたという2つの大型エアアウトレット。リアに回ると、911RSRと同じ形状のスワンネック式リアウイングが装着されている。
足回りは、なんとフロントサスペンションが初のダブルウィッシュ―ンになった。リアは993以来のマルチリンクと変わらないが、やはり突き詰めていくとフロントも変えざるを得なかったようだ。
さらにタイトコーナーに対応するため、車速に応じて後輪を前輪と同位相または逆位相に最大2度操舵するリアアクスルステアリングを標準装備。
装着タイヤは、フロントが255/35ZR20、リアが315/30ZR21(いずれもグッドイヤーイーグルF1スーパースポーツR)で、アルミホイールはセンターロック式で固定される。
走り出してまず感じたのは「レーシングカーそのもの」ということ。996GT3、997GT3がヤワに感じるほど、その進化ぶりは半端じゃない。991GT3RSに感じたガチガチ感とまではいかないが、大径タイヤから想像する硬い乗り心地ではなく、ちょい硬めの乗り心地(最近はスーパースポーツでも乗り心地はいい)だった。
試乗車は7速PDK、駆動方式はRRである。そして搭載されるエンジンは、先代比10ps/10Nmアップの510ps/470Nmを発生する3996㏄水平対向6気筒。なんとレブリミットはいまどき珍しい9000rpm(S2000と同じ)である。
参考までにR35GT-Rは、標準車が570ps/637Nm(NISMOは600ps/652Nm)を発生するVR38DETTを搭載しているが、四輪駆動だから、ポルシェはRRでよくぞここまでやるなというのは誰もが思うところ。
高速道路に入り、右足を強く踏み込んでいくと、3000rpmを超えたあたりから一気にグォーンと回転が上昇していき、8000rpmを超えると、まさに雄叫びをあげるがごとく回っていく。
ただし、ターボのように、ドカーンと背中を押されて、クルマに持っていかれる感覚ではなかったため、怖さはそんなに感じなかった。とはいえ、NAでこんな加速フィールは、今まで味わったことがない。やっぱりポルシェはNAがいい……。
ポルシェAGの公式計測データでは、0→100/h加速は3.4秒、最高速度は318㎞/h(ちなみにR35GT-Rの0→100㎞/hはNISMOが2.8秒、標準車が3.0秒)。
驚くべきはニュルブルクリンクサーキット北コースのラップタイム。なんと先代GT3の記録を17秒以上短縮する6分59秒927(計測は20.8kmのコース。従来の20.6kmのコースは6分55秒2)を記録しているのである。
余談だが、逆にこの911GT3に乗って、普通の素のカレラのよさに気づいてしまった。普通に乗ると「ラグジュアリーなクルマ」、「ちょっと飛ばしてみるか」とジキルとハイドのように、アクセルを強く踏み込むと一変し、「本格的なスポーツカー」になる、そんな懐の深さが素の911にはあるのだ。
1973年式カレラRS2.7、964RS、993カレラRS、水冷時代の歴代GT3を乗った感覚を思い出しながら、感慨深く追っていくと、やはり速さとエンジンの気持ちよさを突き詰めると、最新こそ最良のこの911GT3こそベストなのだろう。
個人的にはそこまで速さを追求しないので、空冷の964カレラRSか993カレラRS、あるいは2000年式GT3がいいと思うが、高すぎて手が出ない……。
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