■デートカーといえば2代目プレリュード ほんとに憧れのクルマだった
1982年11月に発売された2代目プレリュードがデートカーの地位を確立したといっていいだろう。当時、高校生だった筆者は、クルマ雑誌を読みまくり、カーセンサーの中古車掲載欄を見て、100万円前後がXLだけど、やっぱり130万円以上していた上級グレードのXXが強烈に欲しかった。
先輩が購入したので運転させてもらったのをよく覚えているが、低速ではハンドルが軽く、曲がる際にも違和感があったのを覚えている。
よく言われている助手席の運転席側に付いたシート倒しレバー(リクライニング機構)も試してサンルーフから夜空を見たが、強引にそんなことしなくてもいいのに……と思っていた。
とにかく、当時は今では考えられないほど、クルマ好きが多く、クルマ好きじゃない人は見栄を張れるクルマに乗っていた人が多いように感じる。笑っちゃうのは、ほんとにクルマで女にモテたのだ。今では考えられないが……。
特に1987年4月に登場した3代目プレリュードは、2代目よりも洗練されていて、ボンネットが低くワイド&ローFフォルムで日本車離れのプロポーション。優雅で一番スペシャリティカーらしかったし、実際プレリュードに乗ってみたいという女の子も多かった。
3代目プレリュードは、量産乗用車では世界初の機械式4WSもウリで、後輪切れ角は、前輪舵角が小さいときには同位相に動作し、一定以上舵角が大きくなると逆位相方向に変化する特性になっていて、小回り性能は抜群、逆に切れすぎちゃって少々やりすぎ感があった。
ここで、当時の2代目、3代目の新旧2WS、4WSのプレリュードの試乗記(1987年6月10日号、著者は竹平素信氏)を少しだけお届けしよう。
「4WSと2WS(この場合はあくまでも同モデルのプレリュード)の走りの違いは、一般的な走行状態においてはその差を大きく体感することはまずないといっていい。「今度のプレリュードはステアリングがクイックでフットワークもとても軽快。それに高速安定性もいい」といわれ、4WSを知らずして乗ってみればなるほどそんな感じがするなあ、といった程度であろう。
もちろん、クルマの挙動を敏感に把握できるセンサーを持ったベテランドライバーなら4WS車の操安性のレベルがアップしていることを明確に感じ取ることができよう。ただし、その差はけっして大きくないハズだ。
一般ドライバーがその差を大きく感じやすいのは、市街地や山岳ワインディングでステアリングを大きく昼必要がある時だろう。ヘアピンコーナーのクリアやUターン、狭いスペースへのパーキングなどなど。こうしたケースでは後輪が逆位相に動くからクルマの寸法以上の小回り性をみせてくれる。その時のボディ後輪のはみ出しが気になるかもしれんが、その量はほんの数十cmであり、現実に問題となるレベルではないし、それはすぐに慣れてしまうだろう」。
当時、プレリュードの4WSに注目が集まっていたことがわかる。当時、筆者は本誌に在籍していなかったが、もし在籍していたら渋谷で「プレリュードとシルビア、どっちのクルマが女子が多くナンパできるか?」という企画を立てていたことだろう。それほどまで車種で女性人気が分かれる時代だったのだ。
写真を見ているうちに、乗りたくなってきたので、中古車検索サイトで調べてみた。
2代目プレリュードが中古車市場に流通していたのは2台。1986年式/9.7万km(XX、AT)が170万円、1985年式/3.4万km(XX、MT)が210万円。2台とも程度がよさそうだった。
そして3代目プレリュードの流通台数は4台。1989年式Si/15.2万kmが99.8万円、1991年式Si/4.7万kmが220万円、1991年式Si/7.6万kmが298万円、1991年式Si/2.4万kmが299万円という具合。3代目プレリュードの現存している中古車は、Siのみで、300万円前後という恐ろしいことになっていた。
■走り屋はプレリュードではなくS13シルビアを選んだ
デートカーブームの時は、筆者はお金がなかったが、1989年の消費税導入時にS13シルビアQ‘Sの価格が155万6000円となり、こんなにカッコよくて安いと驚いたのを覚えている(当時はそれでも買えなかった)。発売当時はJ’sが146万7000円、Q’sが155万6000円、K’sが188万6000円(いずれも5MT車)と今では考えられないほど安かった。
「アートフォース・シルビア」のキャッチコピーで登場したS13シルビアは、これまで見たことのないモダンなクーペらしい美しいボディラインで人気となった。
コクピットのデザインもR30型スカイラインに代表される1980年代のデザインから脱して、すっきりとした日本車離れした造形で惚れ惚れしたのを覚えている。
搭載されたエンジンはJ‘S、Q’sが135psを発生する1.8L、直4(CA18DE)のNA、K‘sが175psの1.8L、直4ターボ(CA18DETT)を搭載。1991年1月に行われたマイナーチェンジでは全車2Lとなり、NAは140ps(SR20DE)、ターボは205ps(SR20DET)とパワフルになった。
注目はオプション、4輪操舵システム・HICASIIは、ハンドルを切ったのと同じ方向に後輪が切れる同位相制御で高速コーナーで安定性を高める働きがあり、セットオプションとなる14対1のクイックなギアレシオによるシャープな応答性と安定性を持ち合わせていた。
コーナー入り口ではハンドルの少ない操作でノーズが向きを変え、コーナー半ばから立ち上がりにかけては後輪が同位相に切れるので、リアにドシっとした安定感がある。サーキットに持ち込んでタイムアタック的な走り方をすると、同位相制御とクイックなステアリングギヤ比が仇となるのか、ターンインでよほどステアリング操作に気をつけないと、フロントタイヤからずるずる滑り出す、いわゆるアンダーステア傾向を示してしまい、乗りにくいのだ。
やはりマイナーチェンジ後の2Lのほうが、低中速トルクが増したのでNAでも楽しく、ターボはさらに高回転まで伸びるようになってアクセルコントロールでクルマの向きが変えられるので、ターボのほうがよかった。
同時にHICASIIも1991年のマイナーチェンジで低速でハンドルを切ったのと反対側に後輪が切れる逆位相制御が入ったスーパーHICASへと進化。コーナー進入時のアンダーステア傾向がだいぶやわらいだ。
ここで、ベストカー1988年6月26日号にはガンさんこと、黒沢元治さんのS13シルビアとプレリュード、セリカとのライバル比較記事が掲載されていたので抜粋。
「ニューシルビアの楽しさはコントロール性を重視し、フロントに対して安定性を上げるとともに限界域を上げ、そしてそこからの滑り出しがマイルドに始まるようにセットしていることから来ている。
これを可能としたのは日産初のマルチリンクサスペンションだ。高級なサス形式を単一シャシーのシルビアに組み込んだ日産の努力は大いに褒めたいと思う。さらに接地性とFR荷重バランスをよくするためにフロント52%、リア48%の重量配分は「走り」に大きく「らしさ」を感じさせる要因だ。
偶然にもドライとウエットの両路面状況をテストできたが、この時のステアリングバランスにあまり変化が感じられないほうが優れている証拠。重量バランスの悪いクルマ、または接地性の良くないサスを持つクルマはドライとウエットの差が大きく変化し、コーナリングスピードも大きく違ってくるものである。
ニューシルビアのコーナリングの挙動は、初期アンダーがあまり大きくなく、それからニュートラルステアに移り、トラクションをかけると、パワーステアに入る。この一連の動作が実にマイルドなのだ。
当然ミューの高低差、つまりドライとウエットの路面でのコーナリングスピードは違いを見せるものの、その差(スピード)が非常に少なく感じられたのだ。
気になるライバルとの比較をしてみよう。リストアップしたのはセリカとプレリュード。まずプレリュードだが、ファンはその美しいフォルムとスタイリングを好んでいるように思う。「走り」の性能もパワフルでレスポンスのよいエンジンを持ち、ハンドリングやシフトフィールの質感は優れている。
そしてセリカは、よりファミリー寄りであり、サスペンションにしてもマイルドな味付けになっている。私なりに総括すると、よりハードなスポーツ派にはシルビアであり、ムード派のおとなしいスポーツ派にはプレリュード、セリカはファミリーカーに近いものと分析した」。
スポーツ派はFRのS13シルビア、ムード派はFFのプレリュード、まさに筆者の回りで購入した人たちも、そうだったなあ。
S13シルビアのグレード構成はトランプのジャック、クィーン、キングを由来とし、廉価グレードのJ’s、中間グレードのQ’s、最上位グレードのK’sという3種類が設定された。
エンジンが自然吸気かターボかの違いは大きいものの、標準装備の内容に大差ナシというのが正解だ。Q‘s、K’sの両車で何が違っていたのかといえば、シート地がK’sはツイード調でQ’sがベロア調、タイヤがK’sは195/60R15でQ’sが185/70R14、ビスカスLSDがK’sは標準装備でQ’sが未装備(オプション設定もなし)といった程度。
K’sでも電動スライドガラスサンルーフ・プロジェクターヘッドランプ・ハイマウントストップランプ付リアスポイラーはメーカーオプション設定だった。それでいて、Q’sとK’sの価格差は33万円。
当時、筆者の回りは、ほとんどがQ‘Sを購入、ターボのK’Sは少なかった。グレードの呼ばれ方もQ‘sが「クズ」、K’sが「カス」と呼ばれていたのを思い出す。どれも乗ればいいクルマだったがとにかく自分が正義のオーナーが多かった。
S13、S14、S15の新車販売台数を見ると、S13が30万2329台、S14が8万5316台、S15が4万3147台(3年11カ月と短い)と、圧倒的にS13が多く、いかに売れていたのかわかる。
中古車検索サイトで、S13シルビアの中古車価格を見ると、予想通り暴騰していた。約180万円前後から、上はフル改造車を除いたノーマル車では、K‘sが400万円前後、Q’sも200万円前後~350万円前後と、かなり幅がある。
走行距離が5万km以内のフルノーマル車の極上車が欲しいということになると、Q’s、K’s問わず、400万円は見ておいたほうがよさそうだ。200万円以下でも買えなかったS13シルビアは、35年経って倍以上の約400万円……、昔も今も買えない状況とは……。
【画像ギャラリー】おじさんが青春時代に買ったプレリュード シルビアの当時の写真や記事をチェック!(12枚)画像ギャラリー■最後に「メッシ―君」、「アッシー君」、「貢ぐ君」とは
今から30年以上前のことを思い出したが、当時はほんとに凄かった。筆者の回りでは、86やシビック、CR-Xは硬派なクルマ、シルビアやプレリュードはデートカーとして、女の子の間でも「プレリュード乗っている人なら……」という感じで、女の子にモテた。
現在、49歳の女性に、およそ30年前に女子高生、女子大生だった当時のことを聞いてみた。
「ワタシが女子高生の時には、大学生の彼氏に高校まで迎えに来てもらってましたね。友達の彼氏に86やCR-Xもいましたけど、やっぱり女の子の間では、シルビア、プレリュードが人気。校門近くで、彼氏のクルマが待っていて……。ソアラ(2代目)は女子大生になってからかな。
ハイソカーは、格上というか、ステイタスがありましたね。ビーエムや小ベンツよりもこっちのほうが格は上だったかも。マークIIやクレスタ、チェイサーで色もホワイトばっかりで。ワタシじゃないけど、ソアラに乗っているから付き合いたいというコもいましたね。ほかにもハイラックスサーフ、パジェロも流行っていましたね」。
そして、「メッシ―君」、「アッシー君」、「貢ぐ君」についても聞いてみた。
「メッシ―君は、ご飯(だけ)おごってもらうためだけの男のこと。アッシー君は、送り迎えだけする男のこと。当時、東京はマハラジャやジュリアナ東京などディスコブームの時で、そうしたディスコの送り迎えとしてアッシー君をポケベル(当時は携帯電話は普及していない)で呼んでね。メッシ―君は暇でお腹すいた時に呼ぶと、イタリアンによく連れて行ってもらったなあ。もちろんおごりでね。でも、メッシ―君、アッシー君は、本命の彼氏じゃないのよ。ワタシと一緒にいられるだけでよかったみたい。
貢ぐ(みつぐ)君とは、つきあってもいないのに、一方的に女の子にブランド品をプレゼントする=貢いでくれる男のこと。当然、貢ぐだけ貢いでも、付き合いにつながらない……」。
実に可哀そうな男たちである。今の時代にも、こうした男はいるかもしれないが……。
【画像ギャラリー】おじさんが青春時代に買ったプレリュード シルビアの当時の写真や記事をチェック!(12枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方この時代(まで)の車って其々に個性が有って良いですよね。見ていて飽きませんでした。
今時の車はメーカー毎に同じ顔で個性が感じられません…
因みに、当時自分はCB5ビガーに乗ってました。
ローフォルムで、FFでありながらホイールベースが長く5ナンバーサイズでありながらそれを感じさせない優雅さが有り、なのに小回りが効き燃費も良く、良い車でした。
出来ればまた欲しい車です。
三代目プレリュード Si 白に乗っていましたが、その頃は夜中、街には二人組の女性がたくさんいて、声をかけるとほんとに乗ってきました。今では考えられませんね。走りは猫脚のようにコーナリングが素晴らしかった記憶があります。ほぼ同じ値段でS13が買えましたが、私はプレリュード一択でした。
友人のプレリュードでよく街や駅ロータリーにナンパに行ってました。
当時、街でナンパする事をトローリングと言ってましたよ〜