こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 エディックスの3×2パッケージが家族との距離を近くする!

■3×2パッケージは使い勝手や走行性能にも寄与する

 独創性に振り切ったクルマに思えるが、ミニバン作りに長けたホンダ車とあって使い勝手がいいのもエディックスの魅力のひとつだ。

 エディックスの目玉であるフロントセンターシートは、シートバックを倒すことでアームレストを兼ねたトレイになったり、シート座面の前半分を反転させるとトレイがふたつ出現。さらにシート下には大容量のアンダーボックスが備わっているので、手荷物を置くスペースには困らない。

 荷室も十分に広い。家族や仲間で移動する頻度が多いミニバンならではの用途を踏まえ、コンパクトな全長としつつも大容量のラゲッジスペースが確保されている。6名フル乗車時なら439L、前列に3人乗車の場合は最大1049Lという容量で、しっかり人数ぶんの荷物が積める優れた積載性を実現している。

 しかも、後席は3席すべてにはホンダ独自のダイブダウン機構を装備。左右席はフロントシートを動かすことなく、肩口のレバーを引きながら倒すだけで格納できるので、フラットで広々としたスペースにアレンジできる。

 後席をすべて倒せば26インチのマウンテンバイクが3台積めたり、中央席だけ倒すと4名が乗車しながら長尺物を積めたり、後席の2席分を格納することで4名乗車でも広大な荷室にできるなど、さまざまな用途に対応できる。エディックスが打ち出した3×2は、ミニバンとして優れたユーティリティと、使い方を限定しない自由度をもたらす、まさに革新のパッケージだった。

 3×2パッケージは、居住性と実用性だけでなく走りにおいてもメリットをもたらす。ワイドトレッドで、すべての乗員がホイールベース内に収まるため、前後荷重の変化が少なくバランスがいい。

 さらにワイドトレッドは、前後のサスペンションはロール方向に対して安定感を確保できるので足まわりが柔らかめのセッティングにできる。これが優れた操縦安定性としなやかで快適な乗り心地の両立に効いている。

 エンジンは、VTECに加え、吸気バルブタイミングの位相をエンジン負荷に応じて連続的に制御するVTCを組み合わせた2L i-VTECエンジンと、軽快な走りと低燃費を実現する1.7L VTECエンジンの2種類を用意。

 いずれも、パワフルで伸びやかな加速性能を発揮し、6名が乗車しても、街なかでも高速道路でも爽快かつスムーズな走りが楽しめる。こうした特徴によって、オデッセイやストリームといったスポーティな走行特性をウリにするミニバンに匹敵する気持ちのいい運転感覚を味わうことができるのだ。

 3席×2列=6座独立の革新的なパッケージによって、一緒にクルマに乗る人たちとの一体感をもたらしながら、使い勝手でも独自性を発揮し、ワイドトレッドを活かして走りもいい。

ワイドスタンスの安定感を強調しながら、斜めに切り落としたような造形のルーフエンドや大きな曲率のリアガラスによってリアビューはミニバンらしくない斬新さを表現
ワイドスタンスの安定感を強調しながら、斜めに切り落としたような造形のルーフエンドや大きな曲率のリアガラスによってリアビューはミニバンらしくない斬新さを表現

 エディックスの特徴は、2000年代前半に群雄割拠の様相を呈していたミニバンクラスで新たな価値を提案したが、やっぱりミニバンは3列シートがいいとか、スライドドアではなかったこと。画期的と思われた3×2パッケージにジャストフィットするユーザーがあまり多くなかったこと。さらに、一時的に脚光を浴びたロールーフミニバンも次々と絶版になっていたこと。こうした要因がいくつも重なり、残念ながらその歴史は1代限りで幕を閉じてしまう。

 しかし世帯構成人数の減少が加速し、一度に乗車する人数が減っている世の事情や、2000年代前半よりもユーザーのニーズがさらに多様化していることなどを鑑みると、もし、エディックスが今どきのミニバンクラスで売れ筋になっているノア、ヴォクシー、セレナ、ステップワゴンのような特徴を基本としながら、3席×2列のパッケージを有しているとしたら……歴史は続いたかもしれないと、あてもないことを心に思ったりする。

【画像ギャラリー】時代が早すぎた? 異色の6人乗りモデル、エディックスの写真をもっと見る!(9枚)画像ギャラリー

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