こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 ランエボワゴンは速く快適な唯一無二の存在

■走りを極めるべく細部まで徹底して強化された

 セダンよりも幅広い用途を想定し、パワートレーンは2タイプ用意される。本格的なスポーツドライブを楽しみたいユーザー向けとなる「GT」には、ランエボIXのGTと遜色ない走りを味わわせるべく、4G63型エンジンを6速MTと組み合わせて搭載し、すべての領域で高いレスポンスと、フラットかつワイドなトルク特性を実現した。

 最高出力はセダンと同じく、280ps(206kW)としているが、ワゴン化に伴う重量増を考慮し、最大トルクは392Nm(40.0kgm)と、やや抑えた数値としている。

 ATモデルのGT-Aは、ランエボⅦで設定されていたGT-Aと同様の4G63型エンジンにスポーツモード付きの5速ATの組み合わせとなる。ターボチャージャーは、ATとのマッチングを考慮して、低回転からレスポンスに優れる小型タイプを採用。

 最高出力が272ps(200kW)、最大トルクは343Nm(35.0kgm)という、ピークパワーよりも低中速トルクとレスポンスを重視した特性としているが、それでもワゴンとしてはハイスペックで、動力性能についても屈指のパフォーマンスを発揮した。

 足まわりは軽量な鍛造アルミ製の各アーム類で構成した、ストラット倒立式サスペンションをフロントに、マルチリンク式サスペンションをリアに奢る。

 ビルシュタイン社との共同開発したショックアブソーバーを採用したほか、徹底したボディ強化の効果も相まって、日常では快適に、攻めた走りをしたときには高いロードホールディング性能とライントレース性能を発揮し、ランエボらしい走りを味わうことができた。

 もちろん卓越した走りをより高みに導いている要素として、オール・ホイール・コントロール(AWC)という考えに基づいて構成される4WD性能の恩恵があることは間違いない。

 フルタイム4WDシステムをベースとしながら、センターデフにはハンドリングとトラクション性能を高次元で両立するACD(アクティブ・センター・ディファレンシャル)を装備し、リアデフには路面状況を問わず優れた直進安定性を発揮しながらトラクション性能の向上が図れる機械式LSDを採用した。

 6速MTのGTではヘリカル式LSDとしており、いずれもスポーツドライビングを思う存分楽しめた。

搭載エンジンは4G63型MIVECインタークーラーターボで、6速MTのGT、5速ATのGTAとのマッチングを図って搭載されていた
搭載エンジンは4G63型MIVECインタークーラーターボで、6速MTのGT、5速ATのGTAとのマッチングを図って搭載されていた

 2005年9月に2500台限定で販売され、2006年8月には「MR」のネーミングを冠したモデルがセダンと合わせて1500台の限定で販売された。最終的に両モデル合わせたランエボワゴンの販売台数は2847台。

 第3世代のランエボのなかではもっとも希少な存在であることから中古車市場における流通台数が極めて少ないため相場は年式のわりに高値となるが、今どきの新車市場では存在しない、走りを極めたスポーツワゴンというキャラクターを鑑みれば、300万円を超える価格にも納得できる。

 スタイリッシュなクルマが増えた昨今のトレンドからすると、ランエボワゴンの見た目は無骨で垢抜けない印象を抱くが、メカニズムの多くをランエボから継承して走りを極めるべく真摯に作り込まれている。

 三菱に限ったことではないが、自動車メーカーは電動化技術を中心としたクルマづくりを推し進めており、ランエボのようなクルマが再誕する可能性は低いと言わざるを得ない。

 それでもランエボワゴンを含めたランエボシリーズは、4輪制御技術の分野において三菱の礎になったモデルであることは街がない。

 希少ではあるが、もしランエボワゴンを手にしてドライブする機会があるなら、三菱が高い技術力を基盤にこだわりをもったクルマづくりをするメーカーであることを再認識することができるだろう。

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