こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 軽自動車の基準を広げたミドシップレイアウトのホンダZはなぜ不運な運命を辿ったのか?

こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 軽自動車の基準を広げたミドシップレイアウトのホンダZはなぜ不運な運命を辿ったのか?

 これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。

 当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、1998年に登場した2代目ホンダZを取り上げる。

文/フォッケウルフ、写真/ホンダ

■実は2代目だった1998年モデル

 「Z(ゼット)」と聞くと、日本人の多くが日産の「フェアレディZ」を思い浮かべるかもしれない。しかし実はホンダにも「Z」があった。しかも1台のみならず2台である。そのどちらも強い個性を持つモデルだったが、今回は1998年に登場した2代目ホンダZを取り上げたい。

 1970年に登場した初代ホンダZは、N360をベースに、「水中メガネ」と呼ばれた独特なリアのスタイリングや、コックピット風のインテリア、5速MTや前輪ディスクブレーキなどを備えたモデルで、スペシャリティカーらしく仕上げられていた。

 そして、長い空白の時を経て、1998年の軽自動車規格変更後に登場したのが、2代目となるホンダZである。初代モデルとの共通点は、前例がない個性を放っていたこと。SUV風のスタイリングも特徴的だったが、一番のポイントはミッドシップレイアウトが採用されていたことだ。この外観と中身のミスマッチ感も不思議な魅力を放っていた。

当時のスタンダードとは異なる新機軸SUV型軽自動車。車名の「Z」には、「すべてに“究極”を目指したスモール」という意志が込められている
当時のスタンダードとは異なる新機軸SUV型軽自動車。車名の「Z」には、「すべてに“究極”を目指したスモール」という意志が込められている

 1998年当時といえば、数年前に登場したワゴンRに影響を受ける形で、軽自動車のメインストリームがルーフの高いハイトワゴンになりかけていた時代。ホンダからも同タイプのライフが販売されていた。ただこの年は軽自動車規格が大きく改正されたため、スズキやダイハツも含めて多くのメーカーが、さまざまなモデルをデビュー、あるいはモデルチェンジさせていた。

 そんななかで登場したホンダZは、一風変わったSUVテイストのスタイリングで登場。現代ならわかるが、当時、SUV系の軽自動車というのは少なく、本格的な走行性能を持つジムニーやパジェロに対抗するモデルかと思われた。しかし実際のところはよりオリジナリティを極めた、ある意味、初代モデルに通じるスペシャリティなモデルであった。

次ページは : ■SUV風スタイルに軽自動車の常識を変えたメカニズム

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