【消滅しているのか、姿を変えて進化しているのか】注目を集めた技術の今

メーカー純正 スーパーチャージャー

 スーパーチャージャー(S/C)といえば、ルーツ式ブロアに代表される容積型過給器のこと。クランクプーリーからベルトで駆動されるため、レスポンスはいいが馬力ロスも大きく、トータルとしてはあまり効率がよくないとされている。

 昔は国産車でもクラウンやMR2、スバルの軽自動車などにS/C装着グレードがあったが、やはりネックとなるのは燃費性能。最近ではパワーアップの手段としてはジャガーやコルベットくらいしか使われていない。

1984年にデビューした初代MR2(AW11)のトップグレードに1.6L、直4DOHC+スーパーチャージャーが搭載された。最高出力は146psをマーク

 燃費には目をつぶって、ガツンとパンチのあるパフォーマンスがほしい時に使われるドーピング剤。そんなイメージだろうか。ただ、モノは使いようだから適材適所にS/Cをワンポイントリリーフ的に使うのはアリだ。

 代表的なのは、ターボのレスポンス遅れ(いわゆるターボラグ)をカバーする利用法。古くはグループBラリー車のランチアデルタS4や、日産マーチスーパーターボがターボとS/Cのツインチャージャーを採用していたが、燃費志向エンジンに応用したのがVWのダウンサイズターボTSIの初期モデル。

 実用的なファミリーカーにもかかわらず、贅沢なツインチャージャーが使われていた。

 最近はS/Cを電動モーター駆動にして必要な時だけ使うのがトレンド。ベンツの新しい直6やアウディのV8はこのタイプだ。

 新しいマツダのスカイアクティブXにもS/Cが装備されているが、これは希薄燃焼のための余剰空気を供給するのが目的。

 スカイアクティブXのS/Cはベルト駆動だが、コストが許せばこれは電動化したかったというのが本音。モーター駆動S/Cの価格がこなれてきたら、これから意外に流行るかもしれませんね。

マツダ3に搭載されてデビューすることが決まっているSKYACTIV-Xにはスーパーチャージャーが組み合わされている。余剰空気を供給するために搭載

ミラーサイクルエンジン

 ミラーサイクルと言ったりアトキンソンサイクルと言ったりちょっと混乱しているが、これは圧縮比より膨張比が大きい作動サイクルの名称だ。

 要するに「ピストンが吸気を圧縮するストロークより、爆発後にピストンが下降するストロークのほうが大きい」のがその特徴。

専門家をして、日本で有数のお金のかかった贅沢エンジンといわれるマツダのミラーサイクルエンジン。2.3Lで220ps/30.0kgmをマーク

 これを機械式のリンクで実現したものをアトキンソンサイクル、バルブタイミングの制御で実現したものをミラーサイクルと呼んでいる。

 そういう意味では、現在市場で買える「圧縮比<膨張比」エンジンはすべてミラーサイクルなのだが、なぜかトヨタだけはアトキンソンサイクルと呼んでいるのが混乱の元。  

アトキンソンサイクルエンジンを搭載するクラウンハイブリッド。トヨタはミラーサイクルではなくアトキンソンサイクルと呼ぶ

 そのミラーサイクルだが、量産エンジンとしての元祖は1993年登場のユーノス800(後のミレーニア)だ。これは一種のダウンサイズ過給エンジンで、2.3L、V6で、3L級のドライバビリティと2L級の燃費を狙った意欲作。

 過給器としてベルト駆動のリショルムコンプレッサーを使うなど、バブル期らしく贅沢にコストをかけたエンジンだった。

 商業的にはマツダのミラーサイクルは失敗だったが、可変バルタイを利用してお手軽にミラーサイクルを実現するという手法は、後に広く普及することになる。

 ミラーサイクルの原理は「小さく吸って大きく吐き出す」だから、吸気バルブの遅閉じでも早閉じでもエンジンが吸い込む空気量が減ってパワーはダウンする。

 そのかわり、膨張行程でのエネルギー回収率が高いから全体の熱効率が向上するし、同じ負荷を維持する場合のアクセル開度が大きくなってポンピングロスも減る。

 なるべくその状態を維持して走りたいのだが、加速する時などには通常のバルブタイミングに戻してパワーを出す。これが燃費悪化の元となる。

 ここまで説明すれば察しのいい人は気づくと思うけど、パワーが必要なときには電気モーターが助けてくれるハイブリッドは、ミラーサイクルとめちゃめちゃ相性がいい。

 極論すれば、ノートe‐POWERみたいなシリーズハイブリッドなら内燃機関は常にミラーサイクルで回せるわけで、電動化時代を控えてこれが内燃機関の標準となる日も近いのかもしれません。

ミラーサイクルエンジンはノートe-POWERのようなシリーズハイブリッドの発電用エンジンとして使うのがベスト。今後増えていく可能性もある

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