ジムニー、ハスラー…から読みとく謎多きスズキデザイン6選

 日本の乗用車メーカーのなかでスズキの出すクルマは個性的で、スズキは何をやってくるかがわからない面白さがある。よくスキマ商法と表現されるがいい得て妙だ。

 そのスズキは古くはジョルジェット・ジウジアーロがフロンテクーペのデザインに関与していたり、ショーで出店したコンセプトカーをほぼそのまま市販したりと、デザインに関しても話題は事欠かない。

 そんな個性派のスズキのデザインを清水草一氏が斬る。

文:清水草一/写真:SUZUKI、池之平昌信、ベストカー編集部


スズキのデザインは落差が激しすぎる!!

 スズキのデザインは、いろいろな意味で凄い。歴史的な傑作をひょいと送り出したかと思えば、ズッコケてしまうような失敗作もある。歴代モデルで見ると、傑作の代表は初代ワゴンRや2代目スイフトで、失敗作の代表はX-90だろう。

1993年にデビューした初代ワゴンRは鈴木修会長の鶴のひと声で発売直前に車名が『ワゴンであーる』からワゴンRとなった逸話があるが、デザインの評価も高い

 いったいなぜ、スズキのデザインにはこんなにムラが大きいのか?

 スズキデザインの内幕は、正直なところまったく不明だが、ムラの要因としては、スズキ独特の割り切りがあるんではなかろうか?

 スズキには、鈴木修会長の経営哲学が浸透している。「ウチは中小企業」というのをベースに、狙いを定めた割り切ったクルマ作りをしてくる。「アルト47万円」みたいな。

 デザインに関しても、決して「美しいクルマを作りたい」といった高邁な哲学はなく、この市場ではこんなクルマがおもしろいんじゃないかとか、こんなのがウケるんじゃないかという感じで、リスクを取った勝負を仕掛けてくる。

 その市場というのがまた独特だ。スズキの主要市場といえば、日本の軽と欧州のコンパクトカー、そしてインドだ。市場が求めるものがまるで違うので、当然デザインもまるでテイストが違ってくるが、それぞれの市場に向けて綿密に顧客調査をしているようでもなく、提案型の斬新なデザインが多かったりする。

 ということで、スズキが日本で販売している現行モデルの中から、いいデザインと、いまひとつなデザインを3台ずつ挙げてみよう。

1993年の東京モーターショーに出展後、1995年から日本で販売を開始したX-90はエスクードベースの2シーターのクロスオーバーカーだったが2年少々で販売終了

【いいデザイン1】ジムニー/ジムニーシエラ 「究極の機能美」

ジムニー:145万8000~184万1400円
ジムニーシエラ:176万400~201万9600円

2018年7月にデビューした4代目ジムニー。約20年ぶりの新型ということで話題になり、 初代をオマージュしたデザインも大好評 でデビュー直後から大人気

 初代ワゴンRとも共通する、虚飾を排して機能に徹した傑作デザイン。機能美のカタマリだ!

 もともとジムニーは、ジープに源流を持つ本格的オフロード4WDの軽自動車版として誕生した経緯があり、グリルは初代の第2期からウィリス・ジープそっくりの縦型スロットの採用を始めているが、現行ジムニーもそれを踏襲している。

 現行モデルのフォルムはメルセデスGクラスの縮小版そのものに近いが、「似てるからちょっと変えよう」みたいな迷いは一切なく、シンプルに突き進んでいるところが潔い。ここまでシンプルだと、Gクラス云々という雑音も吹っ飛んでしまう。

 ジムニーは代ごとにデザインを洗練させ、現在の4代目にして究極に至った。ここまで来れば誰も文句を言えまい。

3代目では影が薄かったジムニーシエラも新型になり爆発人気。日本の販売割り当てが少ないため納車待ちは長い。ジムニーとは前後のオーバーフェンダーが違う

【いいデザイン2】ハスラー 「そのユルさがたまらない」

ハスラー:110万520~170万5320円

 登場からすで5年たつが、いまだその傑作デザインぶりは色あせていない。

 ハスラーは、Keiの後継モデルといわれるが、Keiが比較的マトモにSUVっぽかったのに対して、ハスラーはワゴンRのアウトドア版的な、はるかにユルい脱力系の香りが漂っている。

ハスラーは2013年の東京モーターショーで世界初公開され、2014年1月から販売を開始。デビューから丸5年が過ぎたがいまだにそのデザインの新鮮味は薄れない

 つまり、なんちゃってSUV的なのだが、その脱力感とワゴンR譲りの居住性の高さが、独特のかわいらしさや腕白感を醸し出して大ヒットにつながった。

 ユルい雰囲気でありながら、前後オーバーハングは短く、最低地上高も180ミリを確保しているので、走破性はかなり高い。ちゃんと走りそうな気配があるところがまたイイのだ。

 ハスラーのデザインは、大ヒットは狙わないスズキ的な無欲さゆえの思い切り感が濃厚だ。だからこそ、王道を大きく外したユニークなデザインが生まれるのだ。つまりハスラーは、瓢箪から駒で大ヒットになった初代ワゴンRに近いだろう。

 しかも、ハズシ技のハスラーが大ヒットしたからこそ、新型ジムニーは徹底的に機能に徹した本格的オフロード4WD的なデザインにすることができたのだから、瓢箪から駒が、また駒を生んだことになる。

柔のハスラーに対し剛のジムニー。好対照な2台だが、ジムニーが本格オフローダーの道を究められたのはハスラーのハズシ技が成功したことと無縁ではないはず

【いいデザイン3】イグニス 「本格的ヨーロピアンデザイン」

イグニス:138万2400~177万8600円

 小型クロスオーバーSUVで、踏ん張り感の強い台形の断面を持っている。そのデザインテイストは明らかにヨーロピアンだが、決して欧州市場だけを狙ったわけではなく、まず日本市場に投入され、その後欧州やインドでも販売が始まっている。

イグニスのコンセプトは使いやすいコンパクトクロスオーバーカーで、2016年2月から販売開始。全グレードとも1.2Lマイルドハイブリッド

 ヨーロピアンなフォルムであるがゆえに、居住性は軽ハイトワゴンにも大きく劣る。おかげで日本市場では苦戦しているが(今年1~5月の販売台数は1890台)、そのデザインは随所にセンスが光っている。

 まず、クロスオーバーSUVでありながら、いかにも走りそうなたたずまいだ。

 ハスラーや歴代ワゴンRなど、「遅いデザイン」で数々のヒットを飛ばしてきたスズキだが、イグニスはその逆でありながら、しっかりカッコよくまとまっている。ただリアビューは、オーバーフェンダーが強調されすぎていて、スッキリ小粋なフロントとのバランスを欠いているのが惜しいが。

お世辞にも高級素材を使っているわけではないが、デザイン、色遣いにこだわりを見せるイグニスのインテリア。こういった雰囲気のある仕上げはスズキの得意技だ

 インテリアは、チープな素材でオシャレに仕上げたイタリアンテイスト。このあたり、トヨタや日産には、逆立ちしてもマネできまいて。イグニスを見ると、スズキデザインの懐の深さがよくわかる。

 そのほか現行モデルのデザインでは、軽自動車として屈指のカタマリ感を持つアルトや、かわいいヌイグルミ系デザインの傑作・ラパン、ヨーロピアンデザインのスイフトが光っている。

清水氏が現行の軽自動車として一番固まり感があるデザインと高く評価するアルト。非対称グリル、高いウェストラインが特徴。価格は84万7800~165万5640円

【いまひとつなデザイン1】SX4 Sクロス 「なんでこうなるの?」

SX4 Sクロス:214万560~235万6560円

 先代SX4はフィアットとの共同開発で、デザインはイタルデザイン。あのジウジアーロ氏のカロッツェリアだった。日本ではウケなかったが、素朴でありながらセンスあるフォルムがすばらしく、個人的に大好きだった。

 が、現行モデルはスズキの独自開発になり、なぜかデザインが猛烈な凡作に。どうにもバランスの悪いダサい形になってしまった。

WRCマシンに抜擢されたSX4の2代目がSX4 Sクロスで、2015年2月に日本デビュー。ハンガリーのマジャールスズキで生産し輸入。マイチェンで顔が激変

 しかも、マイナーチェンジでBMWの出来損ないみたいなフロントグリルまで装着され、「なんじゃこりゃ!?」というシロモノに。日本ではまったくと言っていいほど売れていないので(今年1~5月の販売台数は578台)、あまり目にすることもないが。

 現行SX4 Sクロスは、ハンガリー工場での生産がメイン。その後インドや中国での生産も始まったが、東欧や南欧の大衆向けSUVということなのだろうか? それにしても、スズキらしいセンスがまったく感じられない。

【いまひとつなデザイン2】エスクード 「鈍重でバランスが悪い」

エスクード:265万8960円

エスクードは2015年10月から日本で販売開始。スズキ独自の4WD技術のオールグリップを搭載し本格オフロード走行もこなすタフさが魅力だが販売面で苦戦

 これもSX4 Sクロス同様、まったくセンスを感じさせない、コンパクトなのに鈍重でバランスの悪いSUVだ。

 初代エスクードは、どこかフランス車の香りを漂わせるステキなデザインだったが、2代目から突如途上国向けの安物デザインに変身し、3代目、そして現行の4代目もその流れで来ている。これもまたスズキデザインの奥深さか……。

初代エスクードは1988年にデビュー。オフロードを走れるシティオフローダーの先駆けとして新ジャンルを構築。武骨なまでのスクエアなデザインも好評だった。代を重ねるごとに存在感が薄くなっているのが残念

【いまひとつなデザイン3】バレーノ 「はっきりインド向け」

バレーノ:154万4400~172万8000円

 これは非常にわかりやすくインド向けの商品。フロントマスクはヒンドゥー教寺院の曲線を取り入れたのか? 内装のチープさはまさに途上国向け。インドでは人気なので問題はないのだが、なぜこのクルマをわざわざ日本市場に投入したのか、その理由がわからない。 

 予想どおりほとんど売れてないし……(今年1~5月の販売台数は367台)。インドから全世界に輸出されているので、その一環で日本にも来たんでしょうけど。

2015年10月にインドでデビューし、日本では2016年3月から販売開始。エンジンは1.2LDOHCと1LDOHC直噴ターボの2種類。全幅は1745mmの3ナンバーサイズ

 バレーノに関しては、インド市場がメインの商品なので、一概にデザインがイマイチとも言えないが、日本市場では落第デザインというしかない。

 その他、現行ワゴンRのデザインも迷走している。初代から続いた名作の系譜を覆した凡作だ。

 まあ、失敗もあるから成功もあると思えば、いろいろあっていーんですが。

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