なぜ売れないOEM車を売り続けるのか?

対顧客ではない理由もある

ダイハツが開発したコンパクトカーはトヨタではタンク&ルーミー、スバルではジャスティ、ダイハツではトールとして販売され、特にタンク&ルーミーは大人気

 ダイハツのメビウスやアルティスは、ダイハツとその関連企業や従業員の需要、コンパクトなブーンやトールから上級移行するニーズに応える役割もある。

 またダイハツは、自社で開発と生産を行うブーンのOEM車をパッソ、トールのOEM車をルーミー&タンク、さらに軽自動車もトヨタに供給しているから、引き替えにメビウスやアルティスの供給を受けている事情もある。

 ダイハツはトヨタの完全子会社だから、OEM関係も密接だ。

ダイハツアルティスは2000年にカムリのOEM車として販売を開始して現行が5代目。初代から販売台数は少ないが、ラインナップしていることに意味がある

 スズキがランディを扱う理由も似ている。今の日産は、三菱と合弁でNMKVを立ち上げて軽乗用車を開発するが、以前はスズキMRワゴンを日産モコ、スズキパレットを日産ルークスとして販売していた。

 今でもエブリイと同ワゴンは、NV100クリッパーと同リオとしてスズキから供給されている。そこで逆のパターンとして、スズキは日産にランディを供給する。このようにOEM車は、一方的な供給ではなく、相互に補完し合うことが多い。

日産初の軽自動車は2002年4月に販売を開始したモコで、スズキMRワゴンのOEM車だった。今では三菱との合弁会社のNMKVで軽自動車を共同開発しているが、スズキとのOEMのやり取りで良好な関係を続けていて、今後も揺るぎないだろう

食い違うメーカーと販社の見解

 そして日産、マツダ、三菱の3メーカーにOEM車を供給するスズキの商品企画担当者は、次のように述べている。「OEM車は、開発と製造を行うメーカーにとって、とても効率が高い。営業や広告宣伝などのコストがかからず、メーカーとしての開発と生産に徹すればいいからだ。OEMの話は喜んで引き受けたい」。

マツダは1994年からワゴンRのOEMとしてAZワゴンを販売。2012年9月に登場した新型からフレアに車名を変更し、現行モデルはフレアとしては2代目となる

 いっぽう、販売会社の見方は複雑だ。

 スズキの販売店からは、「稀にだが、スズキワゴンRとOEM車のマツダフレアが値引き額を巡って競争することがある。マツダは軽自動車で利益を上げることをあまり考えていないのか、値引き額がかなり多い。頻繁に競うわけではないが、値引きの競争に負けた時は、メーカーにはOEMをあまりやってほしくないと思う」、と打ち明けた。

 この気持ちもわかる。スズキ車の拡販に力を入れているスズキの販売店として、マツダのディーラーに値引き競争で負けて顧客を奪われるのは悔しいだろう。

 このようにOEM車に対するメーカーや販売会社の思いはさまざまだ。ユーザーから見ると、マツダやスバルが軽自動車の開発と生産を終えてスズキやダイハツのOEM車に切り替えれば、選択肢が実質的に減ってしまう。

 特にスバルの軽自動車は、直列4気筒エンジンや4輪独立懸架の採用で上質な走りを味わえたから、ダイハツ製OEM車に切り替わったのは残念であった。

スバルの自社開発軽自動車で最後まで生産、販売が続けれてていたサンバーも2012年2月に惜しまれつつ生産終了。2012年4月からはハイゼット系のOEMとなった

 しかしスバルがOEM車すら扱わないと、ユーザーはさらに不便を強いられてしまう。OEM車は、自社製品を整えられないメーカーにとって、苦肉の策となるわけだ。

 今後は国内需要がさらに伸び悩み、メーカーの安全/環境技術の開発費用などは増えるから、さらにOEM車が増える可能性がある。

 この時に大切なのは、OEM車でも、合理的に個性化を図ることだ。デイズとeKクロスはOEMではないが、姉妹車でありながら、フロントマスクの変更で違うクルマのように見せている。OEM車にもこのような工夫が求められる。

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