【アイドリングストップでもエアコンが止まらない】先進式エアコンが全車搭載にならない理由

すでに量産効果でコストダウンを実現

 さらに、初期に問題となったのは、電動コンプレッサーのコスト高だ。

 通常のコンプレッサーは圧縮機本体とベルト/クラッチで構成されるが、電動化するとベルト/クラッチは不要になるかわり、出力1〜3kWクラスのモーターと制御用インバーターがコストに加わる。

 トヨタだけは、デンソー、アイシン、豊田自動織機などのグループ総力を挙げて、ハイブリッド初期からコスト低減にメドをつけていたが、他メーカーはこういう補機類のコストだけでハイブリッド車開発をブン投げたくなるほどの難題だったといわれている。

スズキスイフトはマイルドハイブリッド、ハイブリッドとも電動コンプレッサーを使用していない。その代わり冷気を蓄えておくエコクールを開発し快適性を確保

 この点で興味深いのは、ホンダが2代目シビック・ハイブリッド(FD3型)で、ベルト駆動のスクロールと電動駆動のスクロールを両方備えた、ハイブリッドスクロールコンプレッサーを採用していること。

 素人目には素直にフル電動化した方がコスト低減できそうにみえるのだが、おそらく電動コンプレッサーの負担を下げることで、モーター/インバーター系をふくむ電動部分のコストを抑制するのが狙い。初期には、電動系のコストはわれわれが想像する以上に高かったというわけだ。

2代目プリウスに搭載された豊田自動織機が開発した電動コンプレッサーのES18。軽量化、静粛性を大きく進化させた第3世代の商品を登場させている

 しかし、ハイブリッド車ブーム到来のおかげで、2016年には豊田自動織機が電動コンプレッサーの累計1000万台突破を達成するなど、電動コンプレッサーの普及はわれわれの想像を超えたスピードで進んだ。

 トヨタが先駆者としてエアコンコンプレッサーの電動化を推進してくれたおかげで、他メーカーもエアコンの電動化がしやすくなったとは言える。

 特にこれから台数が増えてゆくEVにとっては、手頃な価格で高効率な電動コンプレッサーを調達できるというのはありがたいこと。

 2000年代初頭からのハイブリッドブームがなかったら、電池の低コスト化だけではなく、補機類の調達でもEVはずっと苦労することになったと思う。

 アイドル停止していても室内が冷えひえの快適なクルマは、すべて電動コンプレッサーが黒子として大活躍しているというわけですね。

ホンダのIMAはベルト駆動のコンプレッサーを使っていたが、2005年にデビューした2代目シビックハイブリッドで、ベルト駆動と電動の両方を備えたハイブリッドスクロールエアコンを登場させた。アプローチがホンダらしい力作だったが、フル電動との性能差は明らかだった

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