日本車は規格が決まった軽自動車や厳しく制約されているコンパクトカーが多くラインナップされている。
昭和までは2Lを超える排気量には高額な自動車税が課せられるといった枠が多かったこともあり、「限られた小さな枠に盛り込む」というダウンサイジング技術を昔から得意としていた。
当記事ではそんな小さなクルマに搭載された「当たり前に使っているけど、実はすごい技術」をピックアップする。
文:永田恵一/写真:HONDA、DAIHATSU、SUZUKI、平野学、ベストカー編集部
新型ダイハツタントのD-CVT
新型タントに搭載された新開発CVTのD-CVTは、世界で初めてスプリットギアを採用したCVTだ。
一般的なCVTはベルトを使い、プーリーの径を変えることで変速を行う。それに対し、D-CVTはベルトだけでなくギアを組み合わせて駆動する。
発進時は従来どおりベルト駆動ながら、一定速度に達したらギアを併用することにより高効率に動力を伝達することができる。クラスを超えたスムーズな加速を実現しているわけだ。
さらに、D-CVTは、これまでのCVTの変速比の幅はATで換算すると6速が限界と言われていたのに対し、8ATに匹敵するワイドな変速比を実現しているのも凄いところだ。これで高速走行時などの静粛性も向上している。
高効率で燃費はよくなり、スムーズな加速、静粛性の向上などによる走りの質感の大幅アップに大きく貢献している画期的なCVTとなのだ。
ダイハツタントのピラーレスドア
2003年登場の初代タントは現在の軽自動車の売れ筋となっている、それまでのワゴンRやムーブの全高を高めスライドドアと使い勝手に優れる軽スーパーハイトワゴンというジャンルを開拓したモデルである。
2007年登場の2代目タントではさらなら乗降性やチャイルドシートの付けやすさ、大きな荷物の出し入れのしやすさに代表される使い勝手を向上させるべく、左側のセンターピラーレスドア(前ヒンジドア、後ろスライドドア)を採用。
以降現行モデルも含めセンターピラーレスドアはタントのアイコンとなっているのだが、実用化には左右同等のボディ剛性、側面衝突の安全性確保、シートベルトを埋め込んだ助手席シートの開発など、課題も多かったが克服して商品化。
そのセンターピラーレスドアはタントだけの唯一無二の武器になっているだけに、実用化した成果は大きかった。
ホンダのセンタータンクレイアウト
2019年中にフルモデルチェンジされるホンダのコンパクトカーであるフィットの初代モデル(2001年登場)の開発にあたり、大きな狙いとなったのが「フィット1台で万能に使える広いキャビン、ラゲッジスペースを持つコンパクトカーを造る」ということであった。
実現のため全高を高くする、エンジンルームを小さくするといったことも行われたのだが、決め手に欠けたのも事実だった。
そんな時にできた新技術が「エンジンを積むクルマには絶対必要だけど、大きなスペースを取る」燃料タンクを、リアシートがあるクルマならたいていリアシート下に置く燃料タンクを前席下に置くセンタータンクレイアウトである。
センタータンクレイアウトの採用により室内が広くなったのはもちろん、リアシート下が空いたことでリアシートを倒せばフラットで高さのある広いラゲッジスペースができたのに加え、リアシート座面の跳ね上げも可能になり観葉植物のような高さのある荷物の運搬にも対応。
結果初代フィットは狙いどおり格上のミドルクラスを軽く凌駕する広いコンパクトカーとなり、この点は歴代フィットのよきDNAとして受け継がれている。
登場自体は古いが、進化を続けていてN-BOX、N-WGNといった軽自動車に幅広く採用され、広さはホンダ車では当たり前のこととなった。
コメント
コメントの使い方