耐久レースの頂点といえば、世界三大レースのひとつ、ル・マン24時間レース。
今年のル・マンでは、トヨタが残り1周で優勝を逃したことが話題になったのも記憶に新しいところだ。しかし、そのル・マン24時間が組み込まれる世界選手権でありながら、日本では少しばかり知名度が低いのが「WEC」だ。
そんなWECの日本ラウンド「第7戦富士6時間レース」は、10月16日に決勝を迎え、トヨタが今シーズン初優勝を達成した。
トヨタも参戦する耐久レースの世界最高峰、WECとはいったいどんなモノなのか?
文:WEBベストカー編集部/写真:TOYOTA、Porsche、Audi
参戦メーカーやマシンは? WECの概要
WECとはWorld Endulance Championship=世界耐久選手権の略で、F1やWRCと同じく、FIAが管轄する“世界選手権”。F1がフォーミュラカーの世界最高峰で、WRCがラリーの世界最高峰なら、WECは耐久レースの世界最高峰というワケだ。
では、どんなマシンが走っているのか? ここではトヨタも参戦する最上位の「ルマン・プロトタイプ1(LMP1)」クラスに絞って見ていこう。
現在トヨタ、ポルシェ、アウディの3大ワークスメーカーが、専用ハイブリッドマシンで鎬を削るのがLMP1で、その3メーカーのマシンはこちら。


エンジンとモーター合わせたパワーユニットの最高出力は1000ps級というモンスターハイブリッド耐久マシンでありながら、排気量もまちまちで、ガソリンターボあり、ディーゼルターボありと各メーカー独自のアプローチを採っている点が興味深いところ。
それでいて、3大ワークスマシンの戦力差は年々拮抗してきている。
そして、3メーカーともマシンサイズは、全長4650㎜×全幅1900㎜×全高1050㎜と、その全幅ときたらF1マシンよりワイド。これらが世界最高峰の耐久マシンの凄さなのだ。
ちなみにトヨタは現行型プリウスの一部グレードでリチウムイオンバッテリーを採用しているが、WECのTS050 HYBRIDもバッテリーはリチウムイオンを採用している。
元F1ドライバーも多数参戦
そして、もうひとつ。WECの世界最高峰たる所以はドライバーにもある。
F1でチャンピオンチームのレッドブルに在籍していたマーク・ウェバーがポルシェで走り、トヨタにはF1時代、佐藤琢磨とチームメートだったアンソニー・デビッドソンや日本人元F1ドライバーコンビの中嶋一貴、小林可夢偉も参戦。
このほか世界トップクラスのドライバーたちが集い、通常レースは6時間、ル・マンは24時間という長時間のレースを、マシン1台につき3人のドライバーで走らせている。
ちなみに富士スピードウェイでF1が開催された時の周回数は67。対してWEC富士6時間の周回数は244周。F1の3倍以上という長距離のなかでマシンをコントロールし、チームで協力しつつ、ゴールまでマシンを運ぶ。
ドライバーには、F1とはひと味違う戦い方、ハイレベルなスキル・経験が求められるのがWECの難しさでもあるのだ。
トヨタチャンピオンの可能性あり!! WEC終盤戦の見所
さて、そんなWECは今シーズン残り2戦。11月6日決勝の中国戦、そして11月19日決勝のバーレーン戦を残すのみとなった。2台体制のトヨタは小林可夢偉もドライブする6号車が富士戦の優勝でランキング2位につけ、チャンピオン獲得の可能性を残している。
トヨタのWECマシン開発の中枢を担う、ハイブリッドプロジェクトリーダーの村田久武氏は、
「(今年のル・マンから)帰国後、いろんな人がいろんなことを言っているその反響の大きさに驚いた。応援にしろ否定的な意見にしろ、僕らがハイブリッド車でレースをやってることを認知してくれたからこそ。意識してくれてありがとう! ですね」(ベストカー11月10号)
と語る。
ニッポンのトヨタが、日本人ドライバーを擁して、世界の強豪ときちんと渡り合っている。それがWECなのだ。基本6時間という長いレース、あまり肩に力を入れず、食事を挟みながらのんびりと観戦する。そんな楽しみ方もできるのが、耐久レースのよさでもある。