「【トヨタF1復帰】と書かないで」異例の注文の理由とは? 主語は「人」と「未来」【豊田章男会長発言全文】

■F1の舞台で「人」「データ解析」「クルマ」を進化させる

 発表日当日、記者会見場にはトヨタ自動車の中嶋裕樹副社長(技術担当)もおり、記者の囲み取材に以下のように答えている。

「(今回のハースとの提携発表で、メディアに「トヨタF1復帰」と書いてほしくない、という発言の狙いについて)豊田会長には、かつて自分がF1撤退を決めたという思いが大きいんだと思います。当時のトヨタ自動車社長としての(F1撤退の)判断について間違っているとは今も思っていないけれども、一方で、モータースポーツを通じていろいろなドライバーと会ってみて、皆さん最高峰の夢というのはやっぱり「そこ」で走りたい、という思いを強く持っていることを日々感じていたのでしょう。

 そういう「道」を自分が閉ざしてしまった、という気持ちが大きいんだと思います。

(2023年4月に)トヨタ自動車の(社長から)会長になったし、いつも「クルマ好きのおじさんに戻れた」って言っていますよね。まさにそのクルマ好きのおじさんからしたら、「日本の子供たちに、がんばって走っていたらいつか最高峰の舞台に、F1に乗れる」という夢を持たせてあげたい、そのために何が出来るか模索した、っていう気持ちも、今回の提携に至るキッカケにあったのだと思います。

 そのうえで、トヨタ自動車としても、今回の技術提携にはしっかりと、F1で世界最高峰の技術を学ばせていただきたいと考えています。今回の業務提携にあたり重視する「3つのP」、「People(ドライバーやエンジニア・メカニックの人材育成)、Pipeline(データ解析・活用術)、Product(車両開発)」ですね。特に前者ふたつ。人材育成とデータ解析・活用術です。

 このご時世、次のネックになってくるのはPipeline(パイプライン)です。クルマから瞬時にデータが送られてきて、そのデータをどう解析してフィードバックするか。これって、 自動運転での切れ目ない通信をつくってゆくだとか、交通事故ゼロの社会を目指す際に非常に有効なノウハウです。

 内部的にはそういう話を豊田会長とコミュニケーションしていて、トヨタのSDV(ソフトウェア・ディバインド・ヴィークルは、これはまだ発表していませんが「事故ゼロ」を目指すんだ、と社内では盛り上がっています。 そのために、切れ目のない通信だとか、ドライバーの行動を予測するためのAIを使った解析。これをF1で大いに学ばせていただきたい。そういう狙いもあるんです。

 それもふまえて、どうか皆さま、長い目で見ていただいて、応援をよろしくお願いいたします。」

Haasは2024シーズン、第9戦時点で10チーム中7位。トヨタと提携することで飛躍が期待…できるか!?? 富士スピードウェイでのF1開催も期待してしまうが…(それはだいぶ先の話になりそう)
Haasは2024シーズン、第9戦時点で10チーム中7位。トヨタと提携することで飛躍が期待…できるか!?? 富士スピードウェイでのF1開催も期待してしまうが…(それはだいぶ先の話になりそう)

 会見の質疑応答では、今回の提携のキッカケのひとつが、豊田会長と平川亮選手、小林可夢偉選手、中嶋一貴選手が鈴鹿サーキットで歩いている途中、ファンから「モリゾウさん」と声をかけられたこと、というエピソードも明かされた。

 サーキットで現役ドライバーよりも「モリゾウ」のほうが声をかけられる。そういう状況に豊田会長は疑問がわき、「私よりもハンドルに近い人間が、もっと主役にならなきゃいけない」、「主役の場所をつくってあげなきゃいけない」と強く感じたという。

 こうした経緯もあって今年(2024年)2月にHaas小松代表と連絡をとり、6月に豊田会長とトップ会談を実施、一気に話がまとまったそう。

 今回のトヨタとF1との関わりは、かつてのようなエンジンや車体、マネジメントまですべて統括する、いわゆる「フル参戦」ではない。それでもトヨタがF1と携わることで、多くの日本人ドライバーが「夢」を持つことができるようになる。

 まずは「TOYOTA GAZOO Racing」のステッカーが貼られたマシンが、Haasの母国となる次戦アメリカグランプリ(2024年10月)から走り出すことになる。活躍を期待したい。

【画像ギャラリー】トヨタとF1チーム「Haas」電撃提携会見の全画像(18枚)画像ギャラリー

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