2020年にWRCが日本にやってくるのは既報のとおりだが、そのプレイベントとして、2019年11月9日~10日にセントラルラリー愛知/岐阜が開催された。
プレイベントとはいえ、走るラリーストはもちろん本気の走りだし、集まるお客さんたちも楽しみに全国から集まっている。
しかも今回は周囲に住宅もあるステージも存在し、老若男女問わず多くの人が熱狂した大会となった。
そんなセントラルラリー、大注目だったのが若武者・勝田貴元選手。現在WRCの舞台で鍛え上げられている日本を代表するラリーストだ。
ヤリスWRCを駆った若武者はなにを感じたのだろうか。
文:ベストカー編集部/写真:TOYOTA GAZOO Racing
ベストカー2019年12月26日号
■”ホンモノ”のヤリスWRCで日本を走る重責を担う
「SSだけでなくロードセクション(沿道)にも大勢のファンが来てくれて驚きました」。セントラルラリー愛知/岐阜で総合優勝を飾った勝田貴元選手のフィニッシュ後の第一声だ。
日本の林道はヨーロッパのターマックと比べると、狭くツイスティで滑りやすい。トヨタがあえてヤリスWRCを走らせたのは地元へのファンサービスとともに、「データ取りとフィードバック」という使命があったことは間違いない。
もちろん、唯一のトップカテゴリーマシンでの出走だけにリタイアは許されず、横綱相撲でシトロエンC3 R5に乗る、かつての同僚新井大輝選手らに勝たねばならぬプレッシャーがあったはずだ。
彼がヤリスWRCに乗り、真剣勝負の場に挑むのは3度目。今年8月のラリー・ドイチェランド(ターマック=舗装)、10月のラリー・スペイン(グラベル=未舗装路)、そして今回のセントラルラリー(ターマック=舗装)だ。
彼自身この3戦で走りはどう変わったのだろう? 本人に直撃してみた。
「ドイツの時は初めてのヤリスWRCでのチャレンジだったので、とにかく滑らないようにと慎重に走りました。経験不足で、頭でわかっていても体が反応しなかったように思います。
2戦目となるスペインはトラブルもあり成績はよくありませんでしたが、区間タイム的ではいいところもあり、少しずつ攻める走りができるようになってきた感覚がありました」と過去2戦を振り返った。
ドイツはセントラルラリーと同じターマックだが、本人のコメントにもあるように、高速ステージも多く、ヤリスWRCのパワーと速さに慣れることを優先にしていたことがわかる。
■狭い日本の林道を走り抜けるWRCマシン
そして今回はどうだろう? WRCとはステージの環境も違うし、なんせ狭くて曲率のきつい林道が多いのが日本の地形だ。
「狭くてカーブが連続する日本の林道でヤリスWRCをドライブすることは凄く難しかったのですが、過去2戦に比べると、楽しんで走ることができました。
もちろん、もっと上を目指さなければなりませんが、ようやくヤリスWRCと対話しながら、走ることができるようになった気がします」と語る。
本人もしっかりと手応えを感じているようだ。来年のラリー・ジャパンでも今年のSSのいくつかは使われるだろう。
今回の経験を糧に本番では表彰台を狙ってほしいし、潜在的な能力はあるはず。礼儀正しく、気持ちのいいワカモノ、勝田選手に期待したい。
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