クルマのキモはハードか? ソフトか? トヨタが耐久マシンで狙う「鼻歌を歌いながら運転できるクルマ」とは!?

市販車畑から「エース」を投入!

2026年シーズンは、技術的要素はもちろんマネジメント面もメスが入るという
2026年シーズンは、技術的要素はもちろんマネジメント面もメスが入るという

 実は今回はマシンだけでなくチーム体制にも大きな変更が行なわれている。今年からTGR-E会長を務める中嶋裕樹氏はこう語る。

「正直、我々には甘さがありました。それはマシンだけでなく体制に関してもです。TGR-Eの会長になり、より深く関わるようになって解ったことは『風通しの悪さ』です。もう少しいうと、個々の能力は高いのに組織になると発揮できない状況です。これはトヨタ自動車が抱えている課題(コミュニケーション不足や現場との距離感)とまったく同じです。他のモータースポーツカテゴリーではそこをモリゾウが中心になり変えようとしており、少しずつ変わってきている手応えを感じる一方で、TGR-Eは残念ながら旧態依然とした体制・体質があるという事実は、白い巨塔の代表の僕が見ているので間違っていないと思います(苦笑)。それを変えるために、今回無理をいってエースを投入しています」

 そこで起用されたのが、トヨタで電動車の走行制御を担当していた山本雅哉氏と、同じくトヨタでエンジン開発のスペシャリストの高橋毅氏(筆者はカローラクロスの開発者として話をしたことがある)の2人だ。

 彼らには「技術的な課題のリストアップ」、「量産車の経験をWECチームに入れること」、そして「コミュニケーションの悪いところを掘り起こす」など、技術的な部分だけでなく、マネージメント的な部分に関してもメスを入れることがミッションとなっている。この人事によって今まで以上に量産車開発とモータースポーツ開発のリンクが期待できそうである。

ソフトウェアに大きな進化の余地が……

2026年マシンのティザー画像
2026年マシンのティザー画像

 トヨタがモータースポーツに参戦する意義の1つに「そこで培った技術を市販車へフィードバックすること」があるが、そこに関して中嶋氏は「今はそのステージではなくて、まずは『勝てよ!!』と。そこまで我々は追い込まれています。そんなキレイごとをいう前に、まずは来年に向けて『勝ちにこだわる』が我々の正直な目標です。勝って技術を証明した先に、『量産車に使えるね』を考えていきたい」と本音を語ってくれた。

 一般的にWECからの量産車へのフィードバックと聞かれると、多くの人は「ハイブリッド技術」というだろうが、筆者は手持ちのハードを十二分に活かすための「ソフトウェア(=制御)や適合の技術」だと思っている。

 ここ数年、苦戦を強いられていたのは紛れもない事実であるが、視点を変えると大きなハードウェアの変更なしにライバルと戦えるレベルを維持してきた背景は、この目に見えない技術の積み重ねがあってのことだ。実はこの領域、トヨタ/レクサスの量産車開発でまだまだ足りていない部分である。

 筆者は、試乗会やテクニカルワークショップなどで量産車のエンジニアと会話をする機会が同業者の中でも多いと自負しているが、そこで感じることはトヨタのエンジニアは他のメーカーのエンジニアと比べても“ハード”に対するこだわりがとても強いことだ。

 それはとても大事なことだが、逆をいえば目に見えない部分……ソフトウェアを活用した制御や適合の部分にまだ進化の余地があるということだ。恐らく、社内でも「制御や適合は大事」といわれているものの、モノで語れないので理解が難しいのも事実である。ただ、筆者はもっといいクルマにするためにさらに突き詰める必要があるとても大事な領域だと考える。

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