クルマのキモはハードか? ソフトか? トヨタが耐久マシンで狙う「鼻歌を歌いながら運転できるクルマ」とは!?

クルマをよくするのはハードか? ソフトか?

ハードウェアの変更は理解されやすいという側面もあるが……
ハードウェアの変更は理解されやすいという側面もあるが……

 実は筆者は以前このような体験をさせたもらったことがある。ハードは共通、適合(チューニング)のみ変えたクルマの乗り比べだが、実際に走らせてみると「絶対に車体やタイヤに手を入れたでしょ?」を勘ぐってしまうくらいの差が生まれた。

 その秘密に飛び道具はなく、適合の考え方と手法の違いだと聞かされとても驚いた。つまり、シェフの塩コショウの振り方次第で“旨み”や“味”はガラッと変わってしまうのだ。だからこそ、実際に評価を担当する現場の人はその重要性をよく理解している。

 しかし……である。以前、あるエンジニアから「車体がよければ、足なんて何でもいいんです」といわれたことがある。さらにある現場の人から「適合の日数が限られていて、その中でまとめなければいけない……」と嘆く声を聞いたことも。

 何をいいたいかというと、トヨタは「商品で経営する会社」といっているが、まだまだ社内には機能軸から抜け出せない人がいるということ。恐らくモノを変えてクルマがよくなったほうが“理解”はしやすいし、採用のための“説得”も楽なのだろう。よくいえばモノづくり企業らしい部分といえるが、残念ながら商品軸での開発とはいえない。

 ちなみに欧州メーカーの中にはトヨタ以上にシミュレーションを活用しながら車両開発を進めるメーカーもある。単純に考えると開発日数は短縮されるはずだが、実際には以前と変わらないという。「では、何に時間を使っているのか?」と聞くと、「今まで以上に適合に費やしている」と教えてくれた。つまり、そういうことである。

モータースポーツも量産車も根っこは同じ

2026年マシンのティザー画像
2026年マシンのティザー画像

 逆にWECはハードを変えられないからこそ、適合によって“重箱の隅”を突くカイゼンを行ない続けてきた。あるソフトウェアエンジニアは「ハードには限界がありますが、制御には限界がなくどこまでもカイゼンできる余地があります」と自信をみせる。

 ならば、その知見・ノウハウは量産車にもっと活かせるはずだし、これこそがWECがもっといいクルマづくりに貢献できる部分だと筆者は思っている。

 社内には「モータースポーツと量産車は似て非なるモノ」という人もいるかもしれないが、クルマとしての“理屈”は同じだし、どちらもレギュレーションがあり、その制約の中でベストを目指すのも同じだ。

 だからこそ、トヨタグループの中で最も適合にこだわっているWECを量産車が見習わない手はない。これもひとつの「モータースポーツを起点としてもっといいクルマづくり」である。

PR:かんたん5分! 自動車保険を今すぐ見積もり ≫

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

ベストカー12.26号 価格590円 (税込み)  あの「ジャパンモビリティショー2025…