■シーズン開幕は7月に! コロナの影響はマシン開発にも
通常の開幕戦であるメルボルン(豪州)からレースはキャンセルされてしまい、各国でロックダウンなど多くの新型コロナ対応策が施され、現実にF1が開催されたのは何と7月に入ってから。
この開幕戦に至るまでに工場の操業停止やロックダウンなどで現場作業はできず、リモートワーク等々で誰もが初期開発の機会を失ってしまった。もちろんホンダもレッドブルも。
シーズンが開幕されたのは7月のオーストリア、本来ならシーズン真っただ中で開発速度の速いチームならばすでに1度や2度のステップアップが行われている時期。
したがってこの開幕戦には初期開発でのステップを放棄していきなりアップグレードされたマシンが投入された、これは車体とパワーユニット(PU)の双方で。つまり、ステップアップ開発マシンがブッツケ本番、テストなしデビューを強いられたのだ。
もちろん、条件は全チーム同じ、不公平はないのだから不平は言えないのだが、シーズ前半で基礎開発を進め、後半で追い上げるレッドブルの開発プログラムは大きな変更を強いられてしまった。
実際には例年開発がスロースターターとなるレッドブルは、2020年シーズンに賭けて、開幕戦からの戦闘力を重視。2020年型マシンRB16に、かなり過激な開発を進めてきていた。もちろんポテンシャルは高いのだが、シーズン前半の開発機会を失ったことで、逆にこの過激さが足を引っ張ってしまった。
■コロナ禍の中で着実にパフォーマンスをあげてきたホンダPU
しかし、ホンダPUの開発は王道を踏んで、信頼性を落とさずに確実にパフォーマンスを挙げてきた。
RB16で起きたホンダPUに関わる問題の多くは、回生エネルギーを含めたセッティングの問題だが、その原因の多くは神経質なマシンの性格的な部分へのマッチングであったはずだ。
もちろん、そんな要求に確実に対応できるシステムとプログラムがあってこそのパフォーマンスではあるのだが、少なくとも2020年のホンダPUは、メルセデスと肩を並べる戦闘力を得ていたのは間違いないところだ。
2020年最終戦アブダビで、レッドブル・ホンダRB16を駆って、マックス・フェルスタッペンはこのレースを制した。堂々の力勝ちで。
RB16は、車体もホンダPUもアブダビのレースに完璧にマッチして、隙のない横綱相撲での勝利であった。本来の後半戦ならこんなレースをもっと観られたはずなのだが、残念ながらそうはいかなかった。
しかし年間3勝、それもBチーム的なアルファタウリの優勝も含めてであり、数多くの表彰台、そしてコンストラクターズランキング2位はホンダにとっては上出来のシーズンであったといって良い。
■御膳立ては揃った! チャンピオンシップを狙える最終シーズン
2020年最終戦の勢いは間違いなく2021年シーズンに繁栄し、開発速度が若干鈍化した王者メルセデスを射程に収めるのは確かであり、いよいよチャンピオンシップを狙える処にまでやってきた。
フェルスタッペンのチームメイトはレース巧者でベテランのセルジオ・ペレス、チームの戦闘力は確実に上がる。
また、アルファタウリには久々の日本人ドライバー角田裕毅が搭乗、ピエール・ガスリーとともに体制を強化。角田には単なる期待だけではなく、日本人ならではのホンダエンジニアリングとの繊細な疎通・コミュニケーション。これはホンダの開発スピードを上げるのには効果的なはずだ。
したがってレッドブル・ホンダ軍団は現状での最良の布陣と言って良い。
2015年から始まった第4期ホンダF1チャレンジは7年目を迎え、2021年にはいよいよチャンピオンへの挑戦が具体性を帯びてきた。
残念なことにホンダは2021年をもってF1からの撤退を発表。世界規模のサステイナブル・デベロップメント、CO2フリー……等に製造業はシフトせざるを得ず、F1開発にリソースを削ぐことはできないと。
これでホンダF1ファンは大きく落胆したが、諦め切れないのがファンの気持ちで、何とかポジティブな見方をしたい。
そこで2021年に角田裕毅の活躍があり、レッドブル・ホンダもより戦闘力を上げてチャンピオンシップを激しく争えば、レッドブル首脳が語る2022年向けのホンダPUをレッドブルが購買し、ホンダエンジニアのレッドブル移籍あるいは出向等を受け、レッドブルバッジでのホンダエンジンF1残留……
ファン目線では大いにありそうな気がする。
これは単に希望的観測ではなく、ホンダとしても経済的・人材的にも痛手は少なく、さらにホンダの尊厳と名声を護り維持することも可能なはずだから、現在ホンダとレッドブルの間で可能性の検討が真剣にされていると、是非とも信じたいものである。
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