■若き日のマイケルを彷彿とさせる面もあるが……
F2でのミックの走りやレース運びには、彼なりのセンスとレースの組み立て方を見せてきた。とはいえ、そこに父親の面影が垣間見えることも隠せない。ミックの今の年齢を考えてみると、同じような年齢時の若き日のマイケルに似た部分が現れる。
レースでの巧みな押さえ込み……。まだ若く失敗も多々あるが、ライバルとのバトルで見せる押さえ込みや多少の強引さも、若き日のマイケルを彷彿とさせる。
それでは、ミックがそのままマイケル級かといえば、これも違う。そこにはマイケルではなく、ミック自身の姿を多く見つけることができるからだ。
ミックはまだマイケルほどの厳しさや狡猾さには届いておらず、まだまだ優れたレースの組み立ても学ばなければならない。さらにミックはまだマイケルの持っていたレースへの精神的な強靭さも身につけねばならないだろう。
もちろんこれらの有無を判断するのは時期尚早であり、これもミックなりの育ち方を待たねばならない。
■環境は恵まれているが問題もある
それでもほかの新人たち、角田などと較べればミックを囲む環境はすべてに潤沢だ。しかし、そこには大きな問題があることも確かだ。
それはミックをバックアップしているフェラーリ自体だろう。すでにマイケルの息子としてミックに過度な期待をかけ、偉大なるマイケルの偉業をミックの将来に押し付け始めている気がするのだ。
イタリアらしいと言ってしまえばそれまでだが、今年デビューの新人の肩に、大きな重しを乗せてしまっている。それでもハスからのデビューだから、わずかでもそんなプレッシャーを緩和はしてくれるのだろうが……。
■チームメイトもライバルとして立ちはだかる
しかし、フェラーリが今年どのぐらい優れたマシンを作りあげられるか、そしてハスとミックにその性能をどのくらい共有させることができのか、が今シーズンの要になりそうだ。
少なくともミックはフェラーリワークスへの道を辿るために、このハスで輝いてみせなければならないのだから。
ハスでのチームメイトはニキータ・マゼピン。昨年F2でもライバルとしてバトルを繰り広げてきた。ハスでこのマゼピンを確実に下せば、フェラーリへの道は以外に早くに開かれるかもしれない。
しかしマゼピンは癖が強く、強行型のレースを展開する。いわば危ないドライバーで、もちろん速さも充分に兼ね備えている。
したがってハスでの二人の共存は結構難しいはずだ。ミックがマゼピンの後塵を浴びてしまうと、フェラーリのミックへの熱い思い込みに水をかけてしまう可能性は否定できない。
そうなると熱い思いはそのまま熱い否定へと向きを換えてしまう……。それがイタリア、それがフェラーリなのだから。
■F1に親の七光りは通用しない!
これまでも多くの二世ドライバーがグランプリに登場してきた。多くは通常のドライバーの二世だが、なかにはデーモン・ヒルやニコ・ロズバーグなど親子でのチャンピオン獲得者もいる。
しかし、これまでの二世ドライバーたちはミックほどのプレッシャーを受けてデビューした者は数少ない。むしろいなかったと言っても言い過ぎではないだろう。父親の偉業の大きさ、現在までストーリー、イタリアでのヒーロー伝説、思い込みと熱狂……。
これらの異様なプレッシャーに、ミックの精神力がどこまで絶えられるか、絶えるだけではなくそれをバネに何処まで進化してゆけるか、がミックの将来を決める。
F1に親の七光りは通用しない。親の実力、親の資金、それらの力でF1デビューに至ることはあっても、F1での成功は夢のまた夢……。自力で道を築き、自力で奪っていかねばチャンピオンには届かない。
ミック・シューマッハがマイケルの息子ではなく、F1ドライバー、ミック・シューマッハとして独り立ちした時に始めてこれらの答えを知ることになるだろう。
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