RA121E/3.5L V12(1991年 マクラーレン・ホンダ)
ホンダ第二期終盤に登場したが、すでに時代は軽量・コンパクトを求め始めていた。ホンダのV12選択には幾つかの理由があった。
それはそもそもV12こそがホンダF1のルーツであり、本田宗一郎以下ホンダエンジニアの言わば夢であったこと。そして第二期ホンダのフィナーレに、このホンダの夢を成し遂げたかったこと。近代F1のなかではまことにエモーショナルなエンジンであった。
パフォーマンスは740馬力超と言われていたが、軽量化されたものの長さを縮めることはできず燃費も悪く、大きな燃料タンクも相まって、ただでさえ時代遅れのマクラーレンMP4/6から走行性能を奪っていった。
それでもセナはチャンピオンを決めたが、これが最後のチャンピオンとなった。しかし、V12サウンドは第一期ホンダF1時のV12とは一線を画す甲高くもスムースで甘いエクゾーストノートを奏でてくれた。以後の近代F1から忘れ去られたF1エンジンの奏でるミュージック。ホンダRA121E/V12はその最終章の取りをつとめてくれたようだ。
RA004E/3.0L V10(2004年 BARホンダ)
1991年を最後にF1から撤退したホンダだが、V10エンジンは無限ブランドに姿を変えて開発が続けられた。そしてフットワーク、ロータスに搭載。3.5L最終型は実に765馬力に達していた。
1995年からは3L制限となり、リジェそしてジョーダンへと乗り継がれたが2000年からはF1エンジンはV10に一本化されたことで無限プロジェトは終了し、そのまま第三期ワークスホンダへと受け継がれてゆく。
BARとのコラボで第三期を発進させたホンダ。
最初の4年間はBAR自体が若く未熟であったため、新興第三期ホンダも好結果を得られずルノーやフェラーリに遅れを取り、なかなか追いつくことができなかったが、2004年はミシュランタイヤへの変更が功を奏し、BAR006の車体性能が向上。RA004Eの基本性能が発揮されBARホンダ史上ベストパフォーマンスを発揮。
しかし、ライバルには届かず、ホンダV10は多くのリザルトを残せないまま2.4L・V8エンジンへと移行。基本性能は高いものの、そのすべてを発揮できずに終わった不運なエンジンだった。
RA621H/1.6L V6ターボ(2021年 レッドブル・ホンダ)
第一期の情熱と第二期のがむしゃらと第三期の反省と第四期初期のベースコンセプトを真摯に受け止め、両足を地面につけて基礎力と耐久性の向上を第一に開発。
新組織での4年目に現われたオールランドの高性能パワーユニット(PU)。開発にはホンダ型のエゴがなく、視界を広めて万能性を高めた2021年ホンダRA621H。
F1PUとして4番目に登場もレッドブルとの共闘開始からわずか4年目に世界チャンピオンを争うまでに育った。これまでのホンダならF1開発部門だけがすべてを抱え込んでいたが、現在ではホンダ全社的な部門能力を引き出してF1PU開発へ注ぎ込む。
ホンダ・ジェットからはターボ技術を、ホンダエレクトリックからは新バッテリーや回生そして制御の技術を、そしてミルトンキーンズの現場からはバッテリーやMGU-KそしてMGU-Hの技術を注ぎ込み、部門派閥のない全社的開発で、今やチャンピオンを争うトップPUとなった。
パフォーマンスだけでなくPU全域的な耐久性も向上。RA621Hに新たなホンダイズムが見えてくる。
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