2022年11月10~13日、12年ぶりに日本開催となった世界ラリー選手権「フォーラムエイト・ラリージャパン」は大盛況のうちに終幕した。愛知と岐阜の両県で開催された世界最高峰のモータースポーツの祭典は、のべ89,460人の来場者を集めている(主催者発表/サービスパーク+岡崎SSSの4日間来場者合計)。そんなラリージャパンのワークス勢たちの「足元」を支えたのが名門ピレリタイヤ。以下「タイヤのことならこの人」と言われる自動車ジャーナリスト斎藤聡氏に、本大会にピレリが持ち込んだタイヤの解説を伺った。
文/斎藤聡、写真/ピレリ
■凄まじいパワーのRally1車両を支える「足元」
今年ピレリは、12年ぶりに帰ってきた世界ラリー選手権(WRC)の日本ラウンド=ラリージャパン(2022年11月10~13日)に向けて、1300本超のタイヤを用意した。ピレリはWRCの単独タイヤサプライヤーとして2021年から2024年まで4年契約を交わしており、今年が2シーズン目となる。
2022年シーズンのWRCは、「Rally1」と呼ばれるパイプフレームで構成され市販車のカウルをかぶせたWRカーを頂点に、グループA規定に独自の改造範囲を持たせた「Rally2」、「Rally3」カテゴリーに属する参戦車両を中心に、世界を転戦。日本ラウンドとなるラリージャパンはその最終戦となる第13戦に組み込まれていた。
今シーズンのWRCで注目を集めたのは、レギュレーション変更により、Rally1がハイブリッド車両になったこと。いよいよラリーの世界にもサスティナブルな…つまり持続可能なモータースポーツを推進するための技術が導入されるようになり、ラリーにおいてもハイブリッド導入という形で車両規定に変更が行われたのだ。
もっとも、というか当たり前の話だがこのハイブリッド、燃費重視のマイルドなパワーユニットであるはずはなく、100kw(136ps)/180Nmを発揮するモーターと、ハイブリッドとしては大きめな3.9kWhのバッテリーが組み合わされている。エンジンとハイブリッドによるシステム出力は500ps以上/500Nm以上を発揮する。
ちなみに燃料も合成燃料とバイオ燃料を混合した100%非化石燃料で、FIAの管轄する世界選手権のモータースポーツでは初めて使用されることになった。
車両レギュレーションで付け加えると、今年からアクティブセンターデフが使用禁止となった。アクティブセンターデフは、前後の駆動トルク配分を自由に、あるいはドライバーの好みに応じてセットすることができ、ステージに応じてターンイン、旋回、立ち上がりといった場面ごとに最適な駆動トルク配分を行うことができた。平たく言ってしまえばより曲がりやすくセットアップすることができたのだ。ところが禁止されると電子制御によるフレキシブルな制御ができなくなるため、セッティングの自由度が狭くなり、そのぶんドライバーやタイヤへの負担が大きくなるということだ。
コメント
コメントの使い方