一変していた構内
筆者は、2013年にもオラガダム工場を見学しましたが、当時とは構内の風景も一変していました。その頃はサバンナを造成したままの土壌が露出していましたが、今回(2022年秋)の再訪では、すっかり緑化されていたのです。
この緑化では、さまざまな種類の草木6万本を混植し、日陰をつくることで、摂氏40度を超える外気温を緩和する効果があるのですが、混植される草木は、なんと我が国の植生を参考に選定し、適切に組み合わせて植えられているそうです。日本で当然のように生い茂っている草木の恩恵を、インドで気付かされてしまうとは意外なことでした。
また、広大な敷地には、雨期に得た雨水を蓄える巨大な人工池が造成され、工場用水の85%をまかなうとともに、10%を近隣のサプライヤ工場へも供給しています。
工業団地が開発されるような土地なので、水利の得られる川も近くにあるのですが、近々世界最大の人口国となるインドだけに、水資源がより重要になっていくことから、自家水利に取り組んでいるわけです。今後は、工場からの排水自体も削減しつつ再利用を進め、2年後には工場用水の全量を、貯水池と排水リサイクルでカバーする方針です。
そして、赤道が近い低緯度(北緯13度)ゆえ、テストコース内に広大な太陽光パネル施設を設置、自家発電だけで工場の電力の9割をまかなうことができ、やはり2年後には、工場オペレーションでのCO2排出ゼロを達成する予定といいます。
これは以前紹介した、三菱ふそうのポルトガル・トラマガル工場に次ぐ早い達成ですが、年間を通して強い日光と長い日照が得られる大面積が確保できるという、日本とはまるで異なる立地なればこそでしょう。
なお、空撮写真の太陽光パネルにはさまれた「DAIMLER」の文字、近くでみたら、コンクリートで書かれていたというか、築かれていたものでした。