世界最大の大型商用車メーカー・ダイムラートラックは、インドで大型・中型トラック「バーラトベンツ」を展開しています。その生産拠点であるオラガダム工場の取材レポート中編では、先進国と同等の品質を実現させた秘訣と、その立地ならではの環境対策を紹介します。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/ダイムラー・トラック・アジア、「フルロード」編集部
前編のおさらい
バーラトベンツ車を生産しているのは「ダイムラー・インディア・コマーシャル・ビークルズ(DICV)」という会社です。ダイムラートラックのグループ組織では、我が国の三菱ふそうトラック・バスと同じく、アジア・太平洋事業統括会社ダイムラートラック・アジア(DTA)の子会社になります。
生産拠点のオラガダム工場は、南インド・チェンナイ郊外の工業団地にあって、4000人以上の従業員が勤務し、操業開始から10年で累計19万台以上のトラック・バスを生産しました。工場は、ドイツや日本と同等の最新設備を整えるだけではなく、高い生産品質を実現していることも特徴です。
高品質の秘訣とは?
バーラトベンツ車は、メルセデス・ベンツや三菱ふそうが開発したキャブ、シャシー、ディーゼルエンジンの技術を基盤としながら、インドなど新興国向け専用モデルとして、DICVで新規に開発されたトラックおよびバスです。
その開発を担当してきたのが、DTAでトラックキャブおよびシャシーの開発トップを務める新海秀幸バイスプレジデントです。2009年のDICV設立以来、インドや欧米から出向してきたエンジニアと一体となって、現地で開発業務にあたってこられたそうです。
バーラトベンツ車は、気候・道路・積載など厳しい使用条件に対応したつくりになっていますが、なによりも「ダイムラートラックの全プロジェクトに適用されている『クオリティゲート』を導入したことが最大の特徴」(新海VP)といいます。
この「クオリティゲート」は、開発プロジェクトのさまざまな作業の段階ごとに明確なクライテリア(評価基準)を設定することで、その段階ごとに得られた成果の確実性・信頼性が高められるというメリットがあるそうです。これは地道な業務上の手法で、筆者のような部外者には肌で感じにくいことですが、開発目標の確実な達成に貢献しているように思われました。