ヤリス GR-4の「走り」はどうだったか?
用意されたのは、ターマック用の2台(プロトタイプとユニットテストカー)と、ダートコース用の1台(ラリー競技に参戦する方が求めるパーツを、最低限おり込んだ仕様)だ。
元々が軽量ボディのヤリスをさらに軽量化し、ハイグリップなタイヤを装着。4WDシステムによる前後トルク配分変更となれば、ヤリス GR-4が、「意のままに曲がり、いつでも止まる」性能を持っていることは容易に想像つくだろう。
無理やりスライドをさせようと速度を上げても、リアのスタビリティが高く、スキール音すらなかなかならないほどにグリップ感が強い。旋回Gも相当に高く出ているだろう。
ステアリング特性はやや重ためだが、「ズシリ」とくることはなく、手応えがしっかりとある。シートはしっかりと身体をホールドしながらもガチガチではなく、身体を沈み込ませてサポートする形状をしており、秀逸だ。
排気サウンドも野太く、これまでのトヨタ製小排気量ターボよりもクリアで、すがすがしくなるほどの気持ちよさがあった。
WRX STIやスイフトスポーツを越える実力はあるか?
競技車ベースとなる車だけに、現時点のスペックやちょい乗りの走りで判断することはできないものの、そこは期待を込めて、「ヤリス GR-4は日本車の歴史に名を残す一台になる」と予想する。
そう期待させてくれたのは、トヨタGRヤリス開発エンジニアが語った言葉だ。
「我々にはモチベーションがある。実は、GRのプロモ用動画でモリゾー社長が乗っていたのが他社製のラリーカーだった。自車のテストカーよりもはるかに乗りやすかったという。本当に悔しかった」
「ぜひ社長に自社製のスポーツ4WDモデルに乗ってほしい。トヨタ自動車が自分達で開発したスポーツ4WDは20年前のセリカが最後だった。20年間のブランクは想像以上に大きい。数年間、開発を続けてきたがまだまだ学ぶことだらけ。まだ100点ではない。だが今日時点の出来を見てほしい」
自己分析を冷静に行い、自らチャレンジャーとなり、ハングリー精神を持ち、課題を克服しながら進化をしてゆくGR開発エンジニア達。メーカーが立てているストーリーが明確に伝わってきて、自動車ジャーナリストとしては、感情移入し、期待させられる。
悔しいのは、なぜこれが「トヨタ」だけなのだろうかという点だ。経営危機寸前とも噂される、日産やホンダこそ、こうしたハングリー精神が必要なのではないだろうか。
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