いわゆるメーカー系のディーラーが販売する中古車と言えば、ミニバンや売れ筋モデルをまんべんなく取り揃えているイメージだが、近ごろはだいぶ状況が変わっているようだ。
先日、ネットで中古車を検索していたところ、奈良県のディーラーで驚きの高額車2台を発見した。
1台目は奈良日産自動車 中古車登美ヶ丘が販売している昭和40年式の初代シルビア(車両本体価格788万8000円)で、2台目はスズキアリーナ中和幹線橿原が販売しているスイフトスポーツ(同450万8000円)。どちらも一般的なディーラーではおよそ扱うことのない激レア&超高額車だ。
筆者はディーラーがなぜこのような尖がった車両を販売しているのか、無性に聞いてみたくなり、奈良へ向かった。取材を行ってわかったのは、中古車の世界でも進化を続けるディーラーの姿だった。
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文、写真/奥野大志
※記事内価格などは取材当日のものです
■奈良日産がすすめる歴代GT-Rと日産クラシックカー販売
奈良日産自動車 中古車登美ヶ丘は美しい街並みが目を引く閑静な住宅街の中にある。全世代GT-Rの中古車を扱う店舗として2019年1月にオープン。日産のクラシックカー販売にも力を入れており、冒頭の初代シルビアはこれに該当する。
ハコスカGT-RやR31スカイラインを販売した実績もあり、ハコスカGT-Rの販売価格はなんと1980万円とか。ショールーム内の中古車をチェックしても、749万8000円のR33GT-Rや1588万のR35GT-Rなど、超高額車がずらりと並ぶ。
「全国にある数多くの販売会社の中から選んでいただくためには他社との差別化を図る必要があり、付加価値を提供できるクルマをイメージした結果、たどり着いたクルマがGT-Rでした。
中でもR35GT-Rは新車の価格が高く、中古車であれば予算内で希望以上のグレードや仕様が見つかるとネットを通じて全国のお客様よりお問い合わせを頂いている状況です。」(神田取締役)。
クラシックカーの販売と言えば、専門店の独壇場と言っても過言ではないマーケットだが、逆に言えば、ディーラーがそれを行えば「安心」という付加価値を生む。
奈良日産はそこに着目し、第三者の目も含めて、無事故車と証明できる車両のみ仕入れている。
「インターネットがこれだけ普及すると価格では勝負できません。ディーラーならではの安心をお届けできるのも付加価値のひとつだと考えています。仕入れはほぼ第三者査定がついたオークションですが、専門店との競合もありますし、良質なクルマを集めるのに苦労しています」(同)。
気になる購入後のアフターサービスだが、同店から約500メートルほど離れたところに奈良日産自動車 登美ヶ丘店(日産ハイパフォーマンスセンター)があり、GT-Rなどの整備はそこと連携している。
また、R35GT-Rはもちろん、第二世代GT-Rは保証付きで販売しているので、全国の日産ディーラーで整備を受けることができる。冷静に考えると、生産後30年を経過したR32GT-Rに保証がついていること自体がすごい。ディーラーならではの付加価値のひとつだろう。
「オープンしてまだ2年弱ですが、想像以上に反響は大きいと感じております。奈良日産に行けば希望のGT-Rが見つかると期待を持ってご来店いただいております」(同)。
あくまで一般論だが、ディーラーの中古車は数を売ってなんぼのイメージが強い。そのため、こういった激レア&超高額車の販売はディーラーのビジネスとしては成立しにくいと考えがちだが、それもやり方次第のようである。
「もちろん販売台数を重ねることでお客様を増やす事も重要だと考えておりますが、特にGT-Rは価値が下がりにくい車種の一つでもありますので、車両の品質や仕様など、付加価値を最優先させた結果がたくさんのお客様にご利用頂けている要因だと感じております」(同)。
実際、奈良日産自動車 中古車登美ヶ丘はオープン1年目でR35GT-Rを35台販売。日産ディーラーのGT-RのUカー販売では全国1位で、今年はそれを上回る見込みとのこと。数もついてきているのだから、新たなディーラーのUカービジネスとして、定着したと言える。
奈良日産自動車 中古車登美ヶ丘は全世代GT-Rやクラシックカーに絞ることで、独自色を打ち出すことに成功した。GT-Rの色あせない価値とともに、お店の魅力にも磨きをかけていくのだろう。
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