ホンダの至宝 S2000がいまや600万円! 専門店に聞くリアルな生証言と中古車相場

具体的に長持ちさせるにはどうすればいい?

――具体的にはどんなことを心がければ長持ちするのでしょうか?

邑松さん まずエンジンオイルは、理想をいえば3000km走るごとに代えてあげたいですね。

 そのうえで、短時間のちょい乗りではなくしっかりと長時間走らせ、エンジンを高回転域まできっちり回してあげれば、10万km程度で壊れるエンジンではありません。

実車のS2000を使ってウィークポイントを教えてもらった
実車のS2000を使ってウィークポイントを教えてもらった
エンジンヘッドカバーがゴールドに塗られている、排気量が2000ccから2200ccにアップされたF22Cエンジン
エンジンヘッドカバーがゴールドに塗られている、排気量が2000ccから2200ccにアップされたF22Cエンジン

――先ほどお聞きした「走行7万kmのワンオーナー車」は何がまずかったんですかね?

邑松さん オーナー様にお聞きしましたところ、「片道2kmぐらいの超短距離移動」を新車時から約20年にわたって繰り返されていたそうです。

 そうなりますと、油温も水温も十分に上がっていない状態のまま走り続けたということになりますので、7万kmのワンオーナー車ですから内外装はキレイなのですが、エンジンは要オーバーホール状態でしたね……。

――ううむ。となると、まぁS2000に限った話ではないかもしれませんが、「走行距離」だけで判断するのはナンセンスなんですね……。

邑松さん まぁ低走行な個体は「内外装、特に内装が非常にキレイな場合が多い」というメリットはありますので、そこを重視したい人には良い選択かと思います。ただ、「低走行車だからメンテナンスなしで乗れる」と考えるべきではないでしょう。

程度のいいエンジンを見分ける方法

エンジンオイルの減る量によってコンディションの良し悪しがわかるという
エンジンオイルの減る量によってコンディションの良し悪しがわかるという

――そういった「要オーバーホールのVTECエンジン」と「まだまだ大丈夫なVTECエンジン」とは、どうやって見分ければいいのでしょうか?

邑松さん 一番いいのは1000kmか3000km走って「エンジンオイルが減る量」を見ることですね。

 S2000の場合、エンジンオイルのレベルゲージのMAXまでオイルを入れたとして、約3000kmでミニマムのラインまで消費してしまうのは、ストリートユースにおいては正常です。

 もちろん、サーキット走行などのスポーツユースでは条件が変わってきます。しかし、ストリートユースにおいて1000kmぐらいでミニマムのラインまで減ってしまうエンジンは、エンジンオイルがかなり燃焼してしまっていますので、早晩オーバーホールが必要となるでしょう。

――なるほど。でも、中古車販売店の店頭にある売り物のS2000を「コレ、1000kmぐらい試乗させて!」ってわけにもいかないですよね?

邑松さん そのとおりですね(笑)。それゆえ一般の方が店頭で「見極める」のは、なかなか難しいと思います。

 本当は「S2000に関する知識と経験が豊富な信頼できるショップを探し出し、そのショップがお薦めする個体を買う」というのが一番なのですが……、それもやや難しいとしたら、「マフラーエンドの煤(すす)」でしょうか。

マフラーエンドの煤を見て、その煤が乾いていればあまり気にする必要はないという
マフラーエンドの煤を見て、その煤が乾いていればあまり気にする必要はないという

――マフラーエンドの煤?

邑松さん はい。マフラーエンドにある程度の量の黒い煤が付着しているのは普通のことですし、その煤が乾いた感じのものであれば、気にする必要はありません。しかしその煤が「しっとりしてる感じ」である場合は、やめておいたほうがいいでしょう。

――まぁそれすらも「洗っちゃえばわからなくなる」のかもしれませんが、了解です。結論としてVTECエンジンのオーバーホールはどのタイミングでやればいいのでしょうか? また費用はいくらぐらいかかりますか?

邑松さん 「走行距離」で判断するのはナンセンスですし、例えば10万kmや15万kmを超えていたとしても、特に不調でないのであれば、無理にオーバーホールをする必要はありません。

 ただ、もちろん完全な不調状態になってしまえば要オーバーホールですし、「どのくらいの期間、どう乗りたいか?」にもよるでしょうね。

――と言いますと?

邑松さん やはり歴史的な名車ですから、「あと20年は乗りたい」「あと10万km以上、快調に走り続けたい」と考える方もいらっしゃるかと思います。

 そういった場合には、タイミングを見てエンジンオーバーホールをしておくのがよいかと存じます。その際の費用は、比較的安価にあげる場合で50万円以上、新品エンジンに載せ替える場合で約100万円といったところです。

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