約20年前の2002年、いすゞは乗用車から撤退したが、海外ではピックアップトラックとSUVを販売している。
直近では2020年10月28日に、ラージSUVのmu-X(ミューエックス)を発表。このmu-Xはタイ生産でラダーフレームを持つミドルピックアップトラック「D-MAX」から派生したラージSUV「mu-7」の後継車で2013年に初代モデルが登場し、今回のフルモデルチェンジで2代目モデルとなる。
このミューという車名を聞いて「懐かしい~、いすゞのヨンクにあったなあ」と思った人も多いはずだ。ちなみに1989年に発売された当時のミューは、ピックアップトラックに2ドアボディを載せた3ドアと、5ドアボディのウィザードが用意されていた。
さらにいすゞのSUVを辿っていくと、イルムシャーやハンドリング・バイ・ロータスがラインナップされた本格派クロカンのビッグホーン、そしてコンセプトカーがそのまま市販されたビークロスに行きつく。
はたして、かつてのミューやビッグホーン、ビークロスは今買えるのだろうか? 中古車事情に詳しい萩原文博氏が解説する。
文/萩原文博
写真/いすゞ
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新型mu-Xはタイ生産で日本発売の可能性は低い
2020年10月28日に発表された新型いすゞmu-Xは、ピックアップトラックのD-MAXか派生した3列7人乗りのSUV。ボディサイズは全長4850mm×全幅1870mm×全高1875mm、ホイールベース2855mm。
いかつい顔でなかなかの男前だが、残念ながらいすゞは乗用車の販売網を持っていないことから日本で販売される可能性は非常に低い。
搭載されるエンジンは150ps/35.7kgmを発生する1.9L、4気筒ディーゼルターボと、190ps/45.9kgmを発生する3L、4気筒ディーゼルターボの2種類で6速ATと、1.9Lの上級グレードには6速MTが設定されている。
3L、4気筒ディーゼルターボには、トラクションコントロールにノーマルモードとラフテレインモードの2種類の制御モードを組み込んだパートタイム4WD(2H/4H/4L)を用意。
中古車流通台数が最も多いビッグホーン
現在の国産車SUVブームの火付け役は乗用車のシャシーをベースに開発されたトヨタハリアーだが、歴史を遡ると1980年代にはトヨタランドクルーザー、三菱パジェロがクロカン四駆ブームを引き起こしていたが、いすゞもビッグホーンやビークロス、ミュー&ウィザードといった、クロカン四駆をラインナップし、クロカン四駆ブームの一役を担っていたのだ。
現在はトラックなど商用車を製造する自動車メーカーとして知られているが、2002年までは乗用車も製造していた。SUVは1981年から生産しているSUVの老舗ブランドであり、メーカー自らもSUVのスペシャリストを自負していた。
現在、いすゞの乗用車の中古車は約63台流通していて、そのうちSUVは約38台となっている。そのいすゞの中古SUVのなかで最も流通台数が多いのが約25台のビッグホーンだ。
ビッグホーンはいすゞSUVのなかで最も歴史が長いモデルで、初代モデルは1981年9月に登場。デビュー当初は、ロデオビッグホーンというネーミングだった。
従来からの4WDユーザーのニーズに応えつつ、オンロードでの乗用車レベルの快適性を備えて、通勤からレジャーまで幅広く使えるSUVの先駆けとなったモデル。
ボディタイプはショートボディ、ロングボディ、ショートボディのソフトトップの3タイプで、乗用車に乗っていたユーザーでも違和感なく操作できる運転感覚を実現しながら、軽量な車両重量とクラス初の前輪独立懸架サスペンションの採用によって4WD車の特徴でもある悪路走破性を実現。
まさに新しいSUVの幕開けを告げたモデルだ。1985年6月には4ドア車を追加し、1987年10月にはドイツのチューニングブランドであるイルムシャーとの共同開発したサスペンションやパーツを装着したイルムシャー仕様を発売。
翌1988年6月にはワイドタイヤやオーバーフェンダーを装備した、よりスポーティなイルムシャーRを設定。そして1989年11月にはイギリスのスポーツカーブランド、ロータスがサスペンションチューンを施したスペシャルエディションのハンドリング・バイ・ロータスを追加するなど、SUVながらスポーティさを強調したモデルだった。
2代目のビッグホーンは1991年12月に登場。ボディはワイドな3ナンバー専用ボディとなり、最高出力200psを発生する3.2L、V6ガソリンエンジンを搭載するなどさらに走行性能に磨きをかけた。
先代モデル同様にショートとロングボディを用意し、高級感のあるハンドリング・バイ・ロータス、スポーティなイルムシャーというグレードを設定していた。
1995年5月にはマイナーチェンジを行い、ディーゼルエンジンの改良に加えて、実用性の高いパートタイム4WDとして100km/h以下の走行中ならば、2WDと4WDの切り替えが可能な「シフトオンザフライシステム」、そして電子制御によって前後輪への駆動トルク配分を適切にコントロールし、抜群の操縦安定性と悪路走破性を誇るトルクオンディマンド(TOD)を設定し、商品力を向上させた。
1998年3月にビッグマイナーチェンジを行い、内外装の変更に加えて、搭載するエンジンを3.5L、V6ガソリンエンジンと3L、直4ディーゼルガソリンに変更。グレードはハンドリング・バイ・ロータス、プレジール、フィールドスターの3種類で2002年まで販売された。
流通している中古車のほとんどは1991年~2002年まで販売された2代目ビッグホーンで、流通台数は約21台。3ヵ月前の約24台なのでほぼ横這いといえる状態だ。中古車の平均走行距離は3ヵ月前の約13万7000kmから14万7000kmまで延びているものの、平均価格は約68万円をキープしている。
2代目ビッグホーンの中古車の価格帯は約40万~約145万円で、最高価格の中古車を除いてすべて100万円以下のプライスが付いている。
グレードでは3.0ディーゼルターボプレジールIIが8台で最も多く、同じく3.0ディーゼルターボプレジールが5台で続く。そのほかのグレードは1台のみばかりで、そのなかにガソリンエンジン搭載車も含まれている。
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