――ということで北田さん、カプチーノの“今”についていろいろ教えていただきたいのですが、まずは「価格」です。
スズキ『カプチーノ』の中古車相場は今、底が40万円ぐらいで上が230万円ぐらい、そしてボリュームゾーンは100万円前後ぐらい、という状況かと思います。それらのなかから大体いくらぐらいの物件を選べば、おおむね安心して乗ることができるのでしょうか?
北田さん 各ショップの値付け方針もお客様が「カプチーノに何を求めているか?」というのも千差万別ですので、一概には断言しづらい問題です。しかし一般論としては、車両価格100万円前後ぐらいであれば、大きな問題はない個体がご入手いただけるかと思います。
――中古車情報サイトを見ると40万円台のカプチーノもけっこうあるみたいですが、あのぐらいの価格帯は避けるべきなんですね?
北田さん 避けるべきとは申しませんが、車両価格50万円以下のカプチーノは現在、そのほとんどのフレーム部分がサビて腐っていますので、お薦めはしませんね。
――サビて腐ってますか!
北田さん そうですね、かなりサビてます。ボディの表面とかがうっすらとサビてるぐらいなら特に問題ないんですよ。しかし50万円以下のカプチーノはたいていの場合、モノコックの非常に重要な部分が、うっすらとではなく激しくサビてるんです。
――例えばどのあたりがサビて腐れてくるんですか?
北田さん 挙げていけばキリがないのですが、一番見てほしいのは、エンジンルーム内のストラットアッパーマウントの横あたりですね。例えばコレはウチの部品取り車ですが……。
――おおっ、激しく逝ってますね!
北田さん ここはかなり力が集中する部分ですので、ここが腐食しているカプチーノは、弊社では到底販売できかねます。あとはシートの後ろにあるパネルがサビちゃってるケースも多いですね。
北田さん これなんかはまだ大丈夫なほうですが、ひどいのになるとサビて穴が開いちゃってます。でもココは、一般のお客様が販売店の店頭で見ることができる箇所ではないので……そうですねぇ、あとわかりやすいのは下回りのサビでしょうか? リアタイヤの前ぐらいから、下回りを覗いてみてください。……どうですか?
――なんというかこう、普通です。
北田さん ですよね。これは販売車両です。では次に、部品取り車の同じ場所を見てみてください。
―ううむ、けっこうサビサビですねぇ……というか、よく見るとフロアに穴開いちゃってるじゃないですか!
北田さん 40万円台の底値系物件のモノコックはたいていこんな感じですので、基本的にはおやめになったほうがいいですし、もしも買うのであれば、こういった状況であることをご承知のうえで買う必要があるでしょうね。
――なるほど……。でも100万円前後ぐらいのゾーンであれば、こういったことはないわけですね?
北田さん 少なくとも弊社ではそうです。弊社ではなくても、きちんとした専門店さんが扱っている個体であれば大丈夫でしょう。
――まずはモノコックのサビに注意、と。そのほか、見ておくべきポイントは?
北田さん あとはまぁエンジンですが、これはボンネットを開けて見ただけではわからない問題ですので、アイドリングが安定しているかどうかや、異音が発生していないか、そしてきっちり吹け上がるかどうかなどを、最終的な購入前のご試乗で確認してほしいですね。
――押忍。ほかには?
北田さん あとはMTのシンクロでしょうか。カプチーノの場合、シンクロメッシュの劣化により「3速から2速が入りにくくなる」という症状が出ることが多いんです。弊社ではそういった個体は基本的には事前に修理いたしますし、そうではない場合は2速のところにバツ印を付けておきます。
――どういうことですか?
北田さん 「この個体は2速、かなり入りにくいです! そのぶんお安くしていますので、それでもよろしければどうぞ!」という意味です(笑)。
まぁいずれにせよ、一般のお客様が店頭で見ておわかりになるのはサビとエンジンの様子、それにMTのシンクロぐらいでしょうか。あ、シンクロの劣化はもちろん走りながら変速してみないとわかりませんので、ご注意ください。
――展示場で止まったままキコキコ変速させてみても意味ないってことですね、了解です。
北田さん そして根本的には、経験と知識が豊富で、なおかつ「確かなカプチーノ愛」がある専門店を見つけて、そこでお買い求めになるのが一番だと思いますよ。口幅ったいですが、弊社もカプチーノに関しては経験も愛もたっぷりだと自負しておりますし、弊社以外にも、全国にしっかりとした専門店さんは何店もありますので。
――でも「本当にちゃんとしてる専門店」と「見た目と口先だけの専門店」を見分けるのって、中古車の経験が少ない人にはけっこう難しいですよね?
北田さん そうなんですよねぇ……。そこが微妙なところではあるのですが、まぁ店に行ってみて、お店の人と話してみて、カプチーノに対する「愛」が感じられるかどうかというのを、ひとつの指針とするしかないでしょうね。
――押忍。カプチーノの補修用部品ってまだ出るんですか?
北田さん 出ないものも一部ありますが、まだかなりの純正部品が出ますよ。スズキさんはそのあたり、頑張ってらっしゃいますね。
――細かな部品だけじゃなくて、例えば外装のパネル類なんかもまだ出るんですか?
北田さん 出ます(キッパリ)。そのほか、機械モノはリビルトパーツもたくさんありますし、社外パーツの種類と数も豊富です。また他のモデルからの流用も可能であり、弊社のような専門店であれば中古パーツも多数ストックしてございます。
ですので、「部品」に関してはまったく心配ないというのが、現時点でのスズキカプチーノを取り巻く状況です。
――今後も未来永劫、カプチーノの部品は供給され続けるんですかね?
北田さん そればっかりは私にはわかりませんが(笑)、まだしばらくは大丈夫なのでは……という感触はあります。まぁ部品供給が完全に途絶えてしまえば、部品代も車両相場も上がってしまうのでしょうし、純正部品の値段も、昔と比べればずいぶん高くなってしまってはいるのですが。
――相場といえば、世間の「古いクルマブーム」のせいでカプチーノの中古車相場も上がってるのですか?
北田さん 上がってますね~。ここ1年ぐらいで20万~30万円ぐらいは上がってしまいましたね。困ったものです。
――でも逆に言えばせいぜい20万~30万円ですか? 日産『R34GT-R』とかみたいに「ウン倍になっちゃいました」というレベルではなく?
北田さん そうですね。今後数年や10年後のことはわかりませんが、幸いにして今のところは「少々上がってしまった」というレベルで済んでいます。
――ということは中古のカプチーノって、趣味車としてすっごくいい選択なんじゃないですか? 相場が上がったとはいえバカ高いわけではないし、部品もあるし、その部品代も軽自動車だからけっこう安いし。そして、そもそも乗ってウルトラ楽しいクルマだし。
北田さん おっしゃるとおりですね。古いクルマではありますが、年式の割には「手がかからないクルマ」、「けっこう普通に維持できる趣味車」と思っていただいて間違いないと思います。
例えば大型バイクを趣味とするのも素敵ですが、雨風をしのぐこともできるカプチーノを「趣味の乗り物」にするというは、決して弊社の宣伝ではなく、本当にお薦めなんですよ。
――でも、買った後のメンテナンスとかが大変だったりしないのですか?
北田さん そのあたりも「普通」ですよ。古いターボ車ですから。まずはある程度の暖機をしっかり行っていただいて、エンジンオイルは3000kmから5000kmに1回、あるいは半年ごとに交換して、あとは冷却水がちゃんと入っているかどうかを確認して……って、だいたいそのぐらいですかね。
――定期的に専門店で点検してもらう必要はないんですか?
北田さん うーん、もちろん何かあった時や何らかの違和感を検知した際は、なるべく早いタイミングで私どものような専門店や工場に持っていくのが、結果としてコトを大事に至らせない賢いやり方であり、結果的に安上がりで済む方法です。
でも、特に何の異変もないのであれば、わざわざ持ってきていただく必要はないんですよ。まぁエンジンオイル交換だけは定期的にやっていただきたいですが。
――ううむ……。最初に100万円前後ぐらいの「腐れてないカプチーノ」を選んで、それをビッと整備しておけば、思いのほか簡単に……と言っては語弊もあるかもしれませんが、まぁややこしい旧車と比べれば簡単に、楽しめるのがスズキカプチーノってクルマなんですね?
北田さん おっしゃるとおりかと思います。ほんと、イメージ以上に「その気さえあれば普通に維持できるクルマ」ですので、ご興味がある方はぜひ前向きに、かつお気軽に、検討していただきたいですね。
――押忍、納得です。本日はお忙しいなかありがとうございました!
北田さん いえ、どういたしまして!
■スズキ カプチーノ 主要諸元
●全長×全幅×全高:3295×1395×1185mm
●ホイールベース:2060mm
●車重:700kg
●エンジン:直列3気筒DOHCターボ、657cc
●最高出力:64ps/6500rpm
●最大トルク:8.7kgm/4000rpm
●燃費:18.0km/L(10・15モード)
●価格:145万8000円(1991年式ベースグレード)
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