最近のホンダ車は失敗作が少なくなったような気がしませんか? N-BOXスラッシュやジェイド、わくわくゲートを持つ現行ステップワゴンくらいでしょうか。
かつてホンダ車は、一発屋と呼ばれる一代限りで終わった失敗作がたくさんありました。創業者本田宗一郎の名言に「チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ」がありますが、その精神を受け継いだチャレンジングな勇気ある失敗作が数多く登場しています。
まずは1969年に発表されたホンダ初の小型乗用車(FF)のホンダ1300がホンダの失敗作列伝の最初ではないでしょうか。
本田宗一郎の信念により空冷エンジンを搭載、1.3Lで100馬力と非常にパワフルでしたが、F1での空冷エンジンの失敗同様、うまくいきませんでした。凝った設計により空冷なのにエンジンが重すぎ、その結果過度のフロントヘビーで操縦性も悪化するという悪循環に陥ったのです。
結局わずか3年で消滅してシビックにバトンタッチしましたが、失敗を教訓に大成功につなげたのは、ホンダ流挑戦ビジネスの元祖といえるでしょうか。
そのほか、一代限りの失敗作として思い浮かぶだけでも、CR-Xデルソル、アスコットラファーガ/イノーバ、エアウエイブ、エリシオン、エレメント、オルティア、キャパ、ザッツ、ゼスト、トルネオ、クロスロード、エディックスなどがあります。
もちろん、単に失敗作という言葉だけでは片付けられない、実にいいクルマもたくさんあります。
今回は、その失敗作の中から、中古車となっても値が上がっていない安いモデルを取り上げたいと思います。
文/萩原文博、写真/ホンダ、ベストカー編集部
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■ゼスト 2006年3月~2012年11月
まもなく、51歳となる筆者にとってホンダという自動車メーカーは他の国産メーカーよりも特別な思い入れがある。18歳で免許証を取得し夜な夜な走り回った初めての愛車はワンダーシビック。
次に手に入れたのも1991年に登場し、アイルトン・セナがTV-CFに登場していたプレリュードだった。
自分の中にあるホンダのイメージはテレビでF-1をかじり付いて見ていたこともあり、「チャレンジャー」という印象が強い。その結果、新しいカテゴリーの開拓に成功することもあれば、残念ながら撤退ということもあった。
それはほかのメーカーではやらない「ホンダらしいチャレンジスピリッツ」の象徴だと思っている。現在、新車販売台数No.1に輝いているN-BOXやSUV新車登録台数No.1になったヴェゼルなどは成功した車種の代表だ。
ここではこうした成功の陰に積み重ねられた、コンセプトが斬新過ぎて時代にマッチせずヒットしなかったクルマたちにフォーカスを当て、現在の中古車相場を紹介する。
現在、軽自動車の新車販売台数で、ホンダN-BOXがトップ独走中だ。そんな好調なホンダの軽自動車だが、残念ながらいまいちヒットしなかったモデルがある。
それが2006年3月~2012年11月まで販売された軽ハイトワゴンのゼストだ。ゼストはホンダ独自の低床プラットフォーム技術を採用し、当時クラストップレベルの低いテールゲート開口地上高と後席を倒すと最大739Lという大容量の荷室を実現。
また、ステップワゴンと同等の広々とした後席空間も確保している。また、軽自動車初の前後席に対応したサイドカーテンエアバッグや車相互の衝突時に自己保護性能を大幅に向上させるとともに相手車両への攻撃性を低減させるコンパティビリティ対応ボディを採用。
衝突安全性能総合評価で当時軽自動車の中で唯一の両席6スターを獲得するほど高い安全性を誇っていた。
ゼストは2008年12月のマイナーチェンジの際にゼストスパークを追加する。現在のカスタムに当たるモデルだが、鋭い眼光を表現したプロジェクタータイプのディスチャージヘッドライトや大開口フロントバンパーなどにより精悍で迫力ある外観デザインを採用。
さらに2010年7月にはTV-CFに出演していた歌姫とコラボした「Aスタイルパッケージ」という期間限定車を設定するものの、わずか一代で絶版車となってしまった。
現在、ゼストの中古車は約1170台も流通していて非常に豊富だ。現在の中古車の平均価格は約26.5万円で、3カ月前2020年12月の時点では約28万円だったので、値落ち傾向となっている。
最高価格は約79万円で、約30万円以下という低価格車が約735台も占めている。グレードでは追加されたゼストスパークWが最も多くなっているのが特徴だ。
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