クルマの個性はドアで決まる!! 「ガルウィングっぽいドア」百花繚乱

ガルウイングの可能性を示したファルコンウイングドア

ガルウイングドアの進化版がテスラモデルXのリアドアに採用されているファルコンウイングドア。ガルウイングがカモメだったのに対し、ファルコンウイングは隼の翼の意味。カモメよりも強そうでカッコいいイメージ。

テスラモデルXのファルコンウイングドアを開けた状態。ルーフに装着された別々の動きをする2種類のヒンジにより左右30cmあれば開閉が可能になったのは画期的

このドアはルーフにヒンジが装着されていて、クルマに対して垂直にドアが開くのはガルウイングと同じだが、ヒンジの動きがまったく違う。

ファルコンウイングドアは、別々の動きをする2種類のヒンジが装着されているのがポイントで、まずドアが上方向にせり上がるため、横方向へのドアの張り出しが最小限に留められている。この効果は絶大で左右30cmあれば開閉可能で、古来のガルウイングの最大の泣きどころを克服している。

しかも、自動で開閉するので、ドアを閉じる時も座ったままでOK。開口部も広いので2列目、3列目の乗降性も抜群にいいという至れり尽くせりだ。

ガルウイングのようでガルウイングじゃないドア

ガルウイングのようでガルウイングじゃないドアは3種類ある。ここからは、それぞれの特徴などを個別に見ていこう。

■シザードア

ランボルギーニカウンタックが外側に開く普通のヒンジドアを採用していたら、ここまでの名声は得ていなかったのではないか、と指摘されるほど、カウンタックのドアの開き方は、見るものの度肝を抜いた。

カウンタックといえばこの写真というくらいシザードアはアイコンにもなっている。ガルウイング同様にドアを支えるダンパーが劣化してくると、ドアが落ちてくる

ドアが跳ね上がり、ドアがバンザイしたような状態となる。これぞ非日常の極みといえる。

ドアの名称は、1個の支点を中心に動くその動きがハサミに似ているということからシザードアと呼ばれるケースが多い。日本語ではハサミドアと訳すのではなく、跳ね上げドアの名称が一般的に使われている。

またカウンタックの登場以来、ランボルギーニのV12搭載モデルのアイデンティティとなっているので、ランボルギーニドアとも称されることもある。

ガルウイングの支点がルーフ部分なのに対し、シザードアはAピラー付け根部分が支点となり、ドアが回転しながら跳ね上がる。

これにより、ガルウイングに比べると横方向のせり出しが小さいため横方向に余裕がなくても乗り降り可能だ。ただし、上方向はガルウイングよりもスペースが必要。

ランボルギーニ以外では、和製スーパーカーの童夢零、ブガッティEB110、スパイカーC8、ヴェクターW8などがシザードアを採用。

日本が誇るスーパーカー、童夢零はカウンタック同様にシザードアを採用。低いプロポーションと高く跳ね上がるドアの対比がこのクルマの非日常感を倍加する

■バタフライドア

ガルウイングが垂直、シザードアが回転という動きをするのに対し、バタフライドアは、ドアは回転せずに前方斜め上に開き、ドアがフロントウィンドウをよりも前に出ていることが迫力を醸し出している。

ドアを開いた状態が蝶が羽を広げた姿に似ていることから命名(昆虫が羽を広げている姿にも見えるのでインセクトウイングドアの別名もあり)。マクラーレンはマクラーレンF1以来、バタフライドアを積極的に採用していて、マクラーレンではディヘドラルドアいう名称を使っている。

このバタフライドアは、ガルウイング、シザードアよりも意外なほど採用しているクルマが多い。エンツォフェラーリ、ラフェラーリ、BMW i8、マクラーレンF1、MP4-12C、720Sなどなど、最近のスーパースポーツのトレンドとなっている。

日本が誇るバタフライドアといえば1990年デビューのトヨタセラ。セラが凄いのは、ルーフ部分がドアと一体成型されていて、Tバー部分を残しガバッと開く点で、トヨタのアグレッシブさには今さらながら敬服するしかない。ぜひこのドアを現代のラインアップで復活させてほしい。

フェラーリはランボドアに目もくれず一貫して普通のドアを採用してきたが、エンツォフェラーリ、ラフェラーリと相次いでバタフライドアを登場させた

マクラーレンはF1以来、アイデンティティとしてバタフライドアを積極的に採用。最近のモデルは、ディヘドラルドアであるとアピールしている。タダ者じゃない感じアリアリ

■ディヘドラル・シンクロ・へリックス・アクチュエーション・ドア

もの凄く長い名称のドア。さぞかし仰々しい開閉をするのでは、という想像を裏切らず、驚きの動きをする。

スウェーデンのスーパースポーツメーカー、ケーニグセグの専売特許で、ケーニグセグの礎ともいえるCCプロトタイプ以来、多くのモデルに採用することで、ランボドアに負けず劣らずケーニグセグのアイコンにもなっている。

ドアの前部分が下がり、それと同時にドアが上方に向けて回転して、垂直になった状態で止まる、というトランスフォーマー的な動きをする(現在は電動)。

上方に大きく跳ね上がるガルウイング、シザードア、バタフライドアのような派手なアクションではないが、タダ者じゃない感に溢れていて、ランボのシザードアに見慣れてきた今では超個性的なドアといえそうだ。唯一無二の存在というのもいい。

カモメ、隼、蝶(昆虫)など、生き物に例えられる名称が与えられているドアだが、ディヘドラル・シンクロ・へリックス・アクチュエーション・ドアも例外ではなく、猛禽類の翼にちなみラプタードアと呼ばれることもある。

残念なのは、日本でも正規販売されているもののなかなか街中で目にする機会がないことだろう。ちなみにこの書いている担当も、生で見たことはない。

ディヘドラル・シンクロ・ヘリックス・アクチュエーション・ドアはこのように開く。ドアが上方に回転し、垂直になったところで止まるその様は強烈なインパクトだ

正面から見たところ。このアングルでもドアが垂直に立っているのがわかる。ドアの厚さにミラーを加えると、ボディ両サイドにはかなりのスペースが必要

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ガルウイングっぽいドアについて見てきたが、『百花繚乱、千紫万紅 クルマの進化はドアの歴史!! 時代の闇に消えた変わり種ドア 9選』も展開するのでお楽しみに。

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