新車を購入する場合、現金という人もいるだろうが、最近はサブスク(サブスクリプション)と残価設定ローンを利用する人も多くなってきた。そこで、サブスクと残価設定ローンはどう違うのか、どちらがお得なのか、迫ってみた。
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock
■最近増えてきたサブスクと残クレ利用
クルマのサブスク(サブスクリプション)は、定額制カーリースのことだ。カーリースは、クルマを貸与するサービスだから、税金、自賠責保険料、車検/点検費用などは、すべてリース料金に含まれる。
カーリースのシステムによって差が生じるのは、任意保険の取り扱いだ。年齢などを問わず、すべての事故に対応できる任意保険をリース料金に含んだタイプと、保険の加入は自賠責だけで任意保険はユーザーが別途加入するものがある。
リース期間を終えた後の車両の扱い方も異なる。あくまでもカーリースであることを前提に、使用期間満了時に車両を必ず返却するタイプと、ユーザーが車両を買い上げられるタイプがある。
リースに似たサービスとしては、残価設定ローンが普及している。契約時に3~5年後の残価(残存価値)を決めておき、残価を除いた金額を分割返済する。したがって返済期間を終えただけでは、車両は自分の所有にならないが、月々の返済額は安く抑えられる。
返済を終えた時には、車両を返却する、残価を支払って車両を買い取る、改めてローンを組んで返済を続ける、という3つのパターンを選べることが多い。
そして多くのユーザーは、車両を返却して、新たに別の新車で残価設定ローンを契約する。この使い方であれば、使用形態はカーリースに近い。
ローンは所有権を得る購入を目的とした分割払いだから、リースとは本質的に異なるが、残価設定ローンで車両を返却するなら、使った期間だけお金を支払うことになるからだ。
【画像ギャラリー】ヴォクシーに乗るならKINTOか残クレかどっちが最適解なのか?(5枚)画像ギャラリー■ヴォクシーでKINTOと残クレを試算してみる
そこで定額制カーリースと、残価設定ローンを比べてみたい。
まず定額制カーリースで注意すべきは、先に挙げた任意保険の取り扱いだ。定額制カーリースが任意保険に加入する場合、大半がすべての年齢層をカバーするドライバーを選ばないタイプだから、個別に加入すると任意保険料も高い。
ユーザーを限定しない任意保険に車両保険も含めて加入すると、車両価格が300万円前後のクルマでは、1年間の任意保険料が30万円を超える場合もある。任意保険に個別に加入するか、リース料金に含まれるかでは、損得勘定が大きく変わる。
定額制カーリースで人気が最も高いサービスは、トヨタのKINTOだ。任意保険料もリース料金に含まれていることが特徴になる。
そこでヴォクシーを例にとり比較してみたい。ちなみにヴォクシーは2025年1月から受注が再開しており、納期はガソリン車が1月中旬に注文した場合、2025年3月以降、ハイブリッド車は2025年5月以降となっている(首都圏のディーラー調べ)。
ヴォクシーのノーマルガソリンエンジンを搭載した2.0S-ZをKINTOで3年間使うと、初期費用フリープランのボーナス月加算なしの場合で、リース料金は月額6万830円だ。
一方、同じヴォクシーを残価設定ローンで契約すると、3年間の均等払いで月々の返済額は5万6700円になる。ただしこのなかには、税金、保険料、メンテナンス費用は含まれない。
ヴォクシー2.0S-Zを購入してから3年間にわたって支払う税金の総額は約24万円で、自賠責保険料は2万4190(37か月)だ。オイル交換などを行うメンテナンスのパックは3年間で約6万円になる。
これらを合計すると約32万円で、3年間の1か月平均に換算すると約9000円だ。残価設定ローンの月々の返済額は、3年間の均等払いで5万6700円だから、これに9000円を加えると6万5700円になる。この時点でKINTOのリース料金の月額6万830円を上まわっている。
しかも残価設定ローンでは、上記の金額に3年分の任意保険料も加わる。任意保険料は加入の仕方によってさまざまだが、主にクルマを使う人の年齢が40歳で、無事故の期間が長く40等級であれば、1か月当たりの任意保険料は月額4500円前後だ。前述の月額6万5700円と合計すると約7万円になる。KINTOのリース料金の月額6万830円に比べて1万円近く高い。
主にクルマを使う人の年齢が19歳で、初めて任意保険に加入する場合は、月々の任意保険料が約2万5000円に跳ね上がる(年額では30万円を超える)。そうなると先に挙げた月額6万5700円と合計すれば約9万円に達する。KINTOが月額約3万円安いわけだ。
このようにKINTOは残価設定ローンに比べて料金を割安に設定しているが、最終的に車両を買い取ることはできない。返却が前提で、走行距離やニオイなどに関する規定もあるから、これに反すると返却時に精算が生じる。
クルマの所有権を手に入れて長く使いたいユーザー、あるいは走行距離が伸びたり、ペットを同乗させるユーザーには適さない。借りているクルマであることを常に考えながら、大切に使わねばならない。
それでも残価設定ローンを利用して、3~5年ごとにクルマを乗り替えるカーリースに近い使い方をするなら、KINTOは利用価値の高いサービスだ。特に任意保険料が高騰する若いユーザー、あるいは任意保険を使って等級の下がったユーザーには、出費を抑える効果が大きい。
定額制カーリースの注意点は、残価設定ローンとは異なり、それぞれのサービスによって任意保険料や料金設定が大きく異なることだ。ちなみに以前のカーリースは、法人ユーザーが主な顧客だったから、荒く使われることを想定してリース料金を高く設定していた。
カーリースを利用する時は、残価設定ローンも含めて、見積りを取って比較したい。今はメーカーのウェブサイトを使って、カーリースや残価設定ローンの見積りをチェックできるから、活用するようにしたい。
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