少しは自腹を切るべき? 自動車保険の「免責金額」っていくらにすればいいの?

少しは自腹を切るべき? 自動車保険の「免責金額」っていくらにすればいいの?

 近年、自動車保険の保険料を抑えるため、車両保険に「免責金額(自己負担額)」を設定する人が増えている。しかし、保険料が安くなるからと言って免責金額を安易に決めてしまうのは危険だ。結果的に保険が保険の意味を成さない事態に陥ることもある。どのような免責金額の設定が適切なのか、免責金額を設定するリスクはあるのかなど、保険の免責金額のイロハをお教えよう。

文:佐々木 亘/画像:Adobe Stock(トビラ写真=Elchin Abilov)

保険料を節約するにはさまざまな検討が必要となってくる(Катерина Нагірна@Adobe Stock)
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免責設定しないと保険料がバカ高い! 

保険料を節約するにはさまざまな検討が必要となってくる(Катерина Нагірна@Adobe Stock)
保険料を節約するにはさまざまな検討が必要となってくる(Катерина Нагірна@Adobe Stock)

 免責金額を設定する人が増えた要因のひとつが、2013年10月より順次開始された事故有係数(事故あり等級)の導入にある。これは事故を起こして車両保険を使うと、単に等級が下がるだけでなく、最大6年間「事故あり」の扱いとなり、保険料が大幅に上がってしまう仕組みだ。

 また、保険料の値上げも関係している。軽自動車の料率クラスが見直されたり、クルマの修理費が上昇したり、車両保険の保険料が上昇する要因が増えているのだ。

 こうした背景から、保険料を節約する方法として、免責金額を大きく設定する傾向が強まっている。しかし、これが本当に得策なのかは慎重に判断すべきだ。

免責金額を高く設定すると保険の意味が無くなるってマジ?

せっかく加入している保険が台無しになることも?(Wanchai@Adobe Stock)
せっかく加入している保険が台無しになることも?(Wanchai@Adobe Stock)

 免責の設定をしたために、ユーザーが大きな自己負担を余儀なくされたケースも存在する。

 契約者は、車両保険を安くするため免責金額を10万円に設定していた。ところが契約期間中にフロントバンパーを損傷する事故を起こしてしまう。修理見積りは先進運転支援システム(ADAS)搭載車であったため、センサーやカメラの調整(エーミング)費用も加わり、修理代が17万円程度となった。

 通常、バンパー交換程度の修理であれば、自動車保険を使わずに自腹で直した方が、向こう3年間の保険料上昇を考えたときに得策なのだが、今回の案件ではADASが搭載されていたために、大きな修理金額となってしまった。

 このケースでは、保険修理にしても10万円の手出しが発生し向こう3年間の保険料が上昇、全額自己負担なら17万円の手出しとなる。どちらを選んでもユーザー負担は大きくなってしまうのだ。想定外の修理費が大きな負担となり、「車両保険に入っている意味がない」と嘆く結果となる。

免責金額の設定はコレで大丈夫!

バランスを考えることが快適なクルマライフに直結してくる(SRT101@Adobe Stock)
バランスを考えることが快適なクルマライフに直結してくる(SRT101@Adobe Stock)

 免責金額にも様々な種類がある。車両同士の事故では自己負担が発生しない「車対車免責ゼロ」や、単独事故や天災(台風・洪水・落雷・地震など)では1回目5万円、2回目以降10万円の自己負担が発生する「5-10」などだ。

 免責金額は、表面的な保険料の安さで決めるのではなく、自動車保険のキモを知った上で設定する必要がある。例えば、事故対応のスムーズさも考慮すべきポイントだ。

 免責を高く設定していると、修理費用を自己負担する必要があり、保険を利用する際の手続きにも影響を与えることがある。手元資金に余裕が少ない場合や、毎日通勤で使うなど、すぐに車を修理しなければならない状況では、免責なしや免責金額低めの設定が妥当だろう。

 さらに、家族で複数の車を所有している場合や、運転する人が複数いる場合も、免責設定は慎重に検討すべきだ。家族のなかで事故リスクが比較的高い人が運転する機会が多いなら、免責を低くしておくことで、不測の事態に備えることができる。

 こうした点を踏まえて筆者は、最もバランスの良い免責額は「0-10」と考えている。その理由は、年間を通して複数回事故を起こす人は少ないことと、1回目の事故に関しては自己負担なしで対応できる利点があるためだ。

 保険料を抑えつつ、万が一の際の負担を軽減するという観点からも「0-10」は、コストとリスクの両面をカバーできる合理的な選択肢となる。保険料を抑える事も大切だが、助けてほしい時に助けてもらえる保険設計をしておくことが、ユーザーのできる最大のリスクヘッジなのだ。

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