三菱自動車の2025年度決算は、増収減益となった。営業利益は前年比46%減の755億円、当期純利益は76%減の100億円。数字だけを見れば、苦しい一年だったことは否めない。
しかし、2026年5月8日に行われた決算会見で、今回が初めての決算となる岸浦恵介新社長(今年1月に人事発表、4月に就任)の表情が前を向いていたのには理由がある。今期(2026年度)は営業利益900億円、小売販売台数85万7000台を見込み、反転攻勢の準備が着々と進んでいるからだ。
そして、その最大の象徴となるのが、決算資料に記された「新型クロスカントリーSUV」。ベストカーWebの見立てでは、これは間違いなく「次期パジェロ」だ。往年の名車であり三菱の大看板であるクロカンSUVが、本年中に日本市場へ帰ってくる。
文:ベストカー編集局長T、画像:三菱自動車工業
【画像ギャラリー】三菱復活の狼煙!! 苦境のなか決算純利益+100億円を叩き出し「次期パジェロ」で攻勢を仕掛ける(4枚)画像ギャラリー苦しい一年だったが黒字は守った
まずは2025年度(2025年4月〜2026年3月)の三菱自動車工業の決算内容を整理しよう。売上高は2兆8,965億円で前年比4%増。これ自体は悪くない数字だが、利益面は大きく落ち込んだ。営業利益は755億円で前年比46%減、当期純利益は100億円で前年比76%減。小売販売台数も79万7,000台と前年比5%減だった。
マイナス要因は複数あるが、大きいのは為替(特にタイバーツ安による238億円の損失)、品質対策費用の増加、そしてインフレによる原価上昇だ。さらに米国関税の影響も474億円のマイナスとして表面化した。
それでも、岸浦社長は会見でこう語った。「非常に厳しい中で、昨年8月に見通しを修正した計画を、なんとしても達成するということを、全社一丸となって取り組んできました」、「苦しい中でも最終黒字もしっかり確保できたということについて、(お客様、関連会社の皆さま、三菱自動車全社員に)非常に感謝している」。
プラス組とマイナス組に大きな断絶がある日本自動車メーカー群、三菱はどちらかといえば苦境に立たされている側であったが、それでも修正計画をきっちり達成し、最終黒字を死守。この事実は、2026年度の反転攻勢に向けた足場を築いたといえ、おおいに評価できる。
また、前期(2025年度)についてはこの4月から取締役代表執行CEOに就任した加藤隆雄前社長の功績大といっていいだろう(6月から取締役代表執行会長CEOに就任予定)。今回初めての決算会見に臨んだ岸浦新社長においては、ぜひともこの数字を土台にして、地道な投資と開発、そのうえでさらなる飛躍を狙っていただきたい。
2026年度の見通し——”楽観的V字”ではなく”リスク織り込みの慎重な攻勢”
2026年度(2026年4月〜2027年3月)の業績見通しは、売上高3兆2600億円(前年比13%増)、営業利益900億円(同19%増)、当期純利益250億円(同150%増)、小売販売台数85万7000台(前年比6万台増)となっている。
ここで注目したいのは、営業利益の構造だ。中東情勢の影響を除けば、本来の営業利益見通しは1200億円に達する。しかし三菱は、中東リスクによる300億円の悪化影響をあらかじめ織り込んで、900億円という保守的な数字を公式見通しとして掲げた。
「今年度300億円の悪化影響を見込んでいる」と岸浦社長は明言。楽観的なV字回復を演じるのではなく、リスクを正直に数字に落とし込んだうえで、それでも攻めていく——そういう姿勢がこの見通しには込められている。
中東リスクの実態——予断を許さないが、当面は耐えられる
中東問題は、日本の自動車メーカーいずれの社にとっても大きなリスクだ。記者からリスクの中身について質問が飛び、岸浦社長から異例の詳細が語られた。
中東での三菱自動車の販売台数は2026年3月に前年比で約4割減という厳しい落ち込みを見せたとのこと。ただし4月に入ってからは前年比約2割減まで落ち幅が縮小しており、状況はやや改善しつつある。
いっぽう物流面でも苦境が続く。自動車運搬船(PCTC)がホルムズ海峡を通過できない状況が続いており、3月までに出荷した車両約1万9000台がシンガポールやスリランカといった中継地に滞留しているそう。中東現地には約2万5000台(販売ベースで約4カ月分相当)の在庫が確保されており、「新しくクルマが(中東へ)送り込めなくても、当面の間は現地の販売は対応できる」(岸浦社長)という状況だ。
そのうえで、ホルムズ海峡・紅海を経由しない代替輸送ルートのトライアルも開始しており、現在約700台規模で試験的に運用中とのこと。同時に仕向け地の振り分け見直しなども試みており、全力で対応策を講じている。
中東は三菱にとって稼ぎ頭のひとつなだけに、この不確実性は2026年度計画全体の最大リスクといえる。とはいえここまで詳しく語ってくれるとは……。三菱の本気度が伝わってくる。
三菱の勝ち筋はアセアン戦略車にある
では2026年度、三菱はどこで台数と収益を稼ごうとしているのか。答えはアセアン戦略車だ。
決算資料によると、エクスパンダー、エクスフォース、デスティネーターの3モデルで構成するアセアン戦略車の販売台数を、2025年度の17万4000台から2026年度は22万1000台へ、4万7000台増やす計画だ。これはグローバルでの台数増加(6万台)のほぼ大半を、この3モデルが担うことを意味する。
単なる台数増ではなく、「収益性の高いアセアン戦略車の比率を高める」というのが三菱の戦略だ。利幅の大きいモデルを売れば売るほど、全体の収益性も改善する。
実際、エクスフォース/HEVはすでに2025年度に前年比1万6000台増を達成し、勢いをつけている。デスティネーターも2025年度に2万4000台を販売し、インドネシア・ベトナム・フィリピンで好調なスタートを切った。2026年度はこれらのモデルが中南米や中東アフリカへも展開を広げ、さらなる台数増が見込まれる。
日本市場の焦点——デリカ好調と「新型車立ち上げ」
日本市場でも、三菱は攻勢をかけようとしている。2026年度の国内販売台数見通しは14万台で、2025年度の12万2000台から1万8000台の増加(前年比15%増)を計画している。日本市場の売上高見通しも6594億円から7650億円へ、1056億円増を見込む。
その柱として決算資料に明記されているのが「デリカシリーズ販売拡大」と「新型車立ち上げ」の2点だ。
デリカD:5は2025年度販売台数が過去最高を記録した。2007年1月発売のモデルが、いまだに過去最高販売台数を更新し続けているというのは、このクルマが持つ唯一無二の魅力の証明といえる。三菱しか作れないクルマが、三菱を支えている。ありがたいことだ。
デリカミニも最上級グレードの注文が堅調に推移しており、デリカブランドは三菱の日本市場における最大の柱に育ちつつある。
そこへ加わる「新型車立ち上げ」——。これこそが、三菱の日本市場戦略における最大の注目点だ。
【ベストカーWeb予想】その「新型クロスカントリーSUV」は次期パジェロか
決算資料の「2026年度の取り組み」ページには、日本市場と並んでアセアン地域の施策として「クロスカントリーSUV投入」という一文がある。さらに決算総括スライドには「新型クロスカントリーSUVのローンチ」が2027年3月期(=2026年度)の重要施策として明記されている。
会見の質疑応答でベストカー編集部が岸浦社長に直接確認したところ、社長は次のように語った。
「当社にとっては非常に重要なクルマでございます。万全を期して今準備をしていると。皆様のご期待に応えられるように、本年発売していきたいと思っております」
「非常に重要なクルマ」「万全を期して準備中」「本年発売」——このコメントから、このクロスカントリーSUVが単なるラインアップの一台ではなく、三菱の本気を賭けた戦略車であることがわかる。
このモデルは次期パジェロであることは確実だ。今回の会見で、新型パジェロはタイ生産であり、タイで同時発売される可能性が高いこともわかった。本年初冬の日本市場導入が有力とみる。
言うまでもなく、パジェロはかつて三菱のブランドイメージそのものを支えた象徴的な車名だ。1982年の初代登場以来、ダカール・ラリーでの活躍を背景に世界中にファンを作り、クロカンの代名詞としてその名を世界に知らしめた。そのパジェロの系譜が、2023年の生産終了から約3年を経て復活するとすれば、それは単なる新型SUVの登場ではなく、三菱復活の旗印と呼んで差し支えない出来事といえる。








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