物流は社会活動の血液にも例えられ、物流が停滞していては経済の発展は望めない。トラックドライバーをはじめとする物流の担い手不足が取り沙汰されるなか、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)が「2030年に向けた物流のあり方」を公表し、政府の次期総合物流施策大綱に反映させるよう求めている。政財界に際立った影響力を持つ経団連の提言とは?
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部、図/経団連
*2025年12月発行「フルロード」第59号より
現行の「大綱」進捗状況に危機感
経団連といえば日本を代表する大企業を中心に構成される、わが国最大の経済団体だ。物流業界にとっては大手荷主となる企業も多く所属する経団連が2025年10月、「2030年に向けた物流のあり方」を提言した。
その背景には、政府の「総合物流施策大綱」達成状況への危機感がある。2021〜2025年度を計画期間とする現大綱は、6月時点の評価で約7割が未達とされた。特に労働力不足と物流構造改革については、82%の項目で「更なる取り組みが必要」という評価で、次期大綱での施策強化が不可避だ。
5年間の物流政策の基本方針を示す総合物流施策大綱は、現在、次期大綱の策定に向けた議論が進められている。経団連としても取り組むべき項目を整理・公表し、次期大綱に反映させることで物流を成長産業化することを期待している。
物流業界は何もしなければ2030年に34%の輸送力不足に陥ると試算され、政府はトラックドライバーの負担軽減などを盛り込んだ政策パッケージを打ち出している。
しかし、2024年度のドライバーの拘束時間(2020年度比)は「運転時間」が大きく減るいっぽうで「荷待ち・荷役」時間は横ばいだった。歩合給が多く「走ってなんぼ」のトラックドライバーにとって、収入の減少にしかなっていないのが実情だ。
効率化が進まないトラック輸送のほか、インフラの老朽化、激甚化する災害、国際物流における日本のプレゼンス低下など、物流分野の課題は多く、経団連は貿易立国で経済成長してきた日本は、成長戦略としての物流政策を中長期的な視野から展開することが不可欠であるとしている。
利害関係者の意識改革が必要
具体的な提言の一つが、着指定時刻の分散化と柔軟化だ。トラックドライバーは時間を厳守するため、指定時刻より前に現場に到着し時間まで待機することが多い。着指定は「朝一」に集中しており、渋滞を避けるため数時間前の現着を心掛けているドライバーもいる。
こうしたドライバーの負担を軽減するには、「午前中」「午後一杯」や日付指定のみなど幅を持たせた受け入れ時刻の設定や、季節・月内波動を意識した平準化などが有効だ。荷動きも月末・月初や曜日によって偏在しており、荷主の意識改革が求められる。
また、オーダー締切と納品が同日となる場合、帰り荷の確保が難しく積載効率の向上を図れない。リードタイムが1〜2日あれば効率的な配車が可能となり、モーダルシフトを推進する効果も期待される。いずれも荷主とトラック事業者の協力が必要となるほか、消費者を含めて社会的コンセンサスを醸成することも不可欠となる。
ドライバーの付帯業務では、極端に離れた場所への納品や指定場所への棚入れなど、着荷主による過度な要求が問題となっている。改正貨物自動車運送事業法で適正原価に付帯業務のコストを反映することになったが、作業の種別ごとに標準的な原価を国が明示するなど、ドライバーの賃金底上げにつながる実効性のある対策が求められる。
また、パレットの利用について政府は「標準仕様パレット」のレンタル方式を推進しているが、川上(発荷主)がパレット費用を負担し、川下(着荷主)は返却するのみという商習慣が存在するため、現状では着荷主とレンタル事業者の大部分は契約未締結となっているそうで、国がガイドラインを制定するなど対策を進めることを提言している。
