日本が誇るエコカー市場において、さらに最先端を走るアウトランダーPHEV。
世界的な大ヒットとなっているSUVカテゴリーにおいて、唯一の国産クロスオーバーSUVプラグインハイブリッド車である。
そんなアウトランダーPHEVは、2013年1月の発売開始以来、毎年進化を続けており、2017年2月にも最新モデルをリリース。
本企画ではそのアウトランダーPHEVの最新仕様をじっくり使ってしっかり研究し、その魅力を皆さんにお伝えしたい。
「プラグインハイブリッド車」ということでやや敷居の高さを感じていたが、このたびじっくり乗ることでその魅力に大いに気づかされた。このクルマ、いい!
①編集部員による700km走行チェック
②ジャーナリスト渡辺陽一郎氏によるライバル比較
③三菱自動車プロジェクト推進部 第三プロジェクト推進 主任:上平真氏へのインタビュー
上記3部構成でお届けしたい。
文:ベストカーWeb編集部 写真:池之平昌信
■東京・音羽〜愛知・岡崎 往復700kmでわかった実力
文:ベストカーWeb編集部 編集長テラサキ
6月のある晴れた月曜日、本企画編集担当とカメラマン氏はウキウキと新東名高速道路を走っておりました。楽しい。運転していて楽しいのである。
書き出しからうっかり思いがほとばしってしまいました。申し訳ない。アウトランダーPHEVです。
紙とWeb合わせて14名いるベストカー編集部員のなかでも、トップクラスで長距離走行が苦手な本企画担当、東京〜浜松くらいの出張でも「新幹線にしましょう」と会社に頼んでしまうヘタレなのですが(なにしろ車酔いもする)、このアウトランダーPHEVだけは違っておりました。
以下、その走行性能を少し細かく紹介していきます。
このアウトランダーPHEVには3つの駆動ユニットが組み込まれています。前輪用モーターと後輪用モーター、それに前輪に駆動力を供給&リチウムイオン電池の発電にも使われる2L MIVECエンジンの3つ。
フロア下に置かれたリチウムイオン電池に充分電力が残っていればEV走行、そうでなければハイブリッドカーとして走行します。
何より特徴的なのは多くの人から「異次元」と呼ばれた加速フィールです。
全長4695mm×全幅1800mm×全高1710mm、車重1900kg(S Edition)といえば、サイズが近いライバルたちより200kgほど重い。
正直いってアクセルを踏み込む時は「クルーザーみたいな加速なのかな」と、クルーザーなんて運転したことない本企画担当も思ったものです。
しかし実態はさにあらず。軽やか。
「え、車重2t近くあって“軽やか”ってことはないだろうよ」とお思いの読者諸兄、お気持ちはわかるんですが、本当に軽やかなんです。
なんだよ、モーターならではの等加速運動ってこんなに気持ちいいのかよ、と、ガソリン車の荒々しい加速感が染みついている小生にも0.5秒で理解できる気持ちよさでした。
加えて静粛性が高く、乗り心地もいい。端的に言えば走りの質感が高いのです。
後述する開発者インタビューでは、このアウトランダーPHEVは「子供が酔いにくい」と言っておりましたが、なるほど静かで加減速のショックが少ないと、疲れないし車酔いもしにくいのか……と運転歴28年目にして知りました。
これはぜひとも一度乗ってみてほしい。いや本当にいいから。「走りがいい」ってこういうことかと気づくから。
■やっぱり気になる燃費とお値段(ライバル比較)
また、このアウトランダーPHEVを語るうえでやっぱり欠かせないのが燃費(電費)。
今回は満充電で東京を出発して新東名高速道路を走り、静岡SAで昼食をとりつつ急速充電、目的地である三菱自動車岡崎製作所(愛知県岡崎市)で再び急速充電、そして再び東京へ。
全行程は713km(途中、横浜で撮影&加速チェック)、使ったガソリンは35.8L。実に19.9km/Lという、他のミッドサイズクロスオーバーSUVではあり得ない燃費性能を発揮いたしました。すげーー!!
ここまで乗ってわかったのは、このアウトランダーPHEVのライバルは他の国産クロスオーバーSUV【ではない】んじゃないかっていうこと。
これ、搭載されている技術からも、走りの質感からも、欧州製高級プラグインハイブリッドSUVと比較すべきなのではなかろうか。
例えばボルボXC90(835万9200円〜1089万7200円)、例えばメルセデスベンツGLC350 e 4MATIC Sports(942万8400円)、例えばBMW X5 xDrive40e(1045万4400円)。無謀でしょうか。
確かにアウトランダーPHEVの価格は365万9472円〜478万9260円。欧州製のプラグインハイブリッドSUVと比べると価格は約半分です。実際のところどうなのか。
渡辺陽一郎さんにも聞いてみましょう!
【アウトランダーPHEV S Edition】
- 全長4695mm×全幅1800mm×全長1710mm
- ホイールベース2670mm
- 最低地上高190mm
- 乗車定員5名
- 車両重量1900kg
- JC08モード燃費19.2km/L(レギュラーガソリン)
- 充電使用時走行距離(プラグインレンジ、国土交通省審査値)60.2km
- 最小回転半径5.3m
- モーター最高出力(前/後)82ps/82ps
- エンジン最高出力118ps
■アウトランダーPHEVのライバル車は輸入SUVハイブリッド!?
文:渡辺陽一郎(自動車ジャーナリスト)
アウトランダーPHEVは、日本車では数少ないプラグイン方式、つまり充電機能を備えたハイブリッドSUVだ。
同様の国産SUVはほかに存在しないため、ライバルは輸入車になる、というのは的を射たライバル設定だ。
そのクラスだと、ボルボXC90T8、メルセデスベンツGLC350e4MATIC Sports、BMW・X5xドライブ40eが、充電の可能なハイブリッドSUVとして用意される。このようにアウトランダーPHEVは、海外の強豪を相手にしているわけだ。
まずプラグインハイブリッドでは、使い勝手の面から駆動用リチウムイオン電池の容量(総電力量)と、1回の充電で走れる航続可能距離が重視される。
アウトランダーPHEVの駆動用電池は12kWhを確保して、JC08モードで60.2kmの走行が可能だ。
対するボルボXC90T8で走れる距離は35.4km、ベンツGLC350eは30.1km、BMW X5xドライブ40eは30.8kmになる。
アウトランダーPHEVは、欧州のライバル車に比べると1回の充電で数値上は約2倍の距離を走れるため、エンジンを停止させて走行可能な距離も長く効率が優れている。
走行性能や居住性には、それぞれ独特の特徴がある。
XC90T8は全長が4950mm、全幅が1960mmの大柄なボディを備え、車内が広く荷室には3列目の補助席も装着した。内装は上質だ。
エンジンは直列4気筒の2Lだが(XC90の新しいプラットフォームは2L以上の搭載を想定していない)、ターボとスーパーチャージャーを併用して実用回転域の駆動力が高い。
車両重量は2320kgと重いが、操舵に対する反応が正確で、運転感覚はミドルサイズSUVに近い。乗り心地は低速域で少し硬いが、重厚感が伴って高速になると快適性が高まる。
緊急自動ブレーキは歩行者や自転車を検知して、右折時における対向車との衝突防止にも対応した。
GLC350e4MATIC Sportsは、全長が4670mmで全幅が1900mm。着座位置の高さが適度で、居住性は前後席ともに良好だ。インパネなどの内装はかなり上質に仕上げた。
運転感覚はSUVでもCクラスのセダンやワゴンに近い。重心の高さを意識させず、操舵感が自然な印象で安定性と乗り心地も良い。
X5xドライブ40eは、全長が4940mm、全幅が1940mmと大柄だ。カーブを曲がる時にはボディの重さを感じさせ、BMWの特徴とされる機敏でスポーティな印象は乏しい。
SUVでは車両の向きを変えやすいが、相対的に後輪の接地性が下がる面もある。BMWらしい走りを味わえるのは、SUVではX3以下だろう。
■世界最高水準車が約半額で!!!
これらの輸入SUVに比べると、アウトランダーPHEVは車両重量が2tを下まわっており運転感覚が軽快だ。
直列4気筒の2Lエンジンは主に発電機を作動させ、駆動は前後のモーターが担当するから直線的で滑らかに速度を高める。
そして全長を4695mm、全幅は1800mmに抑え、最小回転半径も5.3mに収まるから混雑した街中でも運転がしやすい。
その割に前後席とも居住性が優れ、荷室の容量にも余裕があるからファミリーカーとして便利に使える。
価格にも触れておこう。輸入SUVのプラグインハイブリッドは、XC90T8が1009万円、GLC350e4MATIC Sportsは873万円、X5xドライブ40e・iパフォーマンスは968万円だ。
アウトランダーPHEVは、Gナビパッケージが432万4860円、ビルシュタイン製ショックアブソーバーなどを備えたS Editionが478万9260円だから、プラグインハイブリッドの機能を充実させながら価格は輸入車の約半額だ。
なおプラグインハイブリッドはエコカー減税で取得税と重量税が免税になり、申請をすればCEV(クリーンエネルギー自動車)補助金が一律に20万円交付される。
これらの支援も受けると、アウトランダーPHEVは世界最高水準の環境技術と環境性能を備えながら、多くのユーザーが購入しやすいプラグインハイブリッドSUVになっている。
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渡辺陽一郎氏の分析においても、アウトランダーPHEVは欧州製高級SUVと互角以上の戦いを演じていることが明らかになった。
ううむ、ますます魅力の高まったこのクルマ、最終章では開発者へのインタビューをお届けしたい。
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