独フォルクスワーゲンの大人気コンパクトSUV「T-Cross」が日本導入されたのは、今年の2月。しかしさらに、VWからもう一台、「T-Roc」というコンパクトSUVが、今年夏ごろにも、日本市場へ導入される計画があるという。T-Rocは、2017年8月にデビューしたクルマで、ティグアンの弟分として、欧州地域で販売されている。
オシャレなデザインと質感の高い走りをもつT-Rocは、ベストセラーSUVのティグアンと並ぶほど、欧州地域で売れている。T-Crossよりも少し大きい、ティグアンよりもちょっとだけ小さい、絶妙な大きさのT-Rocは、日本のコンパクトSUVマーケットをかき回すだろうか。
文:吉川賢一/写真:Volkswagen、ベストカー編集部
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T-Rocは絶妙なサイズのコンパクトSUV!若々しいデザインは魅力!
T-Rocのボディサイズは、全長4234×全幅1819×全高1572mmと、T-Crossよりも全長が119mm長く、幅は59mm広く、全高は8mmほど低い。ティグアンと比べると全高の低さが目立ち、リアハッチゲートの傾斜があることから、クーペSUVのようにも見える。
また前後のフェンダーには、タイヤをさらに大きく見せる効果がある、力強く盛り上がった形状が織り込まれている。大人しいデザインが多いVWの中では珍しく、筋骨隆々な佇まいに仕上がっている。
インテリアに関しては、ダッシュボードやドアトリム、さらにはシートにも、ポップなカラーが入れ込まれている。フル液晶メーターパネルの「アクティブインフォディスプレイ」など、今風の要素もきちんと取り入れている。
こうしたデザインのブレークスルーは、T-Crossでも導入されており、これまでのVWにあった硬いイメージを、良い意味で壊し、若々しい雰囲気を持たせることに成功している。
パワートレインは、欧州仕様だと1.0リッターTSI 3気筒直噴ターボ(115ps)、1.5リッターTSI(150ps)、2.0L TSI(190ps、Rは300ps)、そして1.6L TDI(115ps)、2.0L TDI(150ps)、7速DSGもしくは6速MTの組み合わせとなっている。欧州車らしく、バリエーションが非常に豊富にあるのが特徴だ。
なお、2月に国内導入されたT-Crossは、1.0リッター直噴ターボと7速DSGの組み合わせ一本となっていたが、T-Rocには、7速DSG といくつかのエンジンの選択ができることを望む。
また、先進技術は、駐車時のサポートを行ってくれるドライバーアシスタンス、コネクティッド機能、そして先進運転支援システムなど、ひと通り備わっており、VWの上位モデルと遜色ないほどに搭載されている。装備内容と車両サイズから判断すると、車両価格は、T-Crossとティグアンの中間の350万円前後からと推測する。
T-Rocはおすすめモデルか?
T-Rocの正式なグレードや装備が発表されていないため、国内仕様のT-Rocはあくまで予測だが、筆者は、国内メーカーのライバルモデル(C-HRやキックスe-POWER)に対しては、苦戦をすると予測している。おそらくだが、ティグアンよりは売れるが、T-Crossほどではないだろう。
理由のひとつは、パワートレインだ。以前、T-Crossの1.0リッターターボへ試乗させていただいた際、ドライバビリティが素晴らしく、扱いやすくて楽しいエンジンだと感じた。
しかしながら、ハイブリッド化が進んでいる国産ライバルと比べると、「ハイブリッドの選択肢がない」ということが、ディス・アドバンテージになる。VWのエンジンも、実燃費は非常に良いのだが、発進時に生じる小さな振動やノイズの少なさなどは、やはり、ハイブリッドのなめらかさには、敵わないと感じる。
そして、理由の2つ目がボディサイズだ。T-Rocの1819mmという車幅は、国内で扱うには少し幅広く感じるだろう。
全長は4234mmと、ゴルフ7(全長4275mm、車幅1800mm)よりもやや短いため、駐車場などでの取り回しで苦労することは少ないだろうが、VWの販売店で、横に並んでいるであろう車幅1760mmのT-Crossの方が扱いやすく、また、車両価格の面でも、魅力的に映る方が多いのではないだろうか。
しかし、T-Rocの内外装の若々しいデザインや、元気な走りはとても魅力的であり、その長所に惹かれる方には、ぜひお勧めしたいモデルだ。ゴルフをはじめとするフォルクスワーゲンの質実剛健で固いデザインを、良い意味で破壊してくれたT-Rocは、新時代のVWデザインを感じられる魅力的な一台だ。
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