SUZUKI SV-7GX × stonemaker003
お? スズキから新型ツアラーが出たのか。SV650のエンジンを積んだ、ちょっと大きめのツーリングバイクね。うんうん、なるほど。
……で、これに乗れるんですか?
というわけで、今回はなんとSUZUKIの試乗会にお招きいただいた。誰かと間違えてませんか、スズキさん? そんな余計な心配をしつつ、山梨県は山中湖周辺で新型SV-7GXに試乗させていただくことになった。
普段はHONDA CB1000Fに乗っている筆者。リッターバイクの魅力にすっかり取り憑かれ、以前乗っていたエリミネーター400も手放してしまった。
大型バイクの魅力はもう十分に知っているつもりだった。
そして今回のSV-7GX。排気量645cc、最高出力73馬力、車重211kg。
いやいや、そんな数字のバイクなら、もう大体想像がつくんじゃないの?
だがしかし。
試乗を終えた私は、このバイクを買ってしまった場合に起きるであろう、深刻な家庭問題について考え始めていたのである。
SV-7GXってどんなバイク?
SV-7GXは、スズキが2026年10月に国内発売した新型クロスオーバーモデルだ。
上位モデルであるGSX-S1000GXのコンセプトを引き継ぎながら、SV650シリーズでおなじみの645cc水冷90度V型2気筒エンジンを搭載している。
最高出力は73PS、最大トルクは64N・m。車重は211kgで、シート高は795mm。
燃料タンクは17L。しかもレギュラーガソリン仕様だ。
要するに、走る・曲がる・止まるというバイク本来の性能に、ツーリングで必要な快適性と実用性を詰め込んだような一台なのである。
それだけならまだ分かる。
だが、上下クイックシフター、トラクションコントロール、ドライブモード切替、USB-C電源、ナックルカバー、リアキャリアまで標準装備という。
……ん?
ちょっと待て。
これ、後から買い足そうと思ったら結構な金額になる装備ばかりじゃないか。
そして価格は税込113万3,000円から。
スズキさん、やりすぎじゃないですか?
そんな疑問を抱きながら、いよいよ実車とご対面である。
キミ、思っていたより小さいのね
まず驚いたのは、その大きさだった。
GXという名前から、勝手にもっと大柄なバイクを想像していた。スクリーンがあって、カウルがあって、キャリアもあって。いかにも長距離を走るための大きなバイク。
そういう先入観があったのだ。
ところが、実物を目の前にすると意外なほどコンパクト。
そして、またがってさらに驚いた。
なんだこれ? 400ccクラスのバイクに乗っているようなまとまり感じゃないか!
もちろん実際の排気量も重量も立派な大型バイクだ。
だが、車体の収まりがいい。スリムなVツインエンジンもあって、必要以上に大きく感じさせない。
そしてシート高795mm。
身長172cmの筆者でも、少し車体を傾けるだけで片足の裏がべったりと接地する。
これが実にありがたい。
ツーリングというのは、走っている時間ばかりではない。信号で止まり、渋滞にはまり、駐車場で取り回し、コンビニに立ち寄る。
そんな何でもない瞬間に疲労が積み重なっていくものだ。
その点、このSV-7GXは最初から安心感がある。
大柄なツアラーにありがちな「よっこらしょ」という気合いが、あまり必要ないのである。
なんだこの乗車姿勢! ここは我が家のリビングですか?
そして今回、筆者が最も感動したのがライディングポジションだ。
いやもう、ラクなのである。
とにかくラク。
どれくらいラクかというと、このままNetflixを見ながら、カフェオレとクロワッサンを楽しめそうなほどラク。
もはや我が家のリビングである。
ハンドルは自然な位置にあり、上体は無理なく起きる。膝の曲がりにも窮屈さがなく、シートに腰を下ろした瞬間から、どこまでも走れそうな気持ちにさせてくれる。
先日試乗したナポレオンボブ250では、KETSUへのダメージと引き換えにカッコよさを手に入れた筆者。
ところが、こちらは正反対。
バイクに乗ることが、こんなにも快適でいいのだろうか。
とにかく尻にも腰にも肩にも優しい。
もちろん今回は2時間の試乗枠を2人で交代しながら走ったため、実際に筆者が乗れたのは約1時間。
これだけで長距離ツーリングの疲労まで断言するつもりはないが、少なくともこの1時間は、実に快適だった。
これは人間を堕落させる乗車姿勢である。
山中湖のワインディングで目が覚めた!
今回の試乗場所は山梨県の山中湖周辺。
2時間の試乗枠を2人で交代しながら走行する形で、筆者の乗車時間は約1時間だった。
山中湖周辺のツーリングロードを走り、パノラマ台から山中湖小山線のワインディングへ。
ツーリングバイクの快適性だけでなく、コーナリングの楽しさまで確かめるには、なかなか面白い舞台である。
そして、その道でSV-7GXの印象が大きく変わった。
懐かしい! これがSVのVツインだ!
まずエンジンのフィーリング。
おお、これこれ!
SV650で親しまれてきた、水冷90度Vツインの鼓動感がしっかり残っている。
低回転からトルクが十分にあり、発進もスムーズ。街中で必要な加速に不満はなく、アクセルを開ければ気持ちよく速度を乗せていく。
ただし、排気音は思っていたより大人しい。
もう少しVツインらしい主張があっても面白い気がするが、長距離を走るツアラーとして考えれば、むしろこれくらいが適切なのかもしれない。
さて、ここで愛車CB1000Fとの比較である。
CB1000Fの水冷4気筒エンジンは、非常に滑らかに回る。
それにすっかり慣れてしまった筆者にとって、このSV-7GXのVツインは、少し振動が気になった。
だが、それが嫌かというと、そうでもない。
むしろ懐かしい。
「ああ、Vツインってこういうエンジンだったよなぁ」
そう思わせてくれるのである。
4気筒の滑らかさを高級感と感じる人もいれば、2気筒の鼓動感をバイクらしさと感じる人もいる。
ここは好みが分かれそうだ。
ただ一つ言えることは、SV-7GXのVツインには、実用性だけでは終わらない魅力があるということ。
え? このポジションでこんなに曲がるの?
そしてパノラマ台から山中湖小山線のワインディングに入る。
ここで驚いた。
実に気持ちよく曲がるのである。
上体を起こし、快適なシートに腰を下ろして、リラックスして走っている。
それなのに、カーブではまるでセパハンのスポーツバイクに乗っているかのような楽しさがある。
何だこの二面性は。
峠道を攻めるためだけのバイクではない。
でも、コーナリングはきっちり楽しい。
バイクを傾けていく感覚が自然で、次のカーブが楽しみになる。
あまりにも快適なので、走りの面白さが犠牲になっているのではないかと心配していたが、そんなことはなかった。
ラクして走っているのに、ちゃんとスポーツしている。
これ、ちょっとズルくないですか?
電子装備は大盤振る舞い! でも言いたいこともある
SV-7GXにはスズキドライブモードセレクターが搭載され、A・B・Cの3つのモードを選択できる。
さらにトラクションコントロールも3段階とOFFを選択可能だ。
試乗中に切り替えてみたところ、AとBの差はそれほど大きく感じなかった。
一方のCモードは明確に穏やか。
アクセル操作に対する反応が抑えられ、かなり優しく走らせることができる。
雨の日や、慣れない道での走行にはありがたいだろう。
そして、上下クイックシフター。
筆者は以前、スズキのハヤブサでもクイックシフターを体験しているが、今回も非常にスムーズだった。
ただし、低回転域で1速から2速へシフトアップすると、やや大きめのショックを感じる場面もあった。
これは個人的な好みだが、3速に上げるくらいまではクラッチを使い、そこからクイックシフターに任せるのが気持ちよかった。
それにしても、この価格で上下クイックシフターまで標準装備とは。
CB1000Fに乗る筆者としては、少々複雑な心境である。
スクリーンは3段階調整。でも……
ウインドスクリーンは3段階に高さを調整できる。
おお、便利!
と思ったのだが、調整には工具が必要になる。
つまり、走行中のちょっとした休憩で、気軽に高さを変更するような仕組みではない。
ツーリング先で風の当たり具合を変えたいと思ったときに、工具を取り出して調整するかと聞かれれば、正直ちょっと面倒くさい。
ここはもう少し工夫してほしかった。
せっかく快適性を追求したバイクなのだから、スクリーンの調整もワンタッチでできたら、さらに素晴らしかったと思う。
ナビは正直、スマートモニター派です
メーターは4.2インチのフルカラーTFT液晶。
CB1000Fのメーターに慣れていると、少し小さく感じたが、必要な情報は十分に表示される。
そしてスズキがかなりアピールしていたのが、スマートフォンと連携したターンバイターン方式のナビゲーション機能だ。
曲がる場所などを案内してくれる仕組みで、スマートフォンを直接ハンドルに取り付けなくてもナビが使える。
便利なのは分かる。
分かるのだが……
すみません。私、この方式のナビがあまり好きじゃないんです。
地図全体を見ながら、これから走る道や周辺の地形を確認したい。
そんな筆者にとって、進行方向を指示してくれるだけのナビゲーションは、どうしても物足りない。
ここは素直にスマートモニターを導入した方が、個人的にはストレスなく使えると思った。
もちろん、このあたりは完全に好みの問題だ。
キャリアもナックルカバーも標準? スズキさん、価格設定を間違えてません?
さて、ここまで乗ってみて、改めて装備を振り返ってみる。
USB-C電源が付いている。
ナックルカバーが付いている。
リアキャリアも付いている。
上下クイックシフターも付いている。
電子制御も充実している。
そして、税込113万3,000円から。
……いやいやいや。
これ、装備を後から買い足すことを考えたら、相当な大盤振る舞いじゃないか?
ツーリング好きなライダーにとって、リアキャリアやナックルカバーは実にありがたい装備だ。
最初から付いていれば、納車した翌日から荷物を積んで旅に出られる。
しかも、燃料タンクは17L。
カタログ上のWMTCモード燃費は24.6km/Lだから、単純計算では400kmを超える航続距離になる。
もちろん実際の航続距離は走行条件によって変わるし、タンクを空になるまで使うわけにもいかないが、ロングツーリングを想定した設計であることがよく分かる。
ただ速いバイクではない。
ただ快適なバイクでもない。
「バイクに乗って、どこか遠くへ行く」という行為のために、必要なものを最初からそろえてしまったバイクなのである。
恐るべし、スズキ。
これは完全におじさんホイホイである
試乗を終えて、改めてSV-7GXを眺めた。
速さだけを求めるなら、ほかにも選択肢はある。
エンジンの滑らかさではCB1000Fの4気筒が恋しくなる場面もあった。
スクリーンの調整やナビなど、もう少し頑張ってほしい部分だってある。
だがしかし。
全部ひっくるめて、私はこのSV-7GXが大好きになってしまった。
なんというか、あまりにも実用的なのである。
若い頃は、何馬力だとか、最高速がどうだとか、サーキットで何秒出るとか、そういうことに胸を躍らせていた。
もちろん、今だって高性能なバイクは大好きだ。
でも、50歳になった今、休日にバイクへ求めるものが少し変わってきた。
朝早く出発して、知らない道を走る。
おいしいものを食べる。
気になる景色があったら立ち寄る。
そして、夕方になってもまだ走り足りない。
そんなツーリングがしたいのである。
SV-7GXは、まさにそんなおじさんのために作られたようなバイクだった。
虚栄やロマンよりも、実を取る。
でも、実用性ばかりで退屈なバイクにはしたくない。
ツーリング中毒者、いわゆる「距離ガバ」の皆様にとっては、たまらない一台だと思う。
最後に SV-7GXを検討している皆様にひとこと
このバイクには、ちょっと危険な魅力がある。
それは、あまりにも快適で、あまりにも走ることが楽しいということだ。
朝から晩まで走り続けたくなる。
土曜日も日曜日も乗りたい。
なんなら平日も乗りたい。
春も夏も秋も冬も、できることなら365日バイクに乗っていたい。
そんなライダーの願望を、本気で叶えようとしているように感じた。
そして、ふと思った。
もしこのSV-7GXを買ってしまったら、どうなるだろう。
おそらく私は、毎週末どこかへ出かける理由を探すようになる。
「ちょっと箱根まで」
「今日は富士山を一周するだけ」
「いや、せっかくだから伊豆まで行こうかな」
そんなことを言いながら、朝から晩まで走り回る自分の姿が容易に想像できる。
……これはまずい。
買ってしまったら、家族不和になりかねない。
それくらい、休日を全部バイクに捧げてしまいそうな一台なのだ。
先日試乗したナポレオンボブ250は、バイクに乗るカッコよさを改めて教えてくれた。
対してSV-7GXは、バイクに乗り続けることの楽しさを教えてくれた。
どちらも素晴らしい。
だが、方向性はまるで違う。
そして今回、SV-7GXに乗って確信したことがある。
バイクを楽しむのに、必ずしも1000ccも100馬力も必要ない。
ちょうどいいパワー、ちょうどいい車体、そして十分すぎる装備。
気がつけば遠くまで走っていて、まだ帰りたくないと思ってしまう。
そんなバイクが、実は一番恐ろしいのかもしれない。
スズキさん、お願いです。もう少し家に帰りたくなるバイクを作ってください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が少しでも皆様のバイクライフの潤いになりましたら嬉しいです。
stonemaker003でした!
※本記事はメーカー主催試乗会での約1時間の試乗をもとにした個人の感想です。車両の仕様・価格は2026年10月時点の国内向けメーカー公表値を参照しています。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/604070/
SV-7GX これはおじさんをダメにするバイクだ! 新型スズキSV-7GX試乗記【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/604070/604123/

















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