2026年10月29日、新型パジェロが国内正式発表された。そのパジェロが、ラリーの舞台に帰ってくる。都内で実施された新型パジェロ記者発表会にて、三菱自動車のキーパーソン3人が報道陣の取材に応じた。チーム三菱ラリーアートの増岡浩総監督は、新型パジェロでのモータースポーツ復帰に強い意欲を表明。岸浦恵介社長も、まずは来年のアジアクロスカントリーラリー(AXCR)にパジェロで参戦し、3連覇を果たしたいと語った。ダカールで12勝を挙げた名門の復活劇は、まだ序章にすぎないのかもしれない。3人の言葉から、パジェロの次の一手を読み解く。
文:ベストカーWeb編集部、画像:ベストカー編集部、三菱自動車
【画像ギャラリー】【新型パジェロ発表】「こんな運のいい社長は他にいない」万感の思いを独白!! 三菱キーパーソン3人が語った新型パジェロ「次の一手」(20枚)画像ギャラリー22歳からパジェロと歩んだ男が再びラリーへ
最初に話を聞いたのは、チーム三菱ラリーアートの増岡浩総監督だ。増岡氏は新型パジェロのモータースポーツ参戦に関して記者から問われ、「自分は22歳の頃から、もう40年以上前から、苦しいときも悲しいときも、パジェロをパートナーとしてやってきた」と振り返った。だからこそ新型パジェロが復活し、再びモータースポーツに挑めることには万感の思いがあるという。
増岡氏といえば、パジェロでパリ・ダカールラリーを戦い、日本人として初めて総合優勝2連覇を成し遂げた人物。パジェロ自身もダカールで通算12勝、2001年から2007年にかけては7連覇という金字塔を打ち立てている。”パジェロ=ラリー”というイメージは、まさにこの時代に築かれたものだ。
そのパジェロが、国内向けの生産終了から約7年を経て戻ってきた。増岡氏にとって、新型の登場は単なる新車発表ではない。再び相棒と戦える日が来た、ということなのだ。
新型パジェロによるモータースポーツに関して、当面の目標として増岡氏が挙げたのが、来年(2027年)のアジアクロスカントリーラリー(AXCR)だ。東南アジアを舞台に毎年開催される国際クロスカントリーラリーで、チーム三菱ラリーアートはピックアップトラックのトライトンで2025年、2026年と総合優勝を重ね、現在2連覇中。2026年は田口勝彦選手が総合優勝を果たしている。
チームには田口選手と、タイのチャヤポン選手という、チャンピオン経験を持つ2人のドライバーがいる。増岡氏はこれを「三菱チームの強み」としたうえで、新型パジェロで3連覇を目指したいと語った。岸浦社長も、まずは来年のAXCRにパジェロとして参戦し、3連覇を果たしたいという考えを示している。
気になるのは、ピックアップトラックのトライトンからSUVのパジェロへとベース車両が替わることだ。新型パジェロはこれまで連覇してきたトライトンに比べて車重がやや重い。ただし、増岡氏によれば、パジェロはトライトンよりも全長が短いため、そこはハンドリングでカバーできるだろうと自信を見せた。
市販車同士で比べると、新型パジェロの全長は4920mm、ホイールベースは2870mm。日本仕様のトライトン(全長5360mm、ホイールベース3130mm)より全長で約44cm、ホイールベースで約26cm短い。タイトな林道や連続するコーナーでは、この取り回しのよさが武器になるはず。重さの不利を、身のこなしで取り返す。ラリーの現場を知り尽くした総監督らしい見立てだろう。
さらに増岡氏は、「遠からず発表できると思うが」と前置きしつつ、世界規模の海外ラリーに参戦し、夢として「世界一を目指したい」とも語った。AXCRのその先に、どの舞台を見据えているのか。パジェロと”世界一”という言葉が並べば、ダカールを思い浮かべるファンも多いはずだ。続報を待ちたい。

シリーズで復活、”パジェロミニ”再来もあるか!?
国内発表を迎えたこの日に記者からの質疑応答に応えた三菱自動車・岸浦恵介社長は、「高級SUVは世界的な激戦区だ」としたうえで、パジェロとして独自のポジションを確立したいと説明。そのうえで、すでに示しているとおり「パジェロはシリーズで復活する」とし、今回の新型だけでなく、コンパクトカー、さらに小さいクルマを出していく考えを示した。パジェロシリーズとしての波及効果にも期待しているという。
“さらに小さいパジェロ”と聞いて、クルマ好きが真っ先に思い浮かべるのはパジェロミニだろう。1994年に登場し、本格4WDの走りを軽自動車規格に凝縮したモデルとして人気を集めた。具体的な車名や車格は明かされていないが、パジェロの名を冠した小さなクルマが再び登場するとなれば、その再来を期待する声が上がるのは当然だ。
そして、いまの三菱にはこの構想を後押しする成功例がある。デリカミニだ。軽自動車でありながら、上級グレードにオプションを重ねると300万円近くに達する。それでも2023年の発売時には、予約開始から約半月で約4000台を受注する好スタートを切り、現在も好調な販売をキープしている三菱の大黒柱。名門の名前と本格的な道具感があれば、軽でも高価格帯でも選ばれる。デリカミニはそれを証明してみせた。
デリカの名を軽に広げて成功した手法を、パジェロでも再現できるか。約800万円のフラッグシップを頂点に、コンパクト、さらに小さいモデルへと広がるパジェロシリーズ。その裾野が見えてくれば、新型パジェロの復活は、三菱全体の大攻勢の始まりになるかもしれない。
岸浦社長は、パジェロにまつわる個人的な思い出も明かした。1993年に新入社員として入社した当時、「新型パジェロが欲しかったものの手が届かず、RVRスポーツギアを購入した」という。RVRスポーツギア、名車ですね。それでも当時の先輩が乗っていたパジェロショートでスキーに連れて行ってもらい、どんな場所でも走れる走破性能に感動したそうだ。うーん、いい話。
そして新型パジェロは、2026年4月に岸浦氏が三菱自動車の代表取締役社長に就任してから初めての新型車となる。社長は、就任後初の新型車がパジェロであることについて、「こんなに運のいい社長は他にいない」と語った。新型の予約受注は約5500台と好調だが、販売目標の引き上げにはこだわらず、長く堅調に売れるクルマとしてしっかり育てていきたいという。
約800万円のパジェロを売るための”特別な販売店”
新型パジェロに関しては、もうひとつ気になるトピックスがある。それはワールドプレミアの際に三菱自動車から明かされた、三菱の販売店改革の話。パジェロのような高額車を扱うための、特別な訓練を受けた営業マンの育成と、特別な演出を施した販売店を立ち上げるという。
当初は「三菱版のレクサスのような店舗とブランドを立ち上げるのか?」と思ったが、取材を進めるとどうもそうではないらしい。「高額車」というよりは「パジェロシリーズの販売を最大化するためにブランドに特化した販売店」を用意しているようだ。現時点ではまだ調整中で、正式には何も発表できないそうだが、首都圏近郊にそういった販売店が用意されるという。うーん、楽しみ。
またこの日、営業を担当する五十嵐京矢副社長も記者の囲み取材に応じた。約800万円に迫るクルマを売った経験は三菱の販売店にとって決して多くなく、「現場は大変ではないか」という記者の質問に対し、「いまの三菱自動車は転機にある」と五十嵐副社長は応じた。
五十嵐副社長が目指すのは、「(高級車を売る体制というよりも)パジェロをきちんと売れる販売体制だ」という。価格にふさわしい性能と車格を備えた商品を、どうすればお客様へきちんと伝え、売っていけるのか。その体制づくりを着々と進めているとした。三菱の今期の決算はかなり期待できそう。
ラリーでブランドを磨き、シリーズで裾野を広げ、販売店で価値を伝える。3人のキーパーソンの言葉をつなぐと、三菱がパジェロに託す役割の大きさが見えてくる。新型パジェロは12月17日に発売される。
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