三菱自動車が2020年4~6月期の連結決算を発表した席で、これから投入する新型車と、撤退や縮小などを含めた方針を発表。その内容はなかなか厳しいものだった。
かつてはパジェロ、ランエボなど花形がいた三菱だが、現在はデリカD:5など売れているクルマはあるものの、メーカーのイメージリーダーとなれるほどのクルマが見当たらない状況だ。
また、子会社 パジェロ製造(岐阜県)の工場を閉鎖し他車種の生産は岡崎製作所(愛知県)に移管、環境対応の遅れから欧州での販売から実質撤退となるなど、厳しいニュースが続いている。日産と資本提携し、アライアンスに入った三菱だが、新興国市場に望みをかける状況だ。
三菱にとって重要な旗艦車だったパジェロが消滅した理由な何なのか? また復活はあるのか? 現在のモデルや発表された新型で三菱の復活を支えられるモデルはあるのか? などについて、自動車評論家の渡辺陽一郎氏が考察していく。
文/渡辺陽一郎
写真/MITSUBISHI、編集部
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■三菱のイメージリーダーとして君臨 一時代を築いた名車パジェロ
かつての「パジェロ」は、三菱の主力車種だった。初代モデルは1982年に登場して、上質感や快適な乗り心地によりヒット作になっている。トヨタ「ランドクルーザー」、日産「パトロール/サファリ」などは、もともと悪路向けの作業車だったが、パジェロの登場以降は刺激を受けて各部の質感を高めた。
その結果、悪路向けのオフロードSUVは、全般的に販売が好調でブームになった。1991年に登場した2代目パジェロは、1992年に1カ月平均で約7000台が販売され、今の日産「ノート」やトヨタ「シエンタ」と同等の売れ行きになった。
しかし1990年代の中盤以降になると、パジェロのような後輪駆動ベースのオフロードSUVは、次第に売れ行きを下げた。トヨタ「RAV4」、ホンダ「CR-V」、日産「エクストレイル」など、前輪駆動ベースのシティ派SUVが増えたからだ。
これらのSUVは、居住性、乗降性、小回りの利き、走行安定性、燃費などが優れている。いわばワゴンに近いSUVだから、日常的に使いやすい。悪路の走破力はパジェロなどのオフロードSUVに劣るが、日本では雪道を走破できれば十分だ。シティ派でも不満はなく、パジェロのようなオフロードSUVはユーザーを奪われた。
また三菱も前輪駆動ベースのシティ派SUVとして、2001年に「エアトレック」、2005年には「初代(先代)アウトランダー」を発売した。この影響もあり、パジェロは2006年に最終型となる4代目にフルモデルチェンジしたが、売れ行きは伸び悩んだ。
2010年(暦年)における三菱製SUVの国内登録台数は、アウトランダーが8162台(1カ月平均で680台)、デリカD:5は1万6852台(1404台)であったが、パジェロは2733台(228台)にとどまった。
このあと、パジェロはさらに売れ行きを下げて、2019年8月に生産を終えた。2018年の国内登録台数は、1カ月平均で50~60台だった。4代目パジェロは、販売を落としながら、10年以上にわたって生産を続けたことにむしろ注目すべきだろう。パジェロは三菱の基幹車種だから、簡単には廃止しなかった。
海外向けのパジェロは2019年8月以降も生産を続けたが、三菱の「2020-2022年度中期経営計画」には、パジェロ製造株式会社の生産停止が盛り込まれた。そのためにパジェロは、海外を含めて40年近い歴史に終止符を打つ。
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