毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ グレイス(2014-2020)をご紹介します。
【画像ギャラリー】ホンダの「優美なる」5ナンバーセダン!!! グレイスの画像をギャラリーでチェック!!!
文:伊達軍曹/写真:HONDA
■フィットベース、希少な日本のコンパクト4ドアセダン
5ナンバーサイズのセダンでありながらアッパーミドルクラス並みの居住性を誇り、なおかつ見目麗しいフォルムと悪くない操安性、そしてカタログ値34.4km/Lという低燃費を誇った意欲作。
だがジャンル自体の明らかな衰退にはあらがえず、あえなく1代限りで販売終了となったコンパクトセダン。それが、ホンダ グレイスです。
2014年12月に発売されたホンダ グレイスは、アジア・オセアニア向けに販売されていた4代目シティの日本向けバージョン。
ただ、アジア・オセアニア向けの4代目シティがガソリンまたはディーゼルエンジンを搭載しているのに対し、グレイスはハイブリッドです。
具体的には1.5Lのアトキンソンサイクルエンジンに、モーターを内蔵した7速DCTを組み合わせた「SPORT HYBRID i-DCD」を採用しました。
システム最高出力は137psで、SPORT HYBRID i-DCDは走行状況に応じて3つの走行モードの中から最も効率のいいモードを自動的に選択。
その結果、冒頭で記したように34.4km/Lという良好な燃費性能を発揮しました(※FFのハイブリッドDXとハイブリッドLXの場合)。
プラットフォームは先代フィットと共通ですが、ホイールベースを70mm延長することで、後席の足元スペースは1クラス上の「シビック」を上回り、2クラス上のアコード ハイブリッドに迫るスペースが確保されています。
また居住スペースだけでなく室内の質感や乗り心地、走行性能などについてもホンダは「上級セダン並みを目指した」としており、実際グレイスは、それをある程度達成していたように思えます。
2015年6月には最高出力132psの1.5L直4直噴ガソリンエンジン車を追加し、2017年7月にはマイナーチェンジで内外装を少々変更するとともに、運転支援システム「Honda SENSING」を標準またはオプションで設定するなどのテコ入れも行いました。
しかしグレイスの販売台数は依然として「低空飛行」が続き、その結果ホンダは今年7月、グレイスの生産と販売を終了。
ホンダの国内向けラインナップから再び、「5ナンバーセダン」が消滅することになりました。
コメント
コメントの使い方