トヨタへ供給のライズ&ルーミーも大人気! ダイハツの小型車作りとヒット車の秘策

 ダイハツが企画・製造し、トヨタへOEM供給しているライズ(ダイハツ版はロッキー)とルーミー(ダイハツ版はトール)が大ヒットしている。

 新車販売台数を見ると、ライズは2020年1月1位、2月1位、3月4位、4月7位、5月2位、6月1位、7月2位、8月2位、9月3位とまさにバカ売れ状態。

 ルーミーも2016年11月の発売と約4年が経過しているのにもかかわらず、2020年の1~9月の新車販売台数ランキングでは7位~8位をキープしている。

 一方、本家ダイハツ車の2020年1~9月の新車販売台数ランキングでは、ロッキーが20位~24位を行ったり来たり。トールも32位~40位と、OEM供給したトヨタ車の約3分の1~5分の1程度にとどまっている。

 そこで、ダイハツが企画、製造した小型車はなぜヒットしているのか? ダイハツのクルマ作りは凄いのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。


文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ ダイハツ ベストカーweb編集部

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ダイハツが小型車を作ると必ずヒットする?

左が本家ダイハツロッキー、右はダイハツがトヨタへOEM供給しているトヨタライズ
2015年9月15日にマイナーチェンジしたトヨタルーミー
ルーミーと同じくダイハツトールも2020年9月15日にマイナーチェンジが行われた

 トヨタは国内でも最大の販売規模を誇るメーカーだ。2020年度上半期(2020年4~9月)には、小型/普通車とOEM軽自動車を合計すると、国内で約65万台を販売した。

 2位のスズキと3位のホンダは僅差で、両社とも約28万台だから、1位のトヨタとの間には2倍以上の開きがある。

 そして2020年度上半期に国内で販売された新車のうち、軽自動車が38%を占めた。したがって、軽自動車をほとんど扱わないトヨタは、小型/普通車市場におけるシェアが特に高い。2020年度上半期に新車として売られた小型/普通車の50%がトヨタ車であった。

 そうなると小型/普通車登録台数ランキングの上位にも、トヨタ車が数多く並ぶ。2020年度上半期は、1位:ヤリス+ヤリスクロス、2位:ライズ、3位:カローラシリーズ、4位:フィット、5位:アルファード、6位:ルーミーと続く。上位6車の内、フィット以外はすべてトヨタ車だ。

 そして2位のライズと6位のルーミーは、ダイハツが企画と製造を受け持つOEM車になる。正確には2020年9月15日のマイナーチェンジで、兄弟車のタンクが廃止となり、ルーミー1本となった。尚、スバルへのOEM供給車、ジャスティは継続販売している。

 トヨタ製のヤリス+ヤリスクロスとカローラシリーズは、複数のボディタイプで成り立つが、ライズとルーミーは1種類だ。ダイハツ製OEM車は、少ないバリエーションで効率良く売れ行きを伸ばした。

 ちなみに10年前になる2010年度上半期(2010年4~9月)の小型/普通車登録台数ランキングは、1位がプリウス、2位はフィット、3位はヴィッツであった。ダイハツ製OEM車ではパッソが6位に入った。

 この時に売られていたパッソは2代目で、発売は2010年2月だから、2010年度上半期には新型車であった。それでも6位だから、ライズが2位、ルーミーも6位に入る現在のほうが、ダイハツ製OEM車の売れ行きは好調だ。

2010年2月にデビューした2代目トヨタパッソ/ダイハツブーン
安っぽいと酷評された2代目パッソのコクピット

 近年のダイハツのクルマ作りを振り返ると、2010年に発売された2代目パッソは、内装の質、収納設備、走り、乗り心地などに不満があった。

 インパネの作りやシートの座り心地は、率直にいえば安っぽく、フタの付いた収納設備もほとんどない。重要書類の車検証を荷室のポケットに突っ込んだ。

 運転感覚も同様で、乗り心地が粗い。特にベーシックな13インチタイヤ装着車は、操舵に対する車両の動きが曖昧で、路上駐車する車両を避ける時にも気を使った。操舵した後、クルマの動きを見極めながら、操舵角を修正する必要もあった。

 こういった事情で、パッソは新型車だった2010年度上半期も、販売面でフィットやヴィッツを抜けなかった。

 このクルマ作りの背景にあったのは、2008年後半に発生したリーマンショックによる世界的な景気の悪化だ。

 2010年代前半に発売されたコンパクトカーは、3代目の先代ヴィッツ、4代目の現行マーチ(発売は両車とも2010年)、現行ミラージュ(発売は2012年)など、全般的に質感を下げた。パッソとダイハツ版のブーンは、この代表であった。

軽自動車で培ってきたノウハウでスモールカー全体のレベルアップを図る!

2016年4月にフルモデルチェンジした現行型パッソ。写真は2018年10月にマイナーチェンジした現行モデル

 そのために3代目の現行ブーン&パッソを開発する時に、ダイハツは慎重になって反省も行った。2016年4月に現行ブーン&パッソが発売された時の広報資料には、ダイハツによる次の記述が見られる。

 「ブーン&パッソなどのいわゆるリッターカーは、存在価値が問われる状況になっていた」。

 「従来のブーン&パッソのユーザーや小型車の購入意向があるユーザーに従来車の評価を尋ねたところ、取り回し性の良さは一定の評価を得ているものの、室内空間の広さや基本性能について厳しい意見があった」。

 「国内ユーザーの声に耳を傾け、ダイハツが培ってきた(軽自動車の)ノウハウを小型車に展開することで、スモールカー全体のレベルアップを図る」。

 以上を要約すれば、従来の2代目ブーン&パッソは、基本性能などに関する顧客の評価が低かった。

 存在価値が問われる状況でもあったから、3代目は軽自動車のノウハウを使って商品力を高めた。従来はコンパクトカーのノウハウを使って、軽自動車をレベルアップさせたものだが、今は逆の状況になったと述べている。

 この2016年のブーン&パッソに込められた切実な想いが、ダイハツのコンパクトカー作りを変えた。

トヨタが口を出すよりも、すべてダイハツに任せたほうがうまくいく?

 先に挙げた3代目ブーン&パッソの広報資料には「従来のトヨタ自動車との共同開発から、ダイハツが企画・開発から生産までのすべてを担うOEM化へと協業体制を一歩前進させた」とも書かれている。

 この文言を素直に解釈すれば、トヨタとの共同開発よりも、ダイハツがすべて担当するOEM車にしたほうが、協業体制が前進する、つまり優れた商品を生み出せるという意味になる。

 結構辛辣で「トヨタが口を出すより、ダイハツにすべてを任せたほうが、良いクルマを開発できて互いの利益になる」と述べているわけだ。

 このダイハツのコンパクトカー作りを明らかな成果として示したのが、2019年11月に発売されたロッキー&ライズであった。

稀にみる大ヒット作トヨタライズとルーミー

2019年11月に発売したライズは、2020年1月~9月の新車販売台数では、1位3回、2位3回と稀にみる大ヒット作となった
ダイハツの新型プラットフォーム、DNGA。ダイハツは小さいクルマ作りの知見を最大に活かし、軽自動車から登録車へDNGAを拡大していった。軽自動車ならではの制約のなかで最大の機能や性能を求めていくやりかたを登録車にも適応させていったのだ

 プラットフォームはDNGAの考え方に基づく新しいタイプになり、5ナンバーサイズの貴重なコンパクトSUVでありながら、走行安定性や居住性も満足できる。

 その結果、OEM車のライズは、2020年1~6月の登録台数ランキングで1位になった。2020年度上半期も、ヤリスに次いで2位に入っている。

ルーミーはなぜ売れたのか?

トヨタルーミーカスタム。2020年9月15日のマイナーチェンジモデル
2020年9月15日のマイナーチェンジで廃止されたルーミーの兄弟車、トヨタタンク
本家のダイハツトール。2020年9月15日のマイナーチェンジモデル

 一方、ルーミーの高人気は、事情が少し異なる。発売は2016年11月だから、現行ブーン&パッソが登場した約半年後だ。DNGAに基づく設計ではない。

 ルーミーの開発を開始したのは、開発者によると2014年だ。この年には先代ハスラーが好調に売れて、スズキとダイハツの販売合戦が活発化した。

 ホンダN-BOXも売れ行きを伸ばし、スズキとダイハツは脅威を感じ始めていた。その結果、軽自動車市場は激しい販売競争に至り、2014年には、国内の新車市場における軽自動車比率が40%を超えている(2019年は37%)。販売会社が在庫車を大量に届け出して、販売台数を粉飾することにも力を入れた。

 軽自動車が好調に売れると、小型車からの乗り替えも進む。小型車を中心に扱うトヨタは、急増する軽自動車販売を抑制することも視野に入れ、新たなコンパクトカーを企画した。それがルーミー系姉妹車であった。

 当時から軽自動車の売れ筋は、N-BOX、タント、スペーシアだったから、これらに対抗するルーミー系姉妹車も、全高が1700mmを上回り、席のドアをスライド式にしている。

 問題は開発期間だ。急増する軽自動車に対抗するには、迅速に開発せねばならない。DNGAの完成を待つ余裕はなく、ホイールベースも含めて、現行ブーン&パッソから流用した。

 エンジンも同様で、ダイハツは1.3Lも用意するが設計は古い。そこでブーン&パッソの1Lを使ってターボを加えた。

 開発の開始が2014年で、発売は2016年だから、単純に計算すると開発期間はわずか2年間だ。

 ブーン&パッソの車両重量は、2WDが910kgだが、ルーミー系姉妹車は最も軽いグレードでも1080kgになる。170kg重く、全高も210mm高いから、ルーミー系姉妹車は開発期間の短さもあって走行安定性や乗り心地に無理が生じた。

 動力性能も不足気味で、新開発のターボは2000回転前後のノイズが目立った。開発者は「ターボはノイズを抑えるために手を尽くしたが、最終的に時間切れになった」と語っている。

 この慌ただしい開発事情は、ロッキー&ライズと大きく異なるが、全長が3700mm前後で後席にスライドドアを備えた背の高いコンパクトカーは貴重な存在だ。

 ライバル車は、スズキソリオとOEM車の三菱デリカD:2のみになる。同じトヨタのポルテ&スペイドも背の高いコンパクトカーだが、左側は1枚のスライドドア、右側は2枚の横開きドアだから使い勝手とボディスタイルが違う。

 そしてルーミー系姉妹車は、荷室と収納設備を工夫した。荷室は広く、汚れ防止シートも装着したので、自転車を運ぶ時も汚れを簡単に落とせる。インパネには大型カップホルダー、脱着式ダストボックスなどを採用した。

 走りと乗り心地はいま一歩だったが、運転のしやすさと日常的な使いやすさを両立させて、特にルーミーは人気車になった。

 この商品開発は、3代目ブーン&パッソの広報資料に見られた「国内ユーザーの声に耳を傾け、ダイハツが培ってきた(軽自動車の)ノウハウを小型車に展開する」手法そのものだ。

 ちなみにロッキー&ライズも、全長が4m以下のコンパクトSUVでありながら、後席と荷室は相応に広い。軽自動車作りのノウハウが生かされ、大人4名が窮屈に感じることなく乗車できる。

競争の激しい軽自動車作りのノウハウを小型車に展開したのが成功した理由

本家ダイハツロッキー。販売台数はライズの2分の1から3分の1程度

 以上のようにトヨタのダイハツ製OEM車が好調に売れる理由は、「軽自動車のノウハウを小型車に展開する」という、ダイハツならではのクルマ作りを行ったからだ。

 背景には競争の激しい軽自動車の開発を通じて、ダイハツが小さなクルマ作りを磨いてきた実績もある。

 トヨタとの共同開発では、ダイハツの良さを十分に発揮できなかったが、OEM車になったことで商品力が向上した。

 特に2016年にダイハツがトヨタの100%出資に基づく完全子会社になってからは、価格帯を含めて、トヨタ製とダイハツ製で明確に線引きされるようになった。

 コンパクトカーの場合、1Lエンジンを搭載するパッソの売れ筋価格帯は130万~150万円だ。トヨタ製のヤリスは1Lエンジンも用意するが、主力は1.5Lで、160万~190万円が売れ筋になる。ハイブリッドは200万~230万円だから、パッソとヤリスでは価格帯がほとんど重複しない。

 コンパクトSUVも同様だ。2WDの場合、ダイハツが製造するライズの売れ筋価格帯は190万~206万円だ。トヨタ製ヤリスクロスは202万~221万円。ハイブリッドは240万~260万円に高まる。これもライズが安く、ヤリスクロスはその上の価格帯に位置する。

 軽自動車を中心に手がけてきたダイハツは、コスト低減が得意だから、コンパクトカーのなかでも価格の安い車種を扱う。トヨタとの役割分担が明確になり、合理性を高めた。

 今後のダイハツは、DNGAをベースに、トヨタとは視点の異なる割安なコンパクトカーを開発するだろう。まずはDNGAを使った次期型のルーミー系姉妹車やブーン&パッソが登場して、その後に空間効率の優れたSUVなども加わるに違いない。

 かつてモータースポーツ向けに、小排気量ターボのストーリア/ブーンX4があったが、とても楽しいクルマであった。

 クルマ好きとしては、ロッキーのみに設定されるプレミアムのような、OEMのトヨタ車とは違うダイハツならではのバリエーションも欲しい。

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