「最近のクルマは重くてけしからん!!」――。実際に、1998年式のスカイラインR34型の車両重量は1450 kgだったのに対し、2019年式のV37型は1700 kgと、約250kg(約2割)も増えています。「マーチ」も、1992年式のK11型は750kg、2010年式のK13型は940kgと、190kg(約2.5割)も増えています。
この理由は、インテリアの居住性改善と衝突安全性向上のためのボディサイズ拡大が主要因なのはご存じの通り。商品力向上のためには必須の対策であり、自動車メーカー各社もやむを得ず、大型化を選んできました。
しかし実は、「クルマは軽いことこそ正義!!」というのは、100%正解とは言えず、軽いクルマは諦めなければならない性能があることをご存じでしょうか。今回は、クルマが軽いことのメリットとデメリットについて考えていきます。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、HONDA、NISSAN、ベストカーWEB編集部
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メリットは「燃費」「ハンドリング」「ブレーキング」
クルマが軽ければ、同じ力(タイヤにかかる駆動力もしくは制動力)でも、動作は軽やかになり、「加速の良さ」や、「ブレーキの効きの良さ」につながります。また「燃費」も、所望のスピードまで少ない力で、容易に加速ができるため、有利になります。
クルマは力を受けて運動する物体ですので、運動方程式「Ma=F」を用いて考えれば、お分かりいただけると思います。Mはクルマの質量、aは加速度(動きやすさ)、Fは必要な力を表します。
また、ボディの大きさ(正確には前面投影面積)に比例する空気抵抗も、定速走行中の燃費に関わってきますので、軽量かつ小型のクルマならば、より燃費性能は良い傾向となります。
そして、軽いクルマは、クルマのヨーイング(回転挙動)の動きが軽やかになり、ハンドリングがよくなります。さらにいうと、この車両の重心点周りの動きやすさを表す数値(ヨーイング慣性モーメント)は、クルマの重量も重要ですが、クルマのどこに重量物があるかも、とても重要です。
例えば、エンジンルームに重いシステムが積まれているハイブリッド車の場合、車両重心から遠いところに重量物があるため、重心点周りの動きやすさを表す数値は大きくなり、鈍調な回頭性となってしまいます。
同じだけの回頭性を求めるならば、より大きなコーナリングフォースを出せるタイヤへと仕様変更をする必要があります。コーナリングフォースを出せるタイヤは、転がり抵抗が増える傾向にあり、これは、燃費の悪化につながってしまいます。
乗り心地も改善します。クルマを軽くすることで、スタビライザーの径を下げるからです。さらにいいことに、鉄の棒であるスタビ(中には中空のスタビもあります)の径を小さくすれば、更なる軽量化ができてしまいます。
このように、クルマは、軽いことによるメリットがとても大きく、「軽いこそ正義」と言いたくなるところなのですが、軽いクルマは諦めなければならない性能があることも、理解しておかなければなりません。
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