特報! スズキに20年ぶりのGPタイトルをもたらしたGSX-RRの速攻試乗レポートが届いた!!
開発ライダーを務める青木宣篤がMotoGPマシンGSX-RRを走らせて感じたのは、地道な開発をコツコツと続けたスズキの姿勢。300ps級マシンからあふれ出たのは、生マジメなメーカーの地味ぃ~な凄味だ!
【画像ギャラリー】2020MotoGPチャンピオンマシン、スズキGSX-RRの異次元走行シーン
まとめ/高橋剛、写真/SUZUKI
ジャジャ馬でもモンスターマシンでもない
2020年MotoGPのチャンピオンマシン、スズキGSX-RRに乗りました。世界最高峰の二輪レースで頂点に立ったマシンですよ!
猛烈にエキサイティングで、ビックリマークがいくつも並ぶような激しい記事になるんじゃないかと期待する方も多いのではないでしょうか。でも、最初に言っておきます。ビックリするほど静かで穏やかな記事です(笑)。
「チャンピオン獲りたてホヤホヤのMotoGPマシンに乗ったって、アナタ何者なの?」とお思いでしょう。ワタシ青木宣篤は、スズキMotoGPマシンの開発ライダーを務めさせてもらっています。今はどのメーカーもヨーロッパ拠点のテストチームが主体となってマシン開発を進めており、ワタシは必要に応じてテスト走行します。
今回はテストというより試乗レベルでしたが、それでもGSX-RRがチャンピオンマシンとなった、その片鱗を窺い知ることはできました。ただし、「!!!」という驚きはありませんでしたが……。
今や300psに手が届こうとしているMotoGPマシン。1000cc並列4気筒エンジンを搭載するGSX-RRも馬力は公表していないが、それ級のパワーを叩き出しています。約300ps/Lともなれば、なかなかのモノですよね。
MotoGPマシンの最低重量は157kgだから、パワーウエイトレシオはおおよそ0.5kg/ps。GSX-RRも言うまでもなくめちゃくちゃ速いし、ストレートでの怒濤の加速力は6速のトップエンドまでとどまることを知りません。
でも、GSX-RRは「扱いづらいジャジャ馬」ではありません。いわゆるモンスターマシンという印象はまったくない。中級ぐらいの腕前を持っている一般ライダーなら、どなたでも乗れるのではないかと思います。かなり気軽に「乗ってみる~?」とオススメできてしまう。これ決して大げさではなく、ホントです。今これを読んでいるアナタも、きっと乗れます(中級ぐらいなら)。
実際のところ、スズキはGSX-RRの開発にあたって、エンジンも車体もずっと「乗りやすさ」を追求してきました。エンジンでいえば、ピークパワーを求めることはもちろん、アクセルの開け始めから中間域の過渡特性を扱いやすくすることに力を注いできました。
サーキット走行時のアクセル全開時間は、コースにもよるがおおよそ10%程度。と、いうことはつまり、残り9割は全開じゃないことになります。ならばどこにウエイトを置いて開発すればいいか自ずと分かるというもの。ただし、メーカーによって考え方はマチマチです。
イタリアのドゥカティなどはド根性的にピークパワーを追求しており、確かにロングストレートを有するコースでは強力な武器になっています。でもスズキはメーカーの考え方として、どちらかといえば低~中回転域を大事にしてきた、ということですね。
なぜスズキは過渡特性に重きを置くのか。それは、バイクは車体を寝かせて旋回する乗り物だからです。しかも、かなり深く(笑)。今やヒザ擦りどころかヒジ擦りが当たり前というほど、MotoGPマシンのバンク角は深くなっています。コーナーによっては約70度と恐ろしくマシンが寝た状態で、ギリギリのバランスを取りながら、コーナー脱出加速に向けてアクセルを開けるのです。
この時、ライダーの想定よりちょっとでも多くパワーが出過ぎてしまったり、逆にちょっとでもパワーが足りなかったりすると、ライダーはマシンを信頼できなくなります。すると、思いっ切り攻められなくなってしまう。レーシングライダーって野獣のような連中のように見えるかもしれませんが、実はかなりデリケートなんですよ(笑)。
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