「トヨタはEVで出遅れている!」
最近、そのような意見を耳にすることがある。実際、トヨタは超小型電気自動車(EV)の「C+pod」を2020年12月に、法人向けとして限定発売したものの、日産 リーフを筆頭に、ホンダe、マツダ MX-30 EVなど、各社が量産EVを次々と登場させているのに対して、やや消極的にもうつる。
一方、次第に強化される燃費規制にトヨタほど余裕をもって対応できるメーカーは他にないといっても過言ではなく、ハイブリッドで培った電動化の技術はEVを量産するうえで他社にないアドバンテージにも見える。
果たして、トヨタはEVで出遅れているのか? 以下、国沢光宏氏が解説する。
文/国沢光宏 写真/TOYOTA
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■トヨタがEVで出遅れている説は「半分当たっていて半分ハズレ」
日本に限らず世界的に「トヨタは電気自動車で出遅れている」と思われているようだ。
客観的に見たらそのとおりかもしれない。トヨタが販売した電気自動車は1996年のRAV4 EV以来、極めて限定的。最近では2020年10月に『レクサスUX300e』を発表したものの、2020年度は135台の限定販売。2021年度についていえば未定とのこと。
前述のとおり電気自動車戦略で遅れをとっていると思われても仕方ない。本当にトヨタは出遅れてしまっているのか? 半分当たっていて半分ハズレだと思う。しっかり紹介してみたい。
まず「出遅れていない」という検証から。ご存じのとおりトヨタは1997年にフルハイブリッド車を上市している。この時点でモーターとインバーター作りを始めた。
モーターもインバーターも従来のクルマ作りの技術には存在しなかった。いずれも電気自動車作りに絶対必要なアイテムといって良い。
それだけじゃない。「フル協調回生ブレーキ」(ブレーキバイワイヤ)だって1997年に実用化。現時点でもトヨタが新興勢力を圧倒している。あまり話題にあがらないものの、大半の新興勢力は採用できていない。
■EV化でも生きるハイブリッドで培ったトヨタの「武器」
ちなみに電気自動車には2系統のブレーキがある。
走行用モーターを発電機として使う「回生ブレーキ」と、通常の油圧ブレーキ。効率を考えると回生を100%取って電力にしてバッテリーへ戻し、急制動や歩くような速度域では回生できなくなるため油圧を併用することがベスト。けれど回生と油圧の協調制御が難しい。
未だマツダMX-30 EVを除く多くの電気自動車は、簡易式の回生&油圧制御しかおこなえていない。トヨタが本格的な電気自動車を作るとなれば、電費を伸ばす決定的な技術になることだろう。
これらの技術、トヨタに聞くと「当時ゼロからのスタートです」。以来、現行プリウスに搭載されているモーターやインバーターはモデルチェンジの度に大きく進化。
今やインバーター4分の1サイズになったそうな。モーターなども大幅に効率アップをすると同時に、コストダウンが進んだという。
そらそうだ。世界中の自動車メーカーで最も低コストのインバーターを作れるのは間違いなくトヨタだと思う。モーターも同じ。50~180馬力まで幅広い出力のモーターを大量生産しているのだった。
電気自動車の基本的な構成技術はモーター+インバーター+協調回生ブレーキ、そして電池という4要素。
このうちトヨタは電池を除き、世界で最も安価でいながら、高い品質かつ耐久性と信頼性を兼ね備えていると考えて間違いない。ここまで読むと「じゃなんで電気自動車を作らないのか?」という素朴な疑問がわいてくると思う。
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